片田舎のただのおっさん――のはずが、実は最強の「剣聖」!? 無自覚に生きてきたおっさんの成り上がりが爽快!

マンガ

公開日:2022/10/10

片田舎のおっさん、剣聖になる ~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~
片田舎のおっさん、剣聖になる ~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~』(佐賀崎しげる、鍋島テツヒロ:企画・原案、乍藤和樹:著/秋田書店)

 地元から出ずに黙々と仕事に取り組んでいると、自分がその業界でどのくらいの位置にいるのか知る機会はなかなかない。こうした場合、多くの人は「自分は割といける方なんじゃないか」と思ってしまいそうだが。中には実力がありながら、「自分なんてこの程度」と自信を持てずにいる人も……。『片田舎のおっさん、剣聖になる ~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~』(佐賀崎しげる、鍋島テツヒロ:企画・原案、乍藤和樹:著/秋田書店)の主人公、べリル・ガーデナントも、まさに後者のような、自分のことを「片田舎のおっさん」程度にしか思っていない男性だった。

 本作品は、小説投稿サイト「小説家になろう」で連載されていた小説が原作となっている。小説はスクウェア・エニックスから刊行されており、現在4巻まで発売中。今回紹介するのはそのコミカライズ版。Amazonでレビューが3000以上もついている超人気作だ。

 べリルは、レベリス王国の片田舎の剣道道場で「護身程度の剣」を教えている剣術師範。かつては「剣で多くの人々を助ける」と騎士や冒険者を目指していたこともあったが、結局は今の生活が身の丈に合っていると現実を受け入れ、日々稽古に励んでいる――というのが、ベリル視点の彼の立場だった。しかしこの男、実は「片田舎の剣聖」として噂になるほどの実力者。大陸に名を轟かせている多くの英雄たちが、彼に師事していた経験があるというのだ。

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 そんな噂のことなどつゆ知らず、ベリルがいつものように朝練をしていると、そこに1人の美しい女性が現れる。彼女はレベリオ騎士団団長で剣術指南も務めるアリューシア・シトラス。このアリューシアもまた、ベリルに剣術を教わっていた生徒の1人だった。べリルは教え子の中から騎士団の剣術指南役が出るとは鼻が高い、と喜んだが、そこで。「先生を特別指南役として推薦し この度無事承認されました」と衝撃の事実を告げられる。断ろうとするも、すでに国王からの命令も出ていて断れない。こうしてベリルは、突然表舞台に引きずりだされることとなった。

 その後も、冒険者階級最強ランク「ブラック」のスレナ・リサンデラ、魔法師団のエースであるフィッセルなど、国家最強クラスの強さに成長した教え子たちが続々と登場する。そしてその教え子たちによって、ベリルはあれよあれよという間にその真の実力を世に知らしめ、その中で自分自身も少しずつ自信と自分の立場への自覚を持ち始める。

 物語序盤では、凄まじい実力を持ちながらも自信というものがまったくなく、普段はどこまでもただのおっさんであるベリル。しかしいざ剣を持ち“その時”になると、スッと別人のように「剣士」としての姿を見せる。そのギャップがまた、彼がただただ剣と向き合ってきたことを感じさせるのだ。この驕らずガツガツしていないひたむきさに、思わずきゅんとしてしまう。かっこいい!

 コミックス2巻では、フィッセルの魔法の師である魔法師団団長、ルーシー・ダイアモンドも登場し、ベリルを巡る女同士の戦いも一層ざわめき始める。また、アリューシアの願いやスレナの過去も描かれる。彼女たちの目に、ベリルはどう映っているのか――。さらにべリルは王国騎士団の剣術指南役だけでなく、若手冒険者の育成者も務めることに。今後もどんどん彼の実力は世に広まっていくことだろう。“ただのおっさん”だったべリルの「剣聖伝説」を、女性陣の動向を、筆者も引き続き見守っていきたい。

文=月乃雫

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