アニメ映画化決定! “読む順番で結末が変わる”とTikTokで話題を集めた小説「僕愛」「君愛」とは?

文芸・カルチャー

公開日:2022/9/19

僕が愛したすべての君へ
僕が愛したすべての君へ』(乙野四方字/早川書房)
君を愛したひとりの僕へ
君を愛したひとりの僕へ』(乙野四方字/早川書房)

「読む順番で結末が変わる作品」としてTikTokで話題を集めた小説『僕が愛したすべての君へ』と『君を愛したひとりの僕へ』(いずれも乙野四方字/早川書房)。累計発行部数31万部を超えたこの2作がアニメ映画として、いずれも10月7日に公開されます。

 どちらの作品も、“並行世界”の存在が証明された世界を舞台にしたSFラブストーリー。作品の中では、人々は少しだけ違う並行世界の間を日常的に、そして無意識に揺れ動いているとされています。簡単にそれぞれのあらすじを紹介すると、『僕が愛したすべての君へ』は、両親が離婚し、母親と暮らす高校生の高崎暦(宮沢氷魚)が、ある日同じクラスの瀧川和音(橋本愛)に声をかけられます。和音と一切交流がなかったため、戸惑う和音。さらに和音は暦に、「自分は85番目の並行世界から来ていて、その世界で暦と自分は恋人同士だ」と告げます。一方『君を愛したひとりの僕へ』は両親が離婚し、父親と暮らす小学生の高崎暦が主人公。父親の職場で佐藤栞(蒔田彩珠)という女の子と出会い、ふたりは次第に淡い恋心を抱くようになります。しかし親同士が再婚することが知らされ、もう「お互いとは結婚できない」のだと絶望。ふたりはお互いがきょうだいにならない、親同士が再婚しない並行世界への駆け落ちを試みます。

 それぞれ単独の物語としても読みごたえのある本作ですが、両方読むことによって、ちりばめられた伏線が回収され、2倍以上の感動が生まれる仕掛けが満載。

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『僕が愛したすべての君へ』は“並行世界の自分は自分なのか?”がテーマになっており、数多く存在する、そして遠い世界であればあるほど変化が生じている並行世界の自分は、どこまで自分と言い切れるのか? また結婚を誓い、生涯何があっても愛すると決めた相手を、どの並行世界の相手でも愛することができるのか? という問いが主人公たちにのしかかります。そしてそれは、この世界の私たちも直面する“自分という存在の定義について”“誰かを生涯愛すると誓うことの重さについて”の問いでもあるのです。

 また『君を愛したひとりの僕へ』で描かれるのは、あまりにも献身的な愛。人を愛すること、そして相手を幸せにするとはどんな状態を指すのか? きっと人それぞれ答えが違うであろうこの問いが深く突き刺さります。斬新な設定の面白さはもちろん、普遍的な問いがテーマにあるからこそ、このふたつの物語は多くの人の心に響くのです。

 それぞれの登場人物の純愛、相手を思う気持ちの尊さが痛いほど描かれる本作。片方から読めば切ない結末が、もう片方から読めば幸せな結末が楽しめるとのこと。調べて読み始めるもよし、なりゆきに任せるもよし……。あなたはどちらから読みますか?

文=原智香

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