思春期まっただ中の弾丸女子高生によるスーパーストライク(最高の一撃)

ライトノベル

更新日:2011/10/7

それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ【完全版】1

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 朝日新聞出版
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:庄司卓 価格:720円

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1993年にシリーズ1冊目の『ゲットレディ!』刊行後、カリスマ的人気を博すも、最終巻が出されることなくファンをやきもきさせていた、壮大なスケールのSFライトノベル。朝日新聞出版のもとで、【完全版】として再び世を騒がせることとなりました。【完全版】1冊目の本書には、富士見ファンタジア文庫版の『ゲットレディ!』と『自由落下のクリスマスキャロル』に加筆修正をし、さらに書き下ろしの新作が収録されています。

学業優秀かつ運動神経抜群、界隈で有名な天才ゲーマーであり(ただしRPGは大嫌い)、傍若無人で唯我独尊のツンツン女子高生・山本洋子(ヤマモト・ヨーコ)が、1000年先の宇宙戦争にてエースパイロットとして大活躍します。学園(現代)とSF(未来)がうまく融合した世界観がおもしろい。

ちなみに、本タイトルは、主人公の名前にちなんだもので、かの「宇宙戦艦ヤ◯ト」のパロディではないので、悪しからず。

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本作は「あとあと時代の空気が読み取れる作品にしたいという隠れた方針があった」ために、ゲームやアニメ、サブカルチャー、パロディネタなどのトピックをふんだんに含んでいるのも楽しいところ。富士見版の刊行からずいぶん時間が経っているため、やや古さやズレを感じるところがあるかもしれませんが、著者いわく「訊くは一時の恥、ググるは一瞬の待ち」ということで、インターネットを駆使してカバーをお願い、とのこと。

ところで。
昨今、ツンデレ娘やヤンデレ娘、ツンツン娘などが大隆盛ではありますが、そもそも、ライトノベル作品に多い中高生くらいのキャラクターは、発達心理学では青年期の前半、つまり「思春期」にあたり、心身ともに大きな変化が起こっている時期なんですね。肉体に表れる性差はますます目立ち、心的には自己の内面に目が向き、自分探しに深く潜っていくことになります。この、心身ともに“不安定”な時期を乗り越えて、青年期中に「(人生における)第二の誕生」を遂げるとされているのです。

若さゆえにあり余ったエネルギーをところかまわずぶちまけるところなど、自分をうまく制御できない一見不器用なさまは、ツンキャラ特有の性質と見るより、人間がリアルに描かれているのではないか、と思います。

ヨーコが撃ち放つスーパーストライクは、そんな青春のカタマリだと捉えれば、なんて愛おしくて、優しく受け止めてあげるべき打撃であろうか…なんて思わないですけれどね(笑)

パイロット等、個性的な面々。可愛いが一癖も二癖も三癖もあって…

「〉SYSOP(シスオペ)」以降は三人称、このほかに一人称で読ませるパートもあり、視点のめくるめく変化も楽しい

前述の一人称で読ませるパート。弾幕に美を求めるヨーコは、花火のような華麗さを求める。某アニメ作品「機動戦士ガン◯ム」のブ◯イト・ノアがクルーに叱咤する「弾幕が薄い。なにやってんの!」ネタも、やはり出てくる