テレビ出演で話題! USJを再建した敏腕マーケターが教える、年収アップ狙いの転職なら“同業他社”より“他業界”を選ぶべき理由

ビジネス

公開日:2022/8/8

苦しかったときの話をしようか
苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』(森岡毅/ダイヤモンド社)

 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンや西武園ゆうえんちなど、数々の企業再建を担ってきた“驚異のマーケター”、森岡毅氏の著書『苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』(ダイヤモンド社)が話題だ。

 2019年4月に刊行された1冊であるが、森岡氏が教養バラエティ番組『日曜日の初耳学』(TBS)で“熱血授業”を繰り広げたのをきっかけに、人気が再燃。「自分をマーケティングする」をテーマにした本書は、自身のキャリアに悩むビジネスパーソンたちの背中を押す。

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会社に依存するのではなく、個人の武器になる“スキル”を磨くべき

 近い将来、AIに仕事を奪われると危惧する声もある。いずれ来るであろう時代に備えて、著者は「会社に依存するのではなく、自分自身のスキル(職能)に依存するキャリアの作り方」をすすめる。

 著者は「君がいくら会社に惚れ込んでも結婚したくても、会社はどうしても君とは結婚できない」と読者へ語りかける。

 そもそも会社は、個人の「アジェンダ(達成したい意図)」と「無関係の利害」で存在している。そして、ときには「会社にとって都合の良いときに放り出されたり、会社そのものが消滅したり、買収されて全く違う社風に変わる」といった事態も考えられるため、「今は安定しているように見えても、どんな会社も10年後や20年後はどうなるかわからない」のも事実だ。そうしたリスクを考えるならば「会社がどうなろうが、君が自由に生きていける前提を考えねばならない」と著者は指摘する。

 さらに、自由に生きていくためのスキルは「相対的に最も維持可能な個人財産」にもなりうる。

 日常生活にも「家は焼ける、お金は盗まれる、配偶者でさえ離婚や事故、病気でいなくなる」といったリスクがある。しかし、個々の中に「蓄積されていく“能力”だけは、君が健康な限りは常に君と共にあり、君のために生活の糧を生み出すだろう」と著者は言う。

 経験で培った「教養も知性も、まさにこれから獲得する職能の専門性の土台」であり、自身にとっての「何よりも大切な財産」となりうる。著者は「時代に合わせたアップデートを怠らなければ、最も永続性高く頼りになる武器となる」と背中を押すが、自信を持てないビジネスパーソンにとっても勇気づけられる金言だ。

年収を決める3つの要素「職能の価値」「業界の構造」「成功度合による違い」

 仕事で一番分かりやすい対価はお金だ。自身の年収について悩む人も少なくないが、「自分の選択が将来の年収の期待値にどのような結果をもたらすのか」を知っておくべきだと主張する著者は、年収に関わる「3つ」の要素を解説する。

 1つ目の要素は「職能の価値」だ。コロナ禍で希少価値の高まったマスクの価格が高騰したのを思い出してほしい。これは、多くの人びとが求めていたにも関わらず、品薄になっていたため起きていた現象だ。こうしたモノと同じく、人の年収にも「需要と供給」がある。

 仕事も同じで「需要が高い“代替がききにくい人”の給料は高く、その逆は低くなる」という原理がある。また、職種を問わず、専門性があり「スキルの需要が大きく、供給がレアであればあるほど、年収は高くなる」可能性もある。

 続いて、2つ目に考えるべき要素は「業界の構造」だ。「産業や業界の構造によって、たくさんの給料を払える場合とそうでない場合」がある。例えば、業界や職種ごとの平均年収は、たとえ会社が違っても「だいたい似た年収に集約されていく」傾向にある。その理由は、産業や業界ごとの「市場構造が払える人件費を決定している」ためだ。したがって、年収を理由に転職を考える場合は、同業他社よりも「自分の職能が活きる」場所で、「もっと給料が払える他業界へ転職する」といった選択肢を取る必要がある。

 そして、最後に著者が伝える年収の要素は「成功度合による違い」だ。年収は「その人がどれだけ重要で代替不可能な能力を有しているか」で変化する。従業員として働く場合は「経営陣や資本家サイドにどの程度『自分の価値』を信じさせることができるか」にかかってくる。すなわちこれが、ビジネスパーソンにとっての「成功度合」となる。

 これらの要素を考慮した上で、著者は「年収の期待値の上下を知った上で、それでも自分にとって情熱を持てる好きな仕事を選ぶべき」とすすめる。

 将来への不安は尽きない。しかし、悩みながらもキャリアを歩んでいかねばならないのも現実だ。本書のあとがきにある「この世界は残酷だ。しかし、それでも君は確かに、自分で選ぶことができる!」という著者の言葉は、悩めるビジネスパーソンを力強く後押しする。今回紹介した以外にも、個々の「劣等感」や「弱点」などとの向き合い方なども扱った本書を、仕事の活力に変えてほしい。

文=カネコシュウヘイ

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