ダ・ヴィンチWeb「学生エッセイコンテスト」結果発表! 5位作品『そこにしかないもの』

文芸・カルチャー

公開日:2022/6/28

 2022年4月、ダ・ヴィンチWebと、学生のクリエイティブなアイデアを募るプラットフォーム「FLASPO」がコラボレーションし、学生向けエッセイコンテストを開催しました。テーマは『コロナ禍の学生生活』。想像をはるかに上回る多くの応募が寄せられ、しかもそのどれもが力作揃い。編集部全員で目を通し、入賞作品を決定しました。

 今回は、5位に入賞したペンネームりんさんの作品をご紹介します。

 タイトルは、「そこにしかないもの」です。

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 本当に私たちは“可哀想”なのだろうか。
 “不幸”なのだろうか。

 きっとそれを決めるのは、私たち自身なのだと思う。

 私の通う高校の美術コースでは、年に1度、卒業制作展を開く。綺麗で広々とした会場に作品を並べ、「どうだ、これが私たちの努力の結晶だ!!」と、3年間の集大成を訪れた人々に発表するのだ。

 先輩たちの晴れ姿を見て、来年こそは自分の番だと胸を高鳴らせながら、私たちは作品を作っていった。

 緊急事態宣言が発令されたのは、そんな時だった。

 私たちの晴れ舞台は無くなった。

 この発表のために3年間努力してきた子もいた。
 卒業制作展を見て入学を決めた子もいた。
 芸術を高校で辞める子にとっては、最後の発表の場だった。
 こんなこと、設立以来初めてのことだ。
 事態を飲み込むのには時間が必要だった。

 コロナ禍で、中止となった行事は沢山あった。部活はもちろん禁止、文化祭や体育祭、修学旅行さえも私たちは満足に行えなかった。

 しかし、こんなに重要な行事さえも無くなるなんて誰が想像出来ていただろう。目に見えない冷たい檻に入れられた心地だった。

 数日後、先生から告げられた。
「学校を展示会場にしよう。」

 展示を一般の人に見てもらうことは出来ないが、校内に飾って在校生に見てもらう分には問題がないということらしい。

 雲間から光が差し込んだようだった。

 私たちは、早速展示の準備に取り掛かった。木枠で額を作り、絵を廊下に飾り、彫刻を空いたスペースに並べた。

 私たちの卒業制作展が出来上がった。見慣れた廊下に私たちの絵画や彫刻が並べられている様子は、学校全体が美術館になったように思えて、なんだか嬉しかった。

 高校は芸術コースと普通コースに分かれている。芸術コースの展示に足を運ぶ普通コースの生徒は、10分の1にも満たないと思う。

 しかし、この年は違った。美術に興味のない生徒にも、私たちの作品を見てもらうことが出来た。

 登校した時に。
 移動授業の時に。
 自動販売機でジュースを買う時に。
 下校する時に。

 展示している数日間は、私たちの学校生活には私たちの作品がいた。
 作品の前で足を止める生徒を見かける度に、心が喜びで波打った。

 私たちの高校生活は、憧れていた姿とは違う形で終わった。しかしそこには、そこにしかない感動もあったのだ。

 私たちの3年間を過ごした校舎に飾られた、私たちの3年間は、とても綺麗だった。

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 学生の皆さんが書いてくださったエッセイの入賞作品は、今後順次ダ・ヴィンチWebで公開していきます。ぜひご注目ください。

FLASPOとは、学生のクリエイティブなアイデアを募るコンテストプラットフォームです。企業・自治体が学生向けのオンラインコンテストを開催し、学生が解決アイデアを考えることで、アイデア収集・PR・採用など幅広い活用が可能です。
HP :https://flaspo.jp/