子どもに「しなさい」と言わなくてもいい! 子どもがやる気になる声かけ法

出産・子育て

公開日:2022/8/1

しなさいと言わない子育て
しなさいと言わない子育て』(ボーク重子/サンマーク出版)

「早く起きなさい」「先に宿題をしなさい」「いいかげんにゲームをやめなさい」…わが子に「しなさい」と口にするたび、親は自己嫌悪に陥る。

 親だって、本当は「しなさい」と言いたくはないはずだ。しかし、現実に子どもが早く起きない、宿題をしない、ゲームをやめない、では「しなさい」を口にするしかない。

 そんな多くの保護者のお悩みに答えるのが、『しなさいと言わない子育て』(ボーク重子/サンマーク出版)。著者のボーク重子氏は、渡米して結婚、出産してまもなく出会った“ある育児(教育)法”に則って長女を育てたところ、娘が18歳のときにアメリカで60年以上続く「全米最優秀女子高生」という大学奨学金コンクールで優勝した。氏は、多くのメディアから「子育てにおいて最も大切にしてきたのは何ですか?」とインタビューを受け、答えたのが、先の“ある育児(教育)法”…つまり「非認知能力育児」の実践を明かした、というのだ。

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「非認知能力」という言葉は、すでに教育界では当たり前のように知られているが、一般では知らない人も少なくないだろう。本書は「非認知能力」を、次のように説明する。

 非認知能力とは、数値化も可視化もできない「目に見えない力」。自己肯定感、自信、自制心、主体性、好奇心、創造性、想像力、柔軟性、やり抜く力、回復力、共感力、協働力、社会性などの総称。

 ちなみに、数値化や可視化ができる「認知能力」は、私たちに馴染み深いテストの点数、知能指数(IQ)、偏差値などで測定できる能力となる。

 本書によれば、非認知能力は反復により身につく能力が多いため、家庭でこそ伸ばせる。具体的には次の4つの環境を整えることで育っていく、と述べている。

・親が「しなさい」と言わない環境
・プログラムしすぎない(余白・ムダがある)環境
・親がやりすぎない環境
・我慢せずとも自制心が育つ環境

 本書は、これら4つの環境を整える具体的な方法を紹介している。

 例えば、書名にもなっている「親が『しなさい』と言わない環境」の整え方。そのはじめに挙げられているのが、「しなさい」と言わない方法。自分が子どものときを思い返せば心当たりがあると思うが、子どもは親に「しなさい」と言われた時点で、不思議なことにやる気を失う。本書はこれが心理反応のひとつ「心理的リアクタンス」と呼ばれる“自分の行動や思考を制限されたと感じる現象”であることを明かす。「しなさい」と言うことで子どもはしなくなり、さらに悪いことには、非認知能力の中の自己肯定感や主体性などを奪うこともある、と述べる。

 では、「しなさい」と言わずに子どもがやる気になる方法はあるのか。

 本書は、「しなさい」に代えて、「してみよう」「やってみよう」「どうしたい?」「これはどうかな?」といった、意思決定権や選択肢を与える提案型の言葉にすることを勧めている。これらの言葉の共通項は、押し付けでも否定でもなく、自分で選んで決めたり、親のやり方を見ながら「一緒にやる」と捉えたりできるスタイルであること。これを家庭で繰り返すことで、子どもの非認知能力は育まれ、言われなくても自分のことを自分でやり、困難を乗り越え、自身を肯定できる子どもになる、という。

 また、「プログラムしすぎない(余白・ムダがある)環境」の整え方では、子どもを習いごとや塾漬けにするのではなく、子どもが「なんだか暇だなぁ」「今日は何をしよう?」と感じるくらいがちょうどいい感覚であることや、習いごとのチョイスも「子どもが大好きな習いごとに出合えるまで、気長に、何度も、あきらめず探す」ことが大切である、と説明している。

 本書は漫画のパートと解説のパートが交互になって構成されており、専門的な解説がやさしく理解できる内容となっている。

 本書を読むことで、子どもはもちろん、保護者にとっても、幸せな家庭環境が整いそうだ。

文=ルートつつみ(@root223

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