1本の電話から“婚約者の裏の顔”が、次々と明らかに! 心理描写がグサグサ刺さる『ありがとう、昨日までの彼。私が婚約者に裏切られるまで』

マンガ

更新日:2022/9/15

ありがとう、昨日までの彼。私が婚約者に裏切られるまで
ありがとう、昨日までの彼。私が婚約者に裏切られるまで』(浅野もね/KADOKAWA)

 この人だけは、手放したくない。人生の中では、そう思える恋に出会うことがある。だが、もし、そんなにも恋焦がれた相手の許しがたい裏切りが発覚したら、自分の中のまっすぐな恋心には、どんな決着をつければいいのだろうか。

ありがとう、昨日までの彼。私が婚約者に裏切られるまで』(浅野もね/KADOKAWA)は、そんなことを考えさせられる実話ベースの恋愛コミックエッセイ。

 本作は入籍を間近に控えたカップルの、あまりにも壮絶な日々の記録。幸せな毎日を送る2人の関係は突然かかってきた1本の電話を機に、大きく変わってしまう…。

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浮気相手からの電話で最愛の人の「裏の顔」が発覚

 主人公・もねと「彼氏くん」が出会ったのは、夜の銀座。当時、新米ホステスだったもねは客として訪れた彼氏くんを苦手に思っていた。

 しかし、彼氏くんからの好意を感じるうちに、心境は変化。2人は交際し、入籍目前となった。

 ところが、幸せな日々は突如、変貌を見せる。ある日の夜中、もねのスマホに知らない番号から電話が。不審に思うも出てみると、電話の相手は彼氏くんの婚約者だと名乗った――。

ありがとう、昨日までの彼。私が婚約者に裏切られるまで P10

ありがとう、昨日までの彼。私が婚約者に裏切られるまで P11

 すぐさま彼氏くんを問い詰めると、肉体関係を持ったと白状。ショックからもねは包丁を手に取り、彼氏くんを罵倒し追い詰める。

 気づけば警察署で取り調べを受けることとなったもねは本人の許可を得て、署内で彼氏くんのスマホを見る機会を与えられる。すると、そこにあったものとは…。

 さらに、彼氏くんが求職中でもねが生活費を負担していることから、警察に「一緒にいるのはお金目当て」と言われ、不信感はより募っていく。

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 愛する人が、自分に見せていない顔を持っていた…。大きなショックを受けるも別れる決心はつかず、もねは何を信じたらいいのか分からないまま、彼氏くんが待つ家へ帰宅。

 彼の口から、行ってきた裏切り行為を聞けば別れを決断できるのでは? そう思っていたが気持ちは簡単に割り切れず、別れるべきだと思う自分と離れたくないと願ってしまう自分の狭間で悩み続けることになる。

ありがとう、昨日までの彼。私が婚約者に裏切られるまで P150

 やがて、電話をかけてきた浮気相手が接触してきたり、変わろうと努力している彼氏くんを全く信じられていない自分自身に嫌気がさしたりし、もねは心身ともに限界な状態に。

 心の底から信じていたからこそ裏切りを許せず、かといって離れられもしない最愛の人。そんな最高で最低な相手との恋に、もねはどんな決断を下すのだろうか。

主人公の心理描写を通して傷つけられた心の痛みと向き合える作品

 誰かを本気で愛した時、人は自分の弱さや脆さに気づく。もねの彼氏くんのように、客観的に見れば「別れたほうがいい」と思う相手でも、一緒に過ごしてきた思い出が眩しいと、相手を許す理由を探してしまう。

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 愛する人に“見切り”をつけるのは、自分の一部を切り取るような作業。愛と憎のどちらか一方に感情を振り切ることができず、悩んでしまうこともある。

 そんな苦しみを抱えている人にこそ、本作が届いてほしい。もねの心理描写に心を重ね合わせ、パートナーの裏切りによって感じた痛みや見て見ぬふりしたい自分の弱さと向き合い、「さようなら」だけで簡単に終わらせられない恋の決着法を考えてほしいと思う。

 心身ともにボロボロになりながら、彼氏くんや自分の本音と向き合った、もね。その姿から、あなたは何を学ぶだろうか。

文=古川諭香

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