老後が不安な全ての人に読んでほしい! お金がなくても80代でも、「生きる幸せ」を見つけられる

暮らし

公開日:2022/9/20

あちこちガタが来てるけど 心は元気! 80代で見つけた生きる幸せ
あちこちガタが来てるけど 心は元気! 80代で見つけた生きる幸せ」(G3sewing/KADOKAWA)

「老後が不安」と考える人が、定年間際の世代だけでなく、30~40代の若い世代にも増えている。老後2000万円問題も話題になったが、やっぱり一番の不安はお金。それから、健康。さらに、「時間を持て余して、やることがないのも不安」という声も。そんな老後が気になる全ての人に読んでほしいのが、「あちこちガタが来てるけど 心は元気! 80代で見つけた生きる幸せ」(G3sewing/KADOKAWA)。老後真っ只中の親が心配な人にも、ぜひ手に取ってほしい。

 主人公は、84歳のG3(じーさん)。大腸憩室(けいしつ)症、大動脈解離、糖尿病など病気はいろいろ。現役の頃、仕事がうまくいかずに年金は月3万円。さらに、やることがなく、生きる気力も失い、寝たきりのような生活を送っていた。病気が原因でうつ病にもなり、「死にたい。生きていてもみんなに迷惑かけとるだけや」と言い、家出や自殺未遂をしたことも。家族からは「いつ死んでくれてもいい」と思われていた。

 そんなお金も希望もない。あるのは病気と命だけのG3に、転機が訪れたのは82歳の時。

 娘のkikiさんが持ってきた壊れたミシンを修理したことをきっかけに、ミシンにハマっていった。G3は元電気工事士で、物作りが大好き。ミシン初心者ながら、誰にも教わらずに、ポーチ、財布、バッグとどんどん腕を上げていった。

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G3
ミシンの腕をあげ、自力で作ったがま口バッグ。Twitterでバズった椿の柄を持ったG3

 ようやく生きがいを見つけたG3だが、ここで、ミシンが続けられないかもという危機が勃発! というのも、材料費という経費がかかる。お金がないG3には払えずに、kikiさんが負担していた。材料費がかさんで、負担し続けるのが苦しくなったのだ。

 でも、ミシンをやめたら、また元の寝たきりの生活に逆戻りするだけ。そこで、材料費を捻出するために作ったものを売ることにしたのだが、無名なじーさんが作ったものが簡単に売れるはずもなかった。そんな切羽詰まっていたときに、一発逆転の出来事が起こった。

「私の息子に相談したら、『おじいちゃん、そんな年ですごいな。Twitterにアップしたら広がるよ』とアドバイスをくれ、アカウントを作ってくれました」と、kikiさん。82歳(当時)のG3が、椿の柄のがま口バッグを持った写真をアップしたら、瞬く間に広がり、注文が殺到した。

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82歳で始めたミシンが、人生を変えた。何歳からでも新しいことに挑戦できる!

 その後、G3(父・じーさん)、B3(母・ばーさん)、kiki(娘)の3人で、G3sewing(じーさんソーイング)という、ソーイングチームを本格始動させた。2年ほど経った今でも、商品の予約は途切れることはない。うれしいことに、Twitterのフォロワーさんが、製作のアドバイスや励ましのコメントを送ってくれる。商品の売買だけでなく、みんなと交流ができるのもG3のモチベーションアップにもなっている。

 80代になって新しい世界が開けたG3。といっても、急に体が元気になることはないし、宝くじに当たったような大金が入って来ることもない。年相応の体の不調はあるし、新たにリュウマチを発症したりもしている。でも、やることを見つけたG3は、心が元気になった。そして、Twitterだけでなく、LINEもPayPayも使いこなせるようになり、どんどん世界は広がっていった。

「最初は、私がつきっきりで教えましたが、Twitterはフォロワーさんからのコメントを読めるように。『テレビを見るより面白い』なんて言ってます。LINEは、私との仕事のやりとり、孫とのビデオ通話などに活用。コミュニケーションの幅が広がりました」と、kikiさん。

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G3が愛用している、青海波猫の柄のがま口バッグ。通院のとき、病院スタッフに褒められてうれしかったそう

 今日も三重県四日市の一軒家のG3sewingの工房にて、3人でがま口バッグを作っている。好きなことができ、それが人に喜んでもらえ、お金を得ることができる。そのお金で材料が買えて、また好きなことが続けられる。

 よく考えてみると、これってシニア世代の幸せだけでなく、全世代の人の幸せの根源では? 老後の不安が少しだけ解消できる1冊ではあるが、実は、「幸せとは何か?」という人生の本質を考えるきっかけにもなる。最後に、G3の今の心境を紹介する。

「朝、目が覚めるのが楽しみ。今日は、何を作ろうかと思う。今までずっと失敗ばかりの人生やった。80歳を過ぎて、まさかこんなことが待っているなんて思わなかった。今が一番幸せ」。

文=大橋史子(ペンギン企画室) 撮影=原田 崇

●著者紹介
G3sewing(じーさんソーイング)
G3(父・じーさん)、B3(母・ばーさん)、kiki(娘)の3人でやっている、ソーイングチーム。現在84歳のG3が主に製作しているので、G3sewing(じーさんソーイング)に。Twitterでバズり、がま口バッグの注文が殺到。三重県四日市の平屋の一軒家で、がま口バッグ、お茶碗ポーチなどを製作し、ネットで販売している。

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