脱力系のシュールギャグコメディ。こんな猫作品ほかに見たことない!

カレー沢薫

2012/12/3

クレムリン (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:カレー沢薫 価格:540円

※最新の価格はストアでご確認ください。

猫を題材にしたコミック、ということで思わず私が飛びついた本作ですが、ふたを開けてみるとさあびっくり。作品は作者を映すというべきか、作者・カレー沢薫さんはまず漫画家になった経歴が異例でおもしろい。『モーニング』主催・第26回MANGA OPENに生まれて初めて漫画を投稿したが、なんとその時無題のままで投稿。結果はあえなく部内選考で落選、だが現モーニング編集長の目に留まり即新連載を獲得して現在に至る、と。思わず目がテンになる流れですが、作品を読んだ後で改めて流れをみると「あぁ~なるほど。さもありなん」と納得してしまう独特の味があります。

本作の魅力は何と言っても作品全体から漂うシュールな脱力感。このシュール感の形成に一役買っているのは、最初から最後まで一貫した手抜きの作画です(褒め言葉) 背景が書き込まれているコマがあると感心してしまう、というくらいの徹底ぶりが、作品中の細かなことをうやむやにするという効果を発揮することに。

例えば、主人公の却津山春雄(きゃっつやまはるお)が猫と会話できていたり、拾った飼い猫3匹の名前がぜんぶ同じ関羽(かんう)になったりするところは、本作のシュール風味で包まれ気になりません。アパートの大家さんが猫だったり、女友達の頭から猫耳が生えていたり、猫を人質にとると1千万円用意して子猫を救出にくる知人がいたりしても、やっぱりまあいいかな、と思ってしまう。細かなことにツッコミを入れるのが馬鹿らしくなり、それよりも先にクスリとつい笑ってしまうのです。本作はハイテンションで笑い転げさせられるというたぐいではありませんが、小さな笑いのジャブが地道に積み重なって噴出するといった作品になっています。

私は関羽たちが仮装する「金太郎」「ドル太郎」「ユーロ太郎」でやられました。コレジャナイ感が漂う自称“グローバルな金太郎”に一瞬でも納得しそうになった自分を笑いましたとも。本作は頭を真っ白にして読むのが1番よい楽しみ方でしょう。細かな作業で頭が煮詰まった人へ、気分転換をかねて無言でそっと差し出してあげたい作品です。


劉備・関羽・張飛、この義兄弟の中でも1番人気の関羽。戦争で勝ちすぎて商売の神様として崇められるその人気は猫にも波及していた(笑)

ご覧のとおりの「金太郎」「ドル太郎」「ユーロ太郎」。かすっているけど外れてます

町中の猫にプレゼントを配るために、町中の猫がボランティア志願。あれ、配る相手が…
(C)カレー沢薫/講談社