デジタルとリアル、コミュニケーションに違いはあるのか?

更新日:2012/11/29

人を動かす2 デジタル時代の人間関係の原則

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 創元社
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:BookLive!
著者名:D・カーネギー協会 価格:1,620円

※最新の価格はストアでご確認ください。

『人を動かす』といえば、自己啓発書の元祖ともいわれるデール・カーネギーの名著だが、著者の死後57年も経って、第2巻が出た。もちろんデール・カーネギーが書いているのではなく、カーネギー協会の人々が最近の素材を集めて新たにまとめたものだ。第1巻が充分に素晴らしいのに、なぜわざわざ第2巻を出す必要があったのだろう?

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読み進めればすぐにわかる。メールやSNSといった私たちの新しいコミュニケーションがより一般的になると同時に、そこから生まれるトラブルが目立ち始めたからだ。うっかりTweetで内定取り消しの有名大生、会社を辞める羽目になった大企業社員の逸話は枚挙にいとまがない。社会への影響力を持てば持つほど、うっかりミスが世間にさらされる率も高くなり、そのミスの記録は本人が忘れても永遠に残る。ロムニー候補が大統領になれなかったのは政策のためばかりではない。YouTubeを見れば、感動するスピーチや素晴らしい演奏と同じくらい、失言する政治家や演奏しながら鼻水がたれてしまったミュージシャンの姿が再生されている。しかしまた一方ではSNSを上手に使うことで、ビジネスを成功させたり、個人の立場で大企業との交渉に成功した人々もいる。インターネットは私たちの行動のアンプなのだ。

では、どのように対処すればいいのか? 著者たちはいまこそカーネギーの原則に立ち戻るよう勧める。
例えば「人づき合いの三原則」
1、批判しない
2、美点を肯定する
3、強い欲求を起こす
であり、このほかに「人に好感を持たれる六原則」と「信頼を築く十原則」、「人を変える八原則」がある。これらの原則について、ネット上の事件や偉人伝などあらゆるところから成功と失敗両方の例を集めて、丁寧すぎるほどに解説していく。

中にはNBA選手の逸話など日本人にはそれほど身近ではない例や、やや強引な例もあるが、感動すら覚える例やおもしろい例もある。たとえば、「人に好感を持たれる六原則」の中の「話を聴く」について、ある顧客の正当な苦情をたらい回しにしていた航空会社が、その顧客がYouTubeにアップした歌、たった1曲で株価が急落、大損害を被った例など。実話だからこそやや皮肉な文体が効く。しかし必ず大原則に立ち戻って自分の足元を見させられる仕組みだ。

ここに書かれているのは一度に何百人ものフォロワーを増やす方法でもなければ、ネット有名人になる方法でも大金を得る方法でもない。しかしそれはもっと大切な、私たちが充実した幸福な人生を生きるために再確認するべき真実なのだ。


リアルで深みのある人間関係はデジタルコミュニケーションが重視される時代にあっても成功への必要条件なのだ

じつは私もタイトルで食わず嫌いをしていて、新入社員時代に勧められたときには読む気にならなかった。いまでは後悔しております!

箇条書きされた的確なアドバイスの数々。ある部分は『人を動かす』よりも実用的と言えそうだ