ダ・ヴィンチ編集部が選んだ「今月のプラチナ本」は、Stand With Ukraine Japan、左右社編集部『ウクライナ戦争日記』

今月のプラチナ本

更新日:2022/8/30

今月のプラチナ本

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

『ウクライナ戦争日記』

●あらすじ●

「不穏な話が出てきても、決して目をそらさないでください」。2022年2月24日、ロシアによるウクライナへの侵攻が始まった。この日から、すべてが変わってしまった。キーウ、ハルキウ、マリウポリなど戦禍のウクライナに暮らす人々や、日本に暮らし、故郷に思いをよせる縁故者など、24名の当事者たちが綴った日記を収録。現在も起き続けている出来事を克明に記した、唯一無二のアンソロジー。

Stand With Ukraine Japan●東京で生まれたNGO団体。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の初日から、東京で働くウクライナ人をはじめ、様々な国籍の人々が集まり、ウクライナの人々への支援を行なっている。

『ウクライナ戦争日記』

Stand With Ukraine Japan、左右社編集部
左右社 1980円(税込)
写真=首藤幹夫
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編集部寸評

 

市井であり、姿勢の本

毎月、このプラチナ本は編集部員全員が候補を出し、話し合って決定をしている。鼻息荒く持参した本が議論の的にされるのは当事者として複雑だったりするが、民主的な手続きだとは思う。しかし今回は、なんだか違うと思った。オンライン空間で皆に本書について伝えると「いいんじゃない」と言ってくれた。それはまず、身近な編集部員たちに本書を読んでみてほしかったからであり、読者の皆さんにも届けば、と思ったからだ。そんな手続きを経て、この一冊をおすすめします。

川戸崇央 本誌編集長。「ダ・ヴィンチ編集ライター講座」の第2期募集がスタート。9月10日より3カ月にわたって開講予定。詳しくは本誌8P~の記事にて。

 

何もできない、わけがない

人類はもうこんなことをしないと思っていた。思わずつらい気持ちになる。でも「同情を感じるかぎりにおいて、われわれは苦しみを引き起こしたものの共犯者ではないと感じる」(『他者の苦痛へのまなざし』)というスーザン・ソンタグの言葉も思い出され、安全な部屋で本書を読みながら、あなたは何ができるのと問われ続けた。〈はじめに〉に「そもそもこんな戦争を始めることができてしまうような権力が二度と現れないように」とある。その願いを託され、私達はどう生きるか。

西條弓子 前号で筋トレにハマったと書きましたが早くも飽きました。絶対にやったほうがいいと知ってもやらない。自分の愚かさに自覚的でありたい(やれ)。

 

慣れてはいけないのだ

ウクライナへの攻撃、そのニュースが流れてきたとき、気持ちが辛くなるためあまり触れないようにしていた。けれど本書を数章読むうち、何よりここに綴る彼らの国の情勢も歴史も全然知らないのだと反省し、調べてから読み進めた。私はとても無知だ。戦争の渦中にいる24人の日記には、“慣れてしまった”という表現がよく出てくる。いま、“戦争のニュース”に慣れてしまっている東京の私がいる。慣れてる自分は異常だし、絶対に目を背けてもいけない。本書を通し考えを改めさせられた。

村井有紀子 禁酒生活1カ月超。体重が落ちて感激! 最近は筋トレにもハマって、なかやまきんに君のYouTubeばっかり見てます。筋肉と犬は裏切らない……。

 

遠くの出来事ではない

2月24日を境に、人生がさまがわりしてしまったウクライナの人々。日々のニュースを見ても、今起きている事実だとどこか信じられない気持ちでいた。近くのアパートが爆撃されたこと、窃盗や強盗が行われていることなど、おぞましい日常が綴られながらも、「家族との会話。隣人を助けること。できる限り毎日、新しいことを始めること」。こう、自身を鼓舞しながら生きる姿も。さまざまな感情であふれているこの手記により、決して遠くの出来事ではなく、同じ人間の苦しみなんだと実感する。

久保田朝子 仕事で沖縄へ行ってきました。琉球ガラスのお店を訪問したのですが、職人さんの技に感動しきり。海も空も澄んでいて、気持ちの良い旅でした。

 

そこには同じ人間がいる

本書を読みながら、グーグルマップで現地の施設を検索してみた。マリウポリの素敵なラテアートのカフェ、リヴィウの美味しそうなチョコレート店。だが、口コミは今年の2月で止まっている。思わずブックマークした場所と瓦礫だらけの街が繋がって、強い衝撃を覚えた。キーウ市の人口は約295万。京都府の人口(約255万)とあまり変わらない。そこで戦争が起きているのだ。爆弾は野原に打ち込まれているのではない。街に向かって撃たれ、そこには私たちと同じ人間が住んでいる。

細田真里衣 祖母は97歳。戦時中は高校生でした。「街が夜中になっても燃えていた」「ずっとお腹が空いていた」時折ぽつりと話してくれた言葉が忘れられません。

 

彼らの“叫び”に私たちは

怒りと、哀しみと、祈りにあふれた言葉の数々が胸に突き刺さった。ある日を境に、穏やかな日常が一変してしまった人々の“叫び”が、ここには綴られている。「国境の向こうにいる家族の裏切りを、私は決して許さない」「いつになったら人々は、第二次世界大戦がずっと続いていることに気づくのだろう?」「今、こんなところで立ち止まるわけにはいかないのだ。強くならなくちゃ」。今を生きようとする人々の姿が問いかける。彼らの“叫び”に私たちができることとは。今一度考えたい。

前田 萌 炊飯器のない我が家。最近、ご飯炊き専用のお鍋を買いました。お鍋で炊くご飯も美味しいものですね。炊き込みご飯にも挑戦したいです。

 

間違いなく今この瞬間に起きている現実

2022年2月24日、世界中を震撼させるニュースが伝えられた。「ロシアとウクライナの間で戦争が始まった」。その時、現実を疑ってしまいたくなるような気持ちになってしまったのを覚えている。本書で綴られる戦争の渦中にいる人々の戸惑いや恐怖、そして怒りや苦しみが混じった鬼気迫る言葉の数々に、ここに書かれていることはすべて現実で起きていることなのだと思わされる。そしてそれは、私たちと無関係ではない。誰もが日常を奪われる危機の中にいることも紛れもない事実なのだ。

笹渕りり子 自分自身が生きるのに必死な中でも、他人と助け合うウクライナの人々の姿に、私だったらどう行動できるだろうかと何度も考えさせられました。

 

「心の奥まで染み込ませて」

「夕食を食べたけど、これが最後の晩餐という感じがして怖かった!」この時代に、こんなことを思う日がくるって……。銃を携行した兵隊が家の前を通り、サイレンが鳴れば地下室へ走り、朝が来ることに安堵する︱この日記には“今起きていること”が鮮明に記録されている。街が破壊され、日常が壊され、大勢の人の命が危険にさらされる。こんなことが、“人の手によって”なされている。平和に胡坐をかいて、あらゆることに無頓着でいてはいけない。自分と、自分の大切な人を守るために。

三条 凪 『ONE PIECE』特集を担当。最新話ではあらゆる伏線が回収されはじめワクワクしっぱなし! 最高潮に盛り上がっている今、改めて読み返してみては?

 

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