甘え下手な“妙齢女子”必読! 大久保佳代子さんの日常エッセイ『まるごとバナナが、食べきれない』

文芸・カルチャー

公開日:2022/10/26

まるごとバナナが、食べきれない
まるごとバナナが、食べきれない』(大久保佳代子/集英社)

 お笑いバラエティ『めちゃ×2 イケてるッ!』でブレイク後、テレビのバラエティ番組などで活躍し、最近ではTikTokの投稿動画も評判を呼んでいる大久保佳代子さん。そんな彼女が、エッセイ本を上梓した。『まるごとバナナが、食べきれない』(集英社)だ。

 タイトルからすでに共感力の高い本作は、大久保さんが42歳から50歳になるまでの8年間、ファッション雑誌『Marisol』で、月に一度連載していたエッセイをまとめて1冊にしたもの。“忘れられない食べ物”をきっかけに、それにまつわる彼女の思い出が綴られている。

 たとえば、女友達というテーマでは、「素うどん」を入り口に、大久保さんのこんなプライベートが語られる。

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 イライラしたり落ち込んだり、「なんのために生きているんだろう」なんて自分の存在意義まで考えはじめてしまったときは、とことんダメな休日を過ごすことが大久保さん流の対処法。ノーメイクにノー風呂、ノーブラで1日ダラダラ、咀嚼さえ面倒になって素うどんを飲み込み、小腹が空けば、棚の奥からしけったポテトチップスを発掘して貪り食べる。この年齢までひとりで生きてきたプライドもあるし、イライラに他人を巻き込んでは申し訳ないから、モヤモヤは基本的にひとりで解決するのだ。

 ただ、若いころはすぐに回復していた心や体も、最近はその回復力が衰えがち。甘え下手な大人女子代表の大久保さん、甘えると歯止めがきかなくなりそうで怖いけれど、それでも誰かに「大丈夫だよ」と言ってもらいたいときがある……。

 そんなとき大久保さんは、お笑いコンビ・たんぽぽの川村エミコさんのもとへ。ふだんは川村さんの愚痴を聞いているその“貯金”を、ここぞとばかりに使うというのだ。いわく、「心が乱れる繊細なお年頃、大事なのは妙齢女子同士の心の支え合い。ときには弱音を吐きあって、前を向いて生きていかないとね」。

 このノーメイクにノーブラで素うどんをすするという大久保さんのプライベートへの、強烈な共感! 心身ともに弱っていく回復力、女友達との距離感にも、「あるある」「わかる」が止まらない。

 ほかにも、どんな高級店よりも美味しかったお母さんのおにぎりの思い出や、男性の好みが「ちょっと陰のある男性」から「なんでも食べる健康な男」になってきたこと、『めちゃイケ』の収録後に食べた忘れられない海鮮粥の話など、“妙齢女子”にとって関心の高いトピック──家族、恋愛、友情、仕事、そしてひとり飯についての話が、ユーモアたっぷりに繰り広げられる。

「42歳から50歳はゆらゆらと揺るぎまくりなお年頃。一貫性に欠けがちですが、人間なんてそんなものです」──食から振り返る大久保さんの半世紀に、爆笑して、共感して、しんみりとうなずいて、読み終えるころには心が軽くなっている、等身大の“妙齢女子”エッセイ。甘え下手の“妙齢女子心”を持つあなたにこそ、手に取ってほしい1冊だ。

文=三田ゆき

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