『三丁目の夕日』『鎌倉ものがたり』…画業50周年、“唯一無二”の世界観を生み出す西岸良平の魅力

マンガ

更新日:2022/9/26

西岸良平 画業50周年記念 自選 鎌倉ものがたり+
西岸良平 画業50周年記念 自選 鎌倉ものがたり+』(西岸良平/双葉社)

 1972年9月、「夢野平四郎の青春」でデビューし、今年画業50周年を迎えた漫画家の西岸良平先生。昭和の時代に始まり、現在も連載が続く代表作『三丁目の夕日』(1974年~)と『鎌倉ものがたり』(1984年~)は平成に入ってから映画化され大ヒットを記録。さらには今秋には画業50周年を記念した原画展の開催が予定されるなど、“唯一無二”と評されるその独特の画風と世界観から紡がれる物語は、令和の今もファンの心をつかんで離さない。

 本記事でご紹介するのは、ちょうどデビュー50年の節目である9月に上梓された『鎌倉ものがたり』と「名作集」から西岸先生自らが選んだ作品を収めた『西岸良平 画業50周年記念 自選 鎌倉ものがたり+』(双葉社)だ。本書のために描き下ろされた表紙は『鎌倉ものがたり』の主人公で推理作家の一色正和と亜紀子夫妻に「名作集」の登場人物たちが一緒に描かれる“超レア”な絵柄となっている(カバーを外すと一色夫妻をはじめ、作中に出てくる人やものがシルエットになって配位されている遊びも!)。

 西岸先生は映画『ALWAYS 三丁目の夕日』のイメージが強いのか、「心温まるノスタルジックな作品を描く漫画家」と思っている方が多いように思うが、それだけではなく謎に満ちたミステリーやファンタジー、壮大なSFや恐怖譚といった不思議で奇抜な設定や登場する異形の存在、さらには不条理な結末やあっと驚く展開を見せるなど、様々な世界を描かれる方なのだ。

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 本書に収められているのは『鎌倉ものがたり』から3編、そして7編の名作、合わせて10編の作品だ。ストーリー展開も然ることながら、特徴的な人物の描き方、そして西岸ワールドを象徴する朝、昼、そして夕暮れと表情を変えていく独特の太陽の描写をはじめとするびっしりと描き込まれた背景も見逃せない。手で描かれる漫画だからこその大胆かつ緻密なタッチをぜひ味わってほしい。

 西岸先生は画業50周年にあたり、こんなコメントを出されている。

大学を出て2年後、一念発起して描いた「夢野平四郎の青春」がビッグコミックで入選して漫画家デビューしました。
その後「三丁目の夕日」、「鎌倉ものがたり」など毎回アイデアに苦しみながらも何とか描き続け、気が付いたら50年も経っていて自分でもビックリしています。もちろん漫画を描き続ければ漫画家でいられるというものではありません。思えば「新人のくせに締め切りを遅らせるのは手塚治虫先生なみ」などと言いながらも辛抱強く載せ続けてくれた出版社、編集者のかたがた、そして僕の漫画を読んでくださった読者の皆様のおかげだと、心から感謝しています。結びにひとこと、デビュー作からずっと僕の全作品の作画に協力し、絵コンテを真っ先に見てくれた、人生の伴侶ネコさん(妻)にもあらためて感謝の気持ちを伝えたいと思います。

 また画業50周年を記念し、コミックス購入者には西岸先生の直筆サイン入り複製原画やQUOカードが当たるプレゼントキャンペーン(応募締切は2022年11月11日)や、公式ツイッター(https://twitter.com/tale_of_kmkr)のフォローとリツイートで西岸先生直筆サイン入りコミックスが当たる企画(応募締切は2022年10月11日)も実施中だ。西岸先生にも「ツイッターを覗いてみてください」と編集部からお伝えしているそうなので、ぜひとも先生へ熱~い応援コメントを!

文=成田全(ナリタタモツ)

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