円安の今! 国家公務員から転身したeBayのプロが「楽しみ方」を伝授

ビジネス

公開日:2022/10/26

1日30分からはじめる はじめてのeBay
1日30分からはじめる はじめてのeBay』(荒井智代/自由国民社)

 ヤフオクやメルカリなどのフリマサイトは、レアグッズをゲットしたいマニアから、空いた時間で不用品を売りたい人まで幅広い層に浸透している。しかし個人間の売買に慣れている人でも、国境を越えた取引まではイメージできない人が多いのではないだろうか。本書『1日30分からはじめる はじめてのeBay』(荒井智代/自由国民社)は、円安の今、さらに注目が集まっている「eBay(イーベイ)」を、著者の体験談をもとに紹介している一冊だ。

 著者は、アメリカのオークションサイト「eBay」の輸出コンサルタントとして、講師業やYouTubeでの発信などを行う荒井智代氏。eBayとは、190カ国以上の国で1億3800万人が利用している(イーベイジャパン公式サイトより)、世界最大規模の物販サイトだ。著者は、14年務めた国家公務員を退職し、時間や働く場所の自由を得られる物販ビジネスとしてeBay輸出に着目。開始から7カ月目で月収100万円を達成し、公務員時代と比べて、収入や働き方の面で高い満足感を得たという。

 本書はそんなeBayの基礎から売るコツまでを伝える入門書だ。売る側の「セラー」の立場から、eBayの始め方や、日本に住むセラーならではの成功ポイントを網羅的に伝えている。


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 eBayの使い方は基本的には他の物販サイトと同じ。商品の特徴や状態を説明したテキストと写真で、売りたいアイテムの情報をアップする。販売方式は、自分で値段を決める方法と、買いたい人が値段を上げていくオークション方式から選べる。武器や生鮮食品、アルコールなどの販売禁止アイテムや、販売先の国の法律に違反していないものなら何でも出品が可能だ。

 著者が伝えるeBayの魅力は、販売先の幅広さと、日本ならではのグッズを出品することで得られるメリットだ。世界には、日本限定アイテムや日本の工芸品、日本のキャラクターグッズをほしがる人が多く、アイテムによっては、日本国内での取引額を大きく上回る金額で売ることができるという。本書では、売れるアイテムを見つける方法や仕入れ時の注意点など、初心者がeBayを始めるときのポイントを伝えているため、リスクを抑えながら新しいことや副業を始めてみたい人に有用だ。

 eBayで実際に売れた具体例も紹介していて興味深い。たとえば、人気作が表紙の少年マンガ雑誌の記念号や、一番くじのキャラクターフィギュア、ドリンクのおまけのボトルキャップ30個セットなども高値で売れている。他にも家に眠っていたこけしや、日本産ウィスキーの空き瓶など、仕入れ値ゼロのものや、それまで捨てていたようなものにも高値が付くことがあるという。具体例のパートでは日本のどんな文化が世界の興味を引いているのか知ることができるため、読み物としてもとても楽しい。

 なおeBayは、ユーザー登録やアイテムのアップを英語で行う必要がある。しかし、翻訳ツールを使って英単語を登録できれば十分だという。eBayには品質が良く、オリジナリティのある日本のアイテムをほしい人が多い一方で、英語に抵抗があり使っていない日本人が多く、ライバルが少ないと著者は伝える。また、eBayの取引は米ドルで行われるが、日本円での受取額が増える円安の場合は日本人セラーにとって追い風だという。イーベイ・ジャパンによる日本語でのサポートも受けられるため、英語に自信がないからとためらっていた人は確認してみよう。

 著者はeBay輸出が「楽しくて面白いもの」だと伝えたくて本書を書いたという。その言葉のとおり、本書を読むと、eBayは、「いいアイテムを仕入れられた」「ほしい人の手に渡った」という喜びや、日本の魅力を再確認できる輸出の楽しさに満ちているとわかる。今、仕事で物販に携わっていなくても、子どもの頃に「お店やさん」に憧れた人もいるだろう。ビジネスや副業としてだけでなく、日々の楽しみとして、世界を相手に「お店やさん」をやってみる――そんなワクワク心をくすぐる1冊だ。

文=川辺美希

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