ゲリラ豪雨、熱波、山火事…異常気象の頻発で未来はどうなる? NHKの気象アンカーによる、生き抜くための必読書!

暮らし

公開日:2022/8/18

お天気ハンター、異常気象を追う
お天気ハンター、異常気象を追う』(森さやか/文藝春秋)

 北陸や東北、北海道などが予想を超える豪雨に襲われたり、日本全国で命の危険を感じるほどの高温が連日続いたり…このところの天候の状況だけでも、直感的に「なんか昔と違う…」と感じている人は多いはずだ。もう何年も言われ続けているが、これこそいわゆる「異常気象」。いくら気象ニュースがメカニズムを解説してくれても、「この先、ほんとに大丈夫?」と不安に思っている方もいるかもしれない。

 そんな方には朗報…ではなく、さらに不安を募らせてしまうのかもしれない衝撃の一冊が登場した。NHK WORLD-JAPANの気象アンカーをつとめる森さやかさんの新刊『お天気ハンター、異常気象を追う(文春新書)』(文藝春秋)は、日本だけでなく世界で頻発する異常気象の数々を詳細にレポートする一冊。著者が淡々と紹介する異常気象のリアルな現実に「こんなにあるのか!?」と肝が冷える…というか、ありすぎて若干気が遠くなりそうだ。

 日本で線状降水帯やゲリラ豪雨が増加していること、梅雨や台風、桜前線にも異変が起きていることなどは肌でわかっている部分もある。だが視野を世界に広げてみると、もっともっとヤバいことが進行中。ニュースでも山火事やハリケーンなどは目にするが、実は熱波や干ばつなどの深刻な実態が広がり続けているのだ。

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 たとえば世界では千年に一度級の「熱波」が頻発。異常な高温で多くの死者が出ているだけでなく、生態系にも大きな影響を与えているという。グレートバリアリーフではアオウミガメのオスが1%だけになってしまっていたり、ハエが不妊になったり…実際、多くの動植物は少しでも涼しい環境を求めてそろりそろりと住む地域を冷涼地に移動しているとか(虫は18.5キロ、両生類は年間12メートル山を登って高緯度に生息地を移動。森林限界もより標高が高いほうにずれている)。

 本書はこうした世界の異常気象の実態をさまざまなトピックやメカニズムとともに教えてくれる貴重な一冊。気象予報士として10年以上にわたって毎日世界の天気を見続けてきた経験を持つ著者の本だけに、多くの人が興味を持ちそうなヴィヴィッドなトピックを縦横無尽、かつポイントをおさえた適度なボリュームで教えてくれるのがありがたい。テンポよく次々に読みすすめられる……のはいいけれど、よく考えると怖いことばかり。実は他人事のように読んでいられるのは錯覚で、同じ地球に住む以上、こうした異常気象が影響しあって今の日本の「異常」にもつながっていることもお忘れなく。

 救いなのは「地球の未来予想図」として、この気候変動をなんとかしようと努力する世界の科学者や実業家・企業などの取り組みもレポートしてくれていることだ。たとえばアカデミックな分野では「やまぬなら、とめて見せよう、温暖化」を基本的な考え方とする気候工学(ジオ・エンジニアリング)という新しい学問アプローチが生まれ、空気中から二酸化炭素を取り除く「CO2除去法」、航空機やバルーンなどを使って空気中に微粒子をばら撒き太陽光の量を減らそうという「成層圏エアロゾル注入法」といったアイディアの研究が進んでいるという。

 こうした研究が無事に実を結び、未来の地球の助けになってほしい――そんな願いを抱きつつも、やっぱり大事なのは私たちが自分たちの足元を見直すことなのだろう。本書でしっかりと自分の目を開き、それぞれが自分目線の「未来のためにできること」を考えてみてほしい。ちょうど学校が夏休みの今、お子さんと一緒に読むのもおすすめの一冊だ。

文=荒井理恵

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