竹内涼真&横浜流星のW主演で映画化! “貧乏アキラ”と“金持ちあきら”の半生をたどる青春×ビジネス小説!

文芸・カルチャー

公開日:2022/8/27

アキラとあきら
アキラとあきら(上・下)』(池井戸潤/集英社文庫)

 池井戸潤さんと言えば、今もっとも新作が待ち望まれている作家のひとり。「半沢直樹」シリーズ、『下町ロケット』『陸王』などドラマ化・映画化された作品も多く、原作、映像作品いずれも大ヒットを記録してきた。

 そしてこの夏、『アキラとあきら』(池井戸潤/集英社文庫)が、ついに映画化! かつてWOWOWで連続ドラマ化も果たしたこの小説は、累計発行部数87万部を突破するベストセラー。竹内涼真さん、横浜流星さんをW主演に迎え、8月26日から全国の映画館で公開中だ。竹内さん演じる山崎瑛は、貧しい家庭で育った苦労人。横浜さん演じる階堂彬は、大企業の御曹司。数奇な縁で結ばれたふたりは、やがて日本有数のメガバンクに同期入行し、それぞれの宿命に立ち向かっていく。

 小説では、ふたりの半生を上下巻700ページ以上のボリュームで丁寧にたどっていく。瑛は、父の町工場が倒産したため、幼くして夜逃げを経験。家計の厳しさから一度は大学を諦めかけたものの、なんとか進学を果たし、産業中央銀行に入行する。一方、大手海運会社を営む父のもとに生まれた彬は、跡を継ぐことを期待されて育つ。だが、幼い頃から父と叔父たちとの諍いを目の当たりにしてきたため、銀行員として新たな道を切り拓こうと決意する。置かれた境遇はまったく異なるが、運命に抗い、自らの手で未来をつかもうとする姿はどちらも同じ。本人たちはそれと気づいていないが、幼い頃からわずかな接点があるのも面白い。

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 こうして銀行員となったふたりは、バブル絶頂期で人々が浮かれる中、着実にキャリアを重ねていく。育った環境がここまで違うと対立が生まれそうだが、ふたりは良きライバルであれど、バチバチと反目し合う間柄ではない。切磋琢磨しながら互いの能力を認め合い、バンカーとして確かな信頼関係を築いていく。そんな彼らが信条とするのは、新人研修で融資部長から告げられた言葉。

「相手のことを考え、社会のために金を貸して欲しい。金は人のために貸せ。金のために金を貸したとき、バンカーはタダの金貸しになる」

 この言葉がふたりの基盤になっているからこそ、やがて彬が銀行を離れて家業を継ぐことになっても、彼らの関係は揺るがない。彬の会社が危機に陥った時には、ともに手を携え、知恵を絞って苦境を乗り越えていく。その姿は実にまぶしく、読む者の心を強く打つ。

 池井戸作品では、これまでにも信念を曲げず、逆境に立ち向かう人々の姿を描いてきた。本書でも、苦難と戦う人々の情熱、胸のすくような逆転劇を、存分に堪能することができる。しかも、ふたりの主人公の半生を30年にわたってたどっていくため、より深く感情移入しながら楽しめる。彼らの青春を、泥臭くも誇り高き生きざまを、文庫と映画でぜひ体感してほしい。

文=野本由起

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