あの人の「27歳」はどんな悩みがあった? 俳優・アナウンサー・脚本家……さまざまなジャンルで活躍する女性たちが「あの頃」を語る1冊

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公開日:2022/8/7

わたしたちが27歳だったころ 悩んで、迷って、「わたし」になった25人からのエール
わたしたちが27歳だったころ 悩んで、迷って、「わたし」になった25人からのエール』(with編集部/講談社)

 仕事や結婚、出産など人生は選択の連続。だから、自分が歩んでいる道に自信が持てなくなってしまうことも多い。特に20代後半は、変わっていく周囲や思い描いていた自己像に辿り着けていない自分に焦りを覚えることがある。

わたしたちが27歳だったころ 悩んで、迷って、「わたし」になった25人からのエール』(with編集部/講談社)は、そんな苦しみに寄り添ってくれる1冊。本書は女性誌『with』の人気連載を書籍化した作品だ。

 俳優や映画作家、脚本家などさまざまな場で活躍する25人の著名人が「27歳の私」を懐古。当時の悩みや苦悩を、赤裸々に明かす。

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「やりたい」という情熱を声に出して世界が変わった

 仕事を任されるとプレッシャーに圧し潰されそうになるけれど、職場で頼られないと自分がちっぽけな存在に思える……。そんな苦しさと闘っている人にエールをおくるのは、フジテレビアナウンサーの佐々木恭子さん。

わたしたちが27歳だったころ 悩んで、迷って、「わたし」になった25人からのエール P56-57

 佐々木さんは、就活を始めようとしていた大学3年生の冬、阪神・淡路大震災で故郷が被災したことをテレビ越しに知った。その時、アナウンサーのコメントには人生経験や人間性が滲み出ていることに気づいたという。もともと言葉で何かを表現する仕事に就きたいと考えていた佐々木さんは、自分もアナウンサーになれば、発言の中に人生経験を滲ませることができるのかもしれないと思うようになった。

 だが、フジテレビ入社後は志が満たされる仕事になかなか出会えない。新人の頃、ジェットコースターに乗ってリアクションを求められた時には「これも勉強」とは思えず、不本意な気持ちになったこともあった。

 苦労が実り、情報番組『とくダネ!』のキャスターに大抜擢されたのは27歳になる年。だが、番組のメインキャスターやコメンテーターは、みな自分よりも年上のすごい人。大役すぎると感じ、生放送中にひと言も話せず、無力感を味わうようになっていった。

 転機が訪れたのは、32歳の時。佐々木さんはスマトラ沖地震が起きた際に自ら立候補し、取材に挑んだのだ。

もともと、アナウンサーになろうと思ったきっかけも阪神・淡路大震災ですが、私は、地元にいられなかったことに罪悪感があったんです。それもあって、過酷な現場を体験しないと、自分は変われないと直感したのかもしれません。

 佐々木さんは、勇気を出して「やりたい」という情熱を声に出し、自分の世界を広げたのだ。

「今しかない!」って時は、自分でも思ってもみない力が湧くものです。はたから見たらカッコ悪くても、なんだかんだで愚直にやってきたことが、後から振り返ると実を結ぶのかもしれません。

 佐々木さんの経験談は、職場で居場所がないと悩んでいる方の背中も押してくれそうだ。

自分に期待し続けて未来を切り開く

 歳を重ねると、理想と現実のギャップに落ちこむことが増えていく。年齢やこれまでの失敗から、挑戦を恐れてしまうこともあるだろう。

 だが、俳優の吉田羊さんは違う。23歳で演劇の世界に入ってからずっと、自分に期待し続けている。

わたしたちが27歳だったころ 悩んで、迷って、「わたし」になった25人からのエール P64-65

 吉田さんは劇団での活動を経て、映像の世界へ。当時は30代から映像を始める人が珍しかったため、マネージャーが営業に行くと目の前で名刺やプロフィールを捨てられ、仕事がなかなか決まらなかった時期もあった。

 けれど、そんな状況でも吉田さんは前向きだった。この先もずっとダメだとは限らない、「いつか自分は何者かになれる」という根拠のない自信を大切にしていたのだ。

 私にとって一番恐ろしいのは、自分で自分に期待しなくなること――。そう語る吉田さんは今の自分が一番好きだと断言。年齢を重ねる中で得た責任と自由が見せてくれる景色に、毎日ワクワクしているという。

だから皆さんも、どうかこの先の自分に期待してほしいですね。(中略)面白いことはこの世界にいくつも転がっているし、それは期待をもって心の目を開いていなければ見えないもの。

 自分の限界を決めているのは、もしかしたら私自身なのかも……。吉田さんの言葉に触れると、そんな気づきが得られ、もう一度、理想の自分を追い求めてみたくなる。

 本書には他にも女性誌であるからこそ引き出せた、著名人の本音が盛りだくさん。眩しく見える人生の先輩たちも27歳の頃、悩み、迷い、ゆっくりと「私」を創っていった――。そう知ると、働き方や結婚、出産など何かと選択する機会が多い、この多様化社会の中で“自分なりの幸せ”をつかみ取るヒントが得られるだろう。

文=古川諭香

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