「りぼん」発の高校生×結婚サバイバル漫画『初×婚』は、結婚に向き合うピュアさが最高に響く作品

マンガ

公開日:2022/9/29

 現在『りぼん』で連載中のマンガ『初×婚』(黒崎みのり/集英社)は、結婚を前提とした高校生カップルたちが競い合う、少し変わった物語。舞台は大手IT企業が創立した七海学園高校。入学者はマッチングシステム・デステニーが同級生の中から決定したパートナーとともに、男女ふたり一部屋の寮生活を送りながら、3年後に選ばれ、卒業と同時に入籍&大IT企業の社長になれるという「金の夫婦の卵(ゴールデンカップル)」目指して様々なミッションに挑みます。特殊な設定で連載開始当初から話題を集めていた本作。しかしその魅力は特殊な設定だけではありません。本稿では『りぼん』読者だけでなく、広い世代が楽しめる本作の魅力を紹介します。

周囲を変えていく強さを持つヒロイン・倉下初

 本作のヒロイン・倉下初(うい)は中学生の時に事故で両親が他界。自分の両親のように愛にあふれた結婚をするため、七海学園高校にやってきます。両親からの愛を全身で受け止めてきた初のコミュニケーションは常に直球。嫌がらせをしてくる相手にも自ら立ち向かうし、本心を見せないパートナー・鮫上紺にも正面から向き合い続けます。紺はそんな初にだんだん惹かれていきますが、影響を受けていくのは紺だけではありません。ライバルのカップルである同級生たちもまた、何事にも立ち向かい、決して逃げない初に影響され、自分と、そしてパートナーと向き合うようになっていくのです。誰かに照らされるのではなく、自分の力で輝いて周囲を照らす。初はそんな令和らしいヒロインと言えます。

ハイスペなのに照れ屋男子・初(うい)のパートナー鮫上紺

 成績優秀、運動神経抜群、もちろんイケメン。そんな初のパートナー、紺はまさにハイスペ男子。入学当初は「評価さえ高ければいい」と初の気持ちはそっちのけ、計算ずくの行動をとるあざとさが目立っていましたが、実はその頃から「『ただいま』と言ったら『おかえり』と言ってほしい」など初のしてほしいことをちゃんと叶えてくれる一面も。そんな紺のもっともキュンな部分は、何といっても“照れ屋”なところ。初とのキスがファーストキスな、恋愛経験がない紺。初の直球な行動にふいをつかれ、思わず顔を赤らめてしまうことも多数。いつもはポーカーフェイスな紺のギャップあるテレっぷりがたまりません。

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ふたりが結婚に向き合うピュアさが最高!

 結婚にちなんだ設定が随所に現れる本作。しかし本作が語る結婚は、ただ作品の“映え”のために使われる表層的なものではありません。

 最初から結婚へ強い憧れを持っていた初ですが、その気持ちは「おかえり」と言ってくれる相手、つまり自分を愛してくれる相手を探すものでした。しかし紺を本気で好きになってからは「わたしが紺くんに『おかえり』を言ってあげたい」と、自分も相手を守ってあげたいと考えるようになります。家庭環境が複雑だった紺が生い立ちを話したときは、その辛さを思い、紺以上に憤った初。紺もまた、突然居場所を失うことを人一倍恐れる初の不安を払拭するため、懸命に行動します。大切な人と一緒にいたい。互いを受け入れて、羽を休めあえるような居場所をつくりたい。そんなふたりの婚約者へのピュアな思いが、この作品のもっともすばらしいところ。筆者は既婚ですが、日々家事育児に追われてついメリットデメリットで相手を見ていた自分を反省し、「ずっと一緒にいたいから結婚する」という初心を思い出しました。結婚生活にちょっと不満があったり、婚活中で少し疲れていたり……。『初×婚』はりぼん世代だけでなく、そんな大人世代にも刺さる作品です。

 最新巻(10巻)では、ふたりは高校2年生の冬を迎えています。高校生活の折り返し、とある大きな決断をしたふたりの行く末をぜひチェックしてください!

文=原智香

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