生きづらい……なら、合わせなくても逃げてもOK! 元不登校の著者が描く「生き方のヒント」

マンガ

公開日:2022/9/1

マンガで読む 学校に行きたくない君へ: 不登校・いじめを経験した先輩たちが語る生き方のヒント
マンガで読む 学校に行きたくない君へ: 不登校・いじめを経験した先輩たちが語る生き方のヒント』(棚園正一/ポプラ社)

 自分は人と比べて何かがおかしい。でもどうしたらいいのか分からず「普通の人」として生きられない。そう気づいたとき、多くの人がぶち当たる絶望という壁。何でもないことのように他人に溶け込む周囲の人たちを見ていると、自分の存在すら許されないとんでもなくダメなヤツに思えてくる。筆者も学生時代、他人と馴染めずいじめを受けて、自分の存在をリセットしてなかったことにできればいいのに、と思いながら生きていた。

マンガで読む 学校に行きたくない君へ: 不登校・いじめを経験した先輩たちが語る生き方のヒント』(棚園正一/ポプラ社)は、そうした生きづらさを抱えながら生きてきた人たちの、自分の生き方を見つけるまでの道筋を追った実話集。著者である棚園正一さんは、自らも不登校で悩んだ経験を持つ漫画家。その傍ら、各地で不登校をテーマとした講演会も行なっている。

 棚園さんが不登校になったきっかけは、小学校1年生のとき先生に殴られたことだった。

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マンガで読む 学校に行きたくない君へ: 不登校・いじめを経験した先輩たちが語る生き方のヒント

 その翌日から学校へ行こうとすると頭が痛くなり、「学校へ行けないボクは“フツウ”じゃないんだ」と次第に追い詰められていく。

マンガで読む 学校に行きたくない君へ: 不登校・いじめを経験した先輩たちが語る生き方のヒント

 棚園さんが不登校になったことで家庭環境にも影響が出始め、中学生のときには「僕に未来なんてないんだ…」と先への不安に押しつぶされそうな様子が描かれている。

マンガで読む 学校に行きたくない君へ: 不登校・いじめを経験した先輩たちが語る生き方のヒント

 棚園さんはその後、ひょんなことから「ドラゴンボール」シリーズなどを手掛ける漫画家・鳥山明さんに会う機会を得る。そしてそこから紆余曲折ありながら自身の経験を漫画にし、講演会など多くの機会を得ていくのだが。しかし小学生や中学生の辛く苦しかったときにそんな未来が見えているはずもない。そして今も、現在進行形で暗闇の真っ只中にいる人がたくさんいる。

 本書は子ども向けに書かれている本だが、こうした悩みを抱えているのは何も子どもだけではない。筆者は、生きづらさを抱える人が変われるかどうかはきっかけに恵まれるか否かだと思っている。だから、今なお苦しんでいる大人にも、本書で「こんな生き方もアリなんだ」ということを知ってほしい。

 本書に登場する主人公たちは、今様々なジャンルで活躍している、暗闇を乗り越え「未来」を手に入れた人たち。お笑いタレントのキンタロー。さん、演出家の宮本亞門さん、芸人・髭男爵の山田ルイ53世さん、思想家の内田樹さん、小説家の町田そのこさんなど、一見すると「成功者」として輝かしい人生を歩んでいる人も多い。だが過去にはみな、自分の生きづらさと格闘し、挫折を繰り返しているのだ。

マンガで読む 学校に行きたくない君へ: 不登校・いじめを経験した先輩たちが語る生き方のヒント

マンガで読む 学校に行きたくない君へ: 不登校・いじめを経験した先輩たちが語る生き方のヒント

 彼ら、彼女らがどうやって「今」を手に入れたのか。本書を読んでいくと、その生きてきた軌跡や分岐点、きっかけが見えてくる。また後半には、子どもの不登校に悩む親視点のエピソードも。

 この『マンガで読む 学校に行きたくない君へ』は、みんながみんな同じルートを辿らなくてもいい、生きる道は1つじゃない、ということを実例で示してくれる。人と同じ生き方ができないと思い悩んでいる人、周囲と合わず孤立したり、孤独を感じたりしている人は、本書で自分自身と向き合う機会を作ってみては? そして願わくは、自分らしく生きられる場所を見つけてほしい。

文=月乃雫

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