テレビの見方やよくする目つき・しぐさに注意! 子どもの目の病気にいち早く気づくには。『子どもの目を守る本』

出産・子育て

公開日:2022/8/19

子どもの目を守る本
子どもの目を守る本』(三木淳司:監修/講談社)

 昨年、文部科学省が公表した2020年度学校保健統計調査によると、裸眼視力が1.0未満の割合が小学生で37.52%、中学生で58.29%で過去最多を記録。今、子どもの視力は確実に低下傾向にあるといえそうだ。

 そんななか懸念の声が多く聞かれるのが、スマホやタブレット端末、携帯型ゲーム機器の使用が及ぼす、子どもや若年者の目への影響だ。「スマホ斜視」という言葉を聞いたことのある人も少なくないだろう。

 では、どうしたら子どもの目を健やかに成長させていくことができるのだろうか? それを教えてくれるのが『子どもの目を守る本』(三木淳司:監修/講談社)だ。

 監修者の三木淳司氏は川崎医科大学眼科学教授で、2018年に日本弱視斜視学会総会会長、2022年に日本神経眼科学会総会会長を務める。本書では、それらの経験を生かして、子どもの目に起きた異変に気づくためのポイントや早期に見つけたい病気についてわかりやすく解説している。

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子どもが目の異常を訴えることはほとんどない

 人は生きていくために必要な情報を聴覚や触覚などの五感から得ている。なかでも視覚が果たす役割は大きく、全体の約90%を占めているという。その目の機能は、生後すぐから発達し始め、10歳ぐらいまでに大人と同じ程度に完成する。だから、この期間の子どもにとって、見え方は年齢と共に変わっていくのが普通だという。

 そもそも生後すぐの赤ん坊の視力は0.01程度しかなく、明暗と目の前で動くものがわかる程度しか見えていない。生後2〜3カ月で0.1ぐらいになり、対象物を大まかにとらえたり、動く対象物を追いかけて見ることもできるようになる。4〜6カ月でも0.2に満たない状態だが、ピントを合わせることができるようになり、両眼視機能が急速に発達し始め、色も認識できるようになるという。

 3歳頃に1.0ぐらいになり、目の機能が大きく発達するこの0歳から3歳の期間は、目を健康に成長させるためにとても重要な期間になる。そして、5〜6歳頃には視力はほぼ完成し、10歳頃に成熟するという。

子どもの目を守る本 p30〜31

 子どもの目の機能は、こうして発達していく。そのために特別なトレーニングは必要ないが、目の機能を脳の働きとうまく連携させるために、外の景色などさまざまなものを見る経験を積めるように親が心がけてあげるとよいのだそうだ。

 逆に、目や見るための機能に何らかの障害がある場合には治療が必要になる。ここで大きな問題になるのが、「子どもは自分から目の異常や見え方が悪いと訴えることは、まずない」ということだ。だから、子どもと一緒にすごしている親や周囲にいる大人が、異変に気づいてあげることが大切なのだ。

子どもが発するサインを見逃さない

 では子どもの目に起きる、どんなことに注意しなければならないのだろうか? 本書では「見逃したくない、気がかりなサイン」を「1歳までの子」「1〜3歳」「3歳〜就学以降」の3つに分けて解説している。

 例えば1〜3歳の子どもの場合、目の病気を早期に発見するために最もよい方法は、「普段の様子を観察する」ことだという。なかでも異変に気づきやすいのがテレビの見方で、至近距離でかぶりつくように見ている場合は近視が、首を傾けて見ている場合は斜視による影響が考えられるそう。

 また、普段の仕草のなかでも、上目づかいや横目で見る場合は斜視が、太陽の下でもないのにまぶしそうに目を閉じる場合は眼位異常や睫毛内反(逆さまつげ)などが疑われ、目をぎゅうぎゅう押す場合には、重度の目の病気の可能性もあるという。いずれの場合も、これらのサインに大人が気づき、早く眼科を受診させることが大切だ。

子どもの目を守る本 p12〜13

 スマホやタブレット端末、ゲーム機器など、長時間、近い距離で見続けていれば目に悪いと予測できるものが、身の回りにはあふれている。そのなかで目のよい子どもを育てるには、親が目に対する正しい知識を身につけ、普段の生活のなかで気をつけることを教えていくしかない。本書では、ここで紹介した「見逃したくない、気がかりなサイン」のほか、弱視や近視、斜視などの目に起きる異常とその対処の仕方、先天白内障や小児緑内障、結膜炎など、子どもの目の病気などについても解説されている。目の異変に早く気づき、早期に病気を治療することができれば、見る力をうまく育んでいくことができる。そのために本書を役立ててもらいたい。

文=井上淳

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