『天の花 なでし子物語』が待望の文庫化!「それぞれの心の中に大切な人がいて、その人への想いが感じられた」

文芸・カルチャー

公開日:2022/7/29

天の花 なでし子物語
天の花 なでし子物語』(伊吹有喜/ポプラ社)

 2011年のNHKドラマ化に続き、2013年に映画化もされた『四十九日のレシピ』で話題となった伊吹有喜氏。そんな伊吹氏による「なでし子物語」シリーズの一作、『天の花 なでし子物語』(ポプラ社)がついに文庫化! 2022年7月5日(火)に発売された。言葉にならない祈りを掬い取る、温かく、強く、やさしい物語は、どのように進んでいくのだろうか。

『なでし子物語』には、いじめに遭っている少女・耀子、居場所がなく過去の思い出の中にだけ生きている未亡人・照子、生い立ちゆえの重圧やいじめに苦しむ少年・立海が登場。3人の出会いが、それぞれの人生を少しずつ動かし始める。続く『地の星 なでし子物語』は、20年近い時を超えた耀子の人生を追うストーリーだ。

 そして今作の舞台は、遠州峰生の名家・遠藤家の邸宅として親しまれた常夏荘。幼少期にこの屋敷に引き取られた耀子は、寂しい境遇にあっても、周囲の人々の優しさに支えられて子ども時代を生き抜いてきた。18歳になった耀子は、誰にも告げずに常夏荘をあとにする。バスの中、4年前のあの夏を思い出す耀子。久しぶりに常夏荘を訪れた立海と過ごした日々が描かれていく――。

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 時系列で読むとなると、『なでし子物語』(2012年刊行)、『天の花 なでし子物語』(2018年)、『地の星 なでし子物語』(2017年)の順となっており、「私は時系列順に読むのがいいと思う!」といったような刊行順よりも時系列順に読むことを推す声もある。

 一方では、「『地の星』でああなっていることに『天の花』を読んでものすごく納得できた! 後半のシーンはかっこ良すぎて好き」「自分に価値を見出せない、自信のない私がどうやって生きていこうとするのかが見もの。やっぱり刊行順に読むのがいいかな」「耀子が結婚相手として彼を選んだ背景には、タイミング、立場の弱さ、亡きお父さん、様々な要素があったと理解した。それぞれの心の中に大切な人がいて、その人への想いが感じられた」という読者もいるので、シリーズをどのように読み進めるかは自身で判断するのがいいかもしれない。

「なでし子物語」シリーズは、大人はもちろんのこと、中学生以上が読者対象にもなっているので、子どもの読書感想文の題材として選ぶのに良さそうだ。この夏の一冊として、ぜひ手に取ってみてほしい。

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