「子どもと向き合うには原理原則が必要だ」――子どもの自立をうながし問題行動を減らすため、“親が絶対守りたい20のこと”とは

出産・子育て

公開日:2022/6/29

子育てのほんとうの原理原則 「もうムリ、助けて、お手上げ」をプリンシプルで解決
子育てのほんとうの原理原則 「もうムリ、助けて、お手上げ」をプリンシプルで解決』(奥田健次/TAC出版)

 スーパーで子どもがお菓子をほしがってギャン泣き……子育て中のあるあるだが、親として実際に体験するとけっこうしんどいシーンでもある。甘やかしたくないけど、周囲の目も気になる。結局根負けしてしまい、次の日は「ダメ!」とつっぱね、その次の日はやっぱり根負けし……(以下、ループ)。つい「うちの子はワガママで……」と思ってしまうかもしれないが、実はこうした魔のループは親の態度にこそ原因があるという。『子育てのほんとうの原理原則 「もうムリ、助けて、お手上げ」をプリンシプルで解決』(奥田健次/TAC出版)によれば「親の側に子育てに関する原理・原則(プリンシプル)がないこと」がこうした問題を引き起こすというのだ。

 たとえば本書には、大好きなお菓子がもっとほしくてママに「キーー、言うよ!」と親を脅すかのようなかんしゃくをおこす4歳のミホちゃんのケースが紹介されている。ミホちゃんの金切り声が苦手でついお菓子をあげてしまうママだが、これで要求が通ることを学んでしまったミホちゃんは将来にわたって不満があると同じような行動をして、要求が通らないとキレる子になってしまうかもしれない。この状況を打破するには「1個だけ」といった「我が家の子育てのルール」をきっちり作り、それをどんな状況にあっても変えないことが大切だと著者の奥田健次さんはアドバイスする。実際、ミホちゃんのママは「お菓子は一つだけ。キーッと言ったらゼロ」というルールを貫いたところ、次第に改善していったという。

 本書ではこうした「原理原則」を貫く子育ての重要性を、あらゆるケースを例にしながら説いていく。奥田さんは、年間のべ1000件以上の個別の教育相談を10年以上(直近は数を減らしながら)行い、親御さんから子育ての「ブラック・ジャック」と噂されたという臨床心理士・専門行動療法士。本書にはこれまでの臨床体験、さらには彼が私財を投じて長野県に開設したサムエル幼稚園(行動分析学を用いたインクルーシブ教育を行う日本初の幼稚園)での経験など、さまざまな「現場」の実感がこめられている。かなり辛口だがその内容はズバリ核心をついており刺激的だ。

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 ちなみにざっくり「子育て」というけれど、その内容は子供の年齢によっても大きく変わる。本書で著者は幼児期までの子どもの発達段階を次のように大きく3段階に分けている。

子育てのほんとうの原理原則 「もうムリ、助けて、お手上げ」をプリンシプルで解決

 生理的な欲求が中心の1歳くらいまでは「もも組さん」で、デリケートな桃を扱うように大事に大事に接すること(ちなみにオムツを汚したのを怒ってもまったく意味がない)。よちよち歩きからちょろちょろ動きが増えてくる1~3歳は「りす組さん」。自我が強くなりつつあり、しつけが必要になってくる。甘やかすだけではダメで、相手はまだ小動物のリスのような存在だと心得ること。3歳以降は「らいおん組さん」。力もついてくるので暴れたら自他の怪我の危険もあがるため、きちんと教育することがとても大事になってくる。実は「もうりす組さんになっているのに、まだもも組さんの扱いでいる」だったり、「とっくにらいおん組さんなのに、りす組さんのつもりでいる」などなど、子どもの状況を客観的に捉えないことでうまくいかないご家庭も多いそうだ。

 また著者によれば、子どもの成長段階にあわせて「要求充足率」も段階的に下げていくのも大事とのこと。もも組さんが100%の充足率だとしたら年齢があがるにつれ下げていく。いわゆる「がまん」を経験させていくのだ。

子育てのほんとうの原理原則 「もうムリ、助けて、お手上げ」をプリンシプルで解決

「子どもの要求充足率が100%のままで20歳にしてしまった親子を見ていると、いくら裕福でも社会では通用しない子になる」と著者。子どもの要求にどう向き合っていくか、彼らの成長段階にあわせてできることはたくさんあるという。本書には子が成人するまでの子育て全般についてのコツが多数紹介されているので、心強い味方になってくれることだろう。「子どもはほめて育てる」がよく言われるので、中には子どもを叱ることそのものに抵抗を感じている親御さんもいるかもしれない(かつて筆者も子どもの寝
顔を見ながら「今日も怒っちゃってごめんね」と何度も思ったものだ……)。だがやっぱり「ダメなことはダメ」だし、「我が家の子育て原理」がちゃんとできていれば叱ってOK! なのだ。ちょっぴり強気の本書のアドバイスは、きっとあなたの子育てにもっと「自信」をもたせてくれることだろう。

文=荒井理恵

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