今年こそソロキャンプ、と思ったら。ヒロシが語る「好き」を追求できるソロキャンプの魅力

暮らし

公開日:2022/8/24

大人のソロキャンプ入門(SB新書)
大人のソロキャンプ入門(SB新書)』(ヒロシ/SBクリエイティブ)

 自らのソロキャンプを撮影し配信するYouTube「ヒロシちゃんねる」の登録者が114万人(2022年8月時点)を突破するなど、今や「ソロキャンプといえばこの人」な存在であるヒロシ氏。彼が、その入り口やキャンプでの食べ方、焚き火の極意まで、ソロキャンプのいろはを伝えるのが本書『大人のソロキャンプ入門(SB新書)』(ヒロシ/SBクリエイティブ)だ。

 これまでも著者は、テレビ番組や書籍『ヒロシのソロキャンプ ~自分で見つけるキャンプの流儀~』でもヒロシ流ソロキャンプについて伝えてきたが、本書はそんな彼によるソロキャンプ入門書。キャンプ初心者のインタビュアーが、ヒロシ氏にソロキャンプについて教わるというインタビュー形式で綴られている。ソロキャンプの魅力から、ヒロシ氏のキャンプ遍歴やキャンプ観、そして読者が自分らしくキャンプを楽しむためのアイデアまでが凝縮された、贅沢な1冊だ。

 著者が本書で強調するのは、ソロキャンプは圧倒的に自由だということ。序章の「なぜ、ひとりでキャンプなのか?」では、子どもの頃から焚き火などの自然遊びに親しんできた著者が、大人になってソロキャンプを始めた理由を伝えている。主に、グループキャンプに伴う調整の煩わしさや、声が大きい人の意見に従わざるを得ない者の悲しみ、キャンプのスタイルを強要される苦悩などが語られており、集団行動や、酒を飲んで騒ぐようなキャンプが苦手な人は、ここに激しく共感するだろう。面倒な人間関係や縛りの多い日常生活から自由になれる、それがソロキャンプであるという思想が、本書に通底している。

advertisement

大人のソロキャンプ入門(SB新書)

大人のソロキャンプ入門(SB新書)

 続く第1章からは、キャンプの始め方から道具の揃え方、キャンプでの料理や焚き火入門などの具体策が語られていく。そのステップは、「まずは河原で缶コーヒーを飲んでみる」というところからスタートするので、本物の初心者も安心だ。行きたくなくなれば行くのをやめてもいいし、途中で帰ってもいいというソロキャンプの懐の広さと同様に、彼のアドバイスは読者に無理をさせない。キャンプは普段、家でしていることを外でするだけだから、家にある椅子や調理器具を持って行けばいい。道具は100均でも揃うし、高価なものは、その機能に納得しなければ買わない。著者は長いキャンプ歴でいろいろな道具を使ってきたが、今は一周回って、ブルーシートでテントを張り、家にある鍋でキャンプをやるような、削ぎ落されたスタイルに憧れているという。キャンプで食べるものも、栄養バランスや手の込んだ料理にこだわらず、自分がストレスなく用意できる好きなものを食べればいいと語る。ちなみに著者はキャンプで、カップ焼きそばの「一平ちゃん」や、買った弁当を温めて食べるのが好きだという。

 ソロキャンプの始め方だけでなく、ワンランク上のテクニックも伝える。テントの選び方やハンモック泊のノウハウ、火打ち石を使った焚き火の方法など、読み進めるうちにレベルがステップアップしていく。これからキャンプを始める人も、キャンプを始めたもののまだそこまでハマっていない人も、自分が没頭できるこだわりポイントが見つけられそうだ。

 キャンプのために山を買い、キャンプブランドを立ち上げるほどのソロキャンプのカリスマながら、自分のやり方を押し付けないのが、ヒロシ氏が広く支持される理由だろう。本書では、彼が理想とするキャンプの「カッコよさ」も語られていてそれにも惹かれるが、彼は一貫して、誰かの価値観を倣うのではなく自分の感性に向き合うことが大切だと伝える。仕事などの日常では現実を優先しなければならないからこそ、趣味では自分の「好き」を徹底してほしいというメッセージは、日常に追われる我々の胸に響く。心を癒す新しい趣味を探している人だけでなく、グループキャンプや、果てしないギア集めに疲れてきたキャンパーにとっても刺激的な1冊だ。

文=川辺美希

あわせて読みたい