夫にいびられる可哀想な妻の話と思いきや……全3話に隠された衝撃の展開『真綿の檻』

マンガ

更新日:2022/9/14

真綿の檻
真綿の檻』(尾崎衣良/小学館)

 働く女性が増えて、夫婦の形も変化してきた。共働きで、家事や育児にも男性が参加することが一般的になってきた。それでもやっぱり、こびりついた価値観は消えないのだろうか。『真綿の檻』(尾崎衣良/小学館)を読み始めたときの、私の感想である。「どうせ夫にいびられる可哀想な妻のドロドロした漫画なのだろう」――そう思っていた。しかし、そんな自分の予測は、第2話を読み始めた途端に大きく裏切られることになる。

『真綿の檻』は、“清武榛花”の義妹、宮崎紗英の視点から始まる。紗英の夫の姉・榛花は、控えめで化粧っ気がなく、ひどく古風な女性だという。榛花の夫・一広は紗英たちがいつ遊びに行っても、無愛想にソファに座ったまま。生理痛でつらそうな榛花を心配する紗英に対して「人の嫁を病人扱いするな」と怒り、散らかった台所に対しては「そんなもの体調戻ったら洗えばいい」と言い放つ始末。榛花はフルタイムで働いているらしいが、その上で家事一切を担っているようだった。「いつの時代の夫婦だよ」と突っ込む紗英と、「ねーちゃん相変わらず奴隷みたいな生活してたな」と呆れる弟、聖司。

 そして、聖司の視点、榛花と聖司の母・宮崎泰枝の視点と移り変わりながら、榛花の姿が描かれていく。そこに現れるのは、ひどい扱いを受けても文句ひとつ言わずに勤勉に働く榛花の姿。自分の自由に使えるお金を持たず、「今日の弁当 あれ何 恥ずかしいんだけど」と夫に責められ、素直に謝る榛花。なぜ、彼女はここまで健気に、この生活に耐え続けることができているのか。

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 一見、不憫な女性と、彼女を心配する家族たちを取り巻く物語のように思える。しかし、第1話の終盤、主人公である榛花の視点になったことで、話は一気に様相を変える。

 全3話という短いストーリーなので、これ以上書くとネタバレになってしまうだろう。ただひとつ言えることは、第1話を読んでつらいと感じた人ほど、この後の2話を買って読んでほしいということだけだ。アッと驚くような展開、短い間に張られた伏線、視点が変わることによって変化する榛花の姿には、胸がすく思いがする。

 ただ1人の女性が可哀想な目にあうだけの物語かと思ったら、まるで違った。スカッとする読後感を求めている人にほど読んでほしい作品だ。

文=園田もなか

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