BOOK OF THE YEAR 2022投票受付中!2021年エッセイ・ノンフィクション・その他部門を振り返る——中村倫也、上白石萌音らのエッセイがトップ3に!心の内を誠実に綴った作品が人気

文芸・カルチャー

公開日:2022/9/29

『THE やんごとなき雑談』中村倫也 KADOKAWA

『ダ・ヴィンチ』の年末恒例大特集「BOOK OF THE YEAR」。今年の投票がいよいよスタート! ぜひあなたの「今年、いちばん良かった本」を決めて投票してみてほしい。ここで改めて、2021年の「エッセイ・ノンフィクション・その他」部門にどんな本がランクインしたのか振り返ってみることにしよう。

1位『THE やんごとなき雑談』中村倫也

2位『いろいろ』上白石萌音

3位『50歳になりまして』光浦靖子

4位『一度きりの大泉の話』萩尾望都

5位『あんなに あんなに』ヨシタケシンスケ

6位『たべる生活』群 ようこ

7位『ISHIYA私観 ジャパニーズ・ハードコア30年史』ISHIYA

8位『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』河野 啓

9位『海をあげる』上間陽子

10位『世界はもっと!ほしいモノにあふれてる2 ~バイヤーが教える極上の旅~』NHK「世界はほしいモノにあふれてる」制作班:監修・協力

11位『予測不能 三谷幸喜のありふれた生活 16』三谷幸喜

12位『アニメディスクガイド80’s レコード針の音が聴こえる』MOBSPROOF編集部:編

13位『ワンさぶ子の怠惰な冒険』宮下奈都

14位『逝ってしまった君へ』あさのますみ

15位『月ノさんのノート』月ノ美兎

16位『普通のサラリーマン、ラジオパーソナリティになる 佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)2019-2021』佐久間宣行

17位『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』ブレイディみかこ

18位『あの夏の正解』早見和真

19位『星ひとみの天星術』星 ひとみ

20位『考えごとしたい旅 フィンランドとシナモンロール』益田ミリ
 

「人生のバイブルです」「コロナ禍の心の支えでした」─。熱量の高いメッセージとともに、多くの票を集めたのは俳優・中村倫也の初エッセイ。モテたくて仕方なかった学生時代、理想と現実のギャップにもがいた20代。自意識と向き合い、時に真摯に、時に軽妙に紡いだ言葉は、多くの読者の心を揺さぶったようだ。2位は上白石萌音、3位は光浦靖子と続き、俳優・タレントが胸の内を誠実に綴ったエッセイがトップ3を占めた。

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 4位は、マンガ家・萩尾望都による1970年代の随想録。とはいえ過去を愛おしむような内容ではない。生々しい傷痕に触れるような、痛みをともなう「人間関係失敗談」だ。

 今年は、絵本や実用書もこのカテゴリーに。そのため、5位にはヨシタケシンスケの絵本がランクイン。〝子育てあるある〟を描きながらも、最後は子どもの成長をしみじみ感じる展開に「泣いた」という声が複数寄せられた。同じ子育てものでも、17位の『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』は、13歳の息子とイギリスで暮らす著者のノンフィクション。前作に続き、大きな反響を呼んだ。


 6位は、群ようこが食と健康について考えた一冊。文筆家のエッセイでは、三谷幸喜の長寿連載が11位に、宮下奈都が家族について綴った著書が13位に入っている。
珍しく音楽書が2冊ランクインしたのも今年の特徴。7位はジャパニーズ・ハードコア、12位は1980年代アニメソングとジャンルは違えど、コアなファンの熱いコメントが寄せられた。

 丹念な取材を重ねたノンフィクションも、読者の心を捉えた。8位の『デス・ゾーン』は、SNS時代の〝劇場型登山家〟の内面に迫る一冊。18位の『あの夏の正解』は、コロナ禍の高校球児や指導者に取材した、著者初のノンフィクションだ。

 他者の声に耳を傾けるだけでなく、自分の声を聞き取るようなエッセイも存在感を示した。9位の『海をあげる』は、幼い娘を育てる母親であり社会学者の著者が沖縄から発した声。「読後沖縄について調べた。行動につながるようなエッセイを読んだのは初めてだと思う」「これは私たちの物語なんですね」と、当事者意識をもって受け止めた読者の票が目立った。

 14位の『逝ってしまった君へ』は、自死した友人に向けた手紙のようなエッセイ。どちらも語調は静かだが、内側から湧きあがる切実な言葉が綴られ、思いを重ねる読者が多かったようだ。

文=野本由起

※この記事は『ダ・ヴィンチ』2022年1月号の転載です。