BOOK OF THE YEAR 2022投票〆切迫る!2021年文庫部門を振り返る——本屋大賞をはじめ8冠を受賞した、あの話題作が首位に!

文芸・カルチャー

更新日:2022/10/5

『かがみの孤城』辻村深月

『ダ・ヴィンチ』の年末恒例大特集「BOOK OF THE YEAR」。今年の投票が受付中だ! ぜひあなたの「今年、いちばん良かった本」を決めて投票してみてほしい。ここで改めて、2021年の「文庫」部門にどんな本がランクインしたのか振り返ってみることにしよう。

1位『かがみの孤城』辻村深月

2位『沈黙のパレード』東野圭吾

3位『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ

4位『ゴーストハント』小野不由美

5位『護られなかった者たちへ』中山七里

6位『昨日がなければ明日もない』宮部みゆき

7位『鎌倉うずまき案内所』青山美智子

8位『ブロードキャスト』湊かなえ

9位『ののはな通信』三浦しをん

10位『medium 霊媒探偵城塚翡翠』相沢沙呼

11位『大人は泣かないと思っていた』寺地はるな

12位『熱帯』森見登美彦

13位『か「」く「」し「」ご「」と』住野よる

14位『あぁ、だから一人はいやなんだ』いとうあさこ

15位『魔力の胎動』東野圭吾

16位『ある男』平野啓一郎

17位『てんげんつう』畠中 恵

18位『いのちの停車場』南 杏子

19位『未来』湊 かなえ

20位『麦本三歩の好きなもの 第一集』住野よる

20位『ノーマンズブランド』誉田哲也

2017年の小説部門「ブック・オブ・ザ・イヤー」に輝いた『かがみの孤城』が、文庫でも首位を獲得! 学校に行けなくなった少女が、鏡の向こう側で出会ったのは同じような境遇に置かれた6人の中学生。生きづらさを抱える同世代だけでなく、かつて中学生だった大人からも「同い年だった頃の自分を見ているよう」と深い共感が寄せられた。繊細な心情描写はもちろん、ミステリーとしての完成度を評価する声も。2018年には「本屋大賞」も受賞した、文句なしの傑作だ。。

2位の『沈黙のパレード』は、映画化も決定した「ガリレオ」シリーズ第9弾。東野圭吾は『魔力の胎動』も15位に入るという盤石の人気。湊かなえ、住野よるといったベストセラー作家も、2冊ずつランクインしている。

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『沈黙のパレード』東野圭吾

3位には、ノンフィクションが食い込んだ。『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』は、英国の「元底辺中学校」に通う息子が人種差別や貧富の差などの現実に直面し、自分なりの答えを見つけていく成長記。その真摯なまなざし、親子の対話に、心揺さぶられた読者が多かった。この作品に限らず、今年は社会問題を直視した小説が多く支持を集めている。5位『護られなかった者たちへ』は生活保護、16位『ある男』は国籍や出自による差別、18位『いのちの停車場』は在宅医療や積極的安楽死、19位『未来』は子どもの貧困を扱っており、単行本刊行時から数年経った今も同じ問題が横たわっていると痛感させられる。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ

シリーズものも、安定した人気を誇っている。4位の『ゴーストハント』は、30年以上前に発表された「悪霊」シリーズを大幅改稿・改題した作品。昨年から文庫が刊行され、今年全巻が出そろった。6位は、私立探偵・杉村三郎の事件簿。17位は若だんなとあやかしが活躍する「しゃばけ」シリーズ第18弾だ。10位は、ミステリーランキング5冠を達成した著者の出世作。今年刊行された続編『invert 城塚翡翠倒叙集』と併せて読みたい。20位の『麦本三歩の好きなもの』もシリーズものの第一集だ。
7位の『鎌倉うずまき案内所』は、人々の悩みに寄り添う短編集。9位の『ののはな通信』は、深いところで通じ合うふたりの女性の人生に勇気づけられる。11位の『大人は泣かないと思っていた』は、〝こうあるべき〟という形から解放された生き方を示してくれる一冊。社会に閉塞感が漂うからこそ、読むと視界が開け、心が軽くなる小説が求められたのかもしれない。

『ゴーストハント』小野不由美

『護られなかった者たちへ』中山七里

文=野本由起

※この記事は『ダ・ヴィンチ』2022年1月号の転載です。