現代人のメンタル不調は食事のせい? 気分の浮き沈みやイライラを減らす食事法

暮らし

公開日:2022/7/18

小さな町の精神科の名医が教えるメンタルを強くする食習慣
小さな町の精神科の名医が教えるメンタルを強くする食習慣』(飯塚浩/アチーブメント出版)

 コロナ禍で仕事や生活スタイルが変わってから、いつもだるい、なんとなく不安、イライラするなど、ちょっとした心の不調を感じている人は多いのではないだろうか。そんなメンタル不調と「食生活」の関連性を指摘して掘り下げるのが、本書『小さな町の精神科の名医が教えるメンタルを強くする食習慣』(飯塚浩/アチーブメント出版)だ。

 著者は、30年前に医師になり、現在は鳥取県米子市でクリニックを営む精神科医の飯塚浩氏。精神科の治療に、薬物療法に加え、栄養療法や漢方などの手法を積極的に取り入れてきた人物だ。まえがきによると、精神科の重症患者は減っているものの、軽めの症状を訴える人が桁違いに増えているという。本書は、そんなメンタルに影響を与える食習慣を中心に、心に負担をかける思考の見直し方も含めて、心の健康に総合的にアプローチする方法を伝えている。

 たとえば、食習慣の中で特に精神面に影響を与えると紹介されているのが、「血糖値スパイク」を引き起こす食べ方だ。血糖値スパイクとは、血液中の血糖値が急激に上下することを指す。炭水化物やジュースなどの糖質は血糖値を急上昇させ、その後のインスリンの大量分泌による血糖値の急激な低下も招く。この変化に対応するため交感神経が過剰に興奮し、不安やイライラなどの心の不調が起こるという。夜間の血糖値スパイクは、就寝中の悪夢や寝言にもつながるというから驚きだ。著者は、この血糖値スパイクによる心の不調を防ぐ方法として、糖質を控える食生活を勧めている。

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 栄養や食生活に興味を持つ人なら一度は目にするであろう、小麦粉に含まれる「グルテン」や、乳製品に含まれる「カゼイン」の影響についても本書は触れている。グルテンやカゼインが腸を経由して脳に影響を与え、気分の浮き沈みや不安感を引き起こすことがあるという。著者は、これがすべての人にあてはまるとは限らないとした上で、グルテンやカゼインを控えるという選択肢も読者に提示する。

 体に必要な栄養の吸収を妨げるなど、アルコールやカフェインの身体への影響もロジカルに伝える。ビタミンBや鉄分など、栄養素の不足や充足が精神面にどんな変化を与えるのか解説するパートも興味深い。各栄養素が足りないと起こる症状がリストアップされているため、思い当たる人は、サプリメントや食材で栄養を補ってもいいだろう。パズルのピースをあてはめるような感覚で、楽しんでトライできそうだ。

 炭水化物に偏った食生活や、アルコール、カフェインの摂りすぎなど、極端な食生活に心当たりがある人も多いはずだ。なんとなく体に悪そうだけどやめられないと思っていた人は、本書で、食材がどう体に作用するのか理解することで、前向きに「控えめ」という選択ができるのではないだろうか。また本書では、糖質制限やグルテンフリーなどの制限食だけでなく、食材をまるごと(ホールフードで)食べる、いいサプリメントの選び方など、手軽に使えるノウハウも紹介されている。我慢するのが苦手な人も、本書の中から、無理なくポジティブに、自分に合った「だるさ解消法」を見つけられそうだ。

文=川辺美希

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