あれも、これもノーベル賞のおかげ……!? 知ると日常がもっと楽しくなる“身の回りにあるノーベル賞”

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公開日:2022/10/29

身の回りにあるノーベル賞がよくわかる本
身の回りにあるノーベル賞がよくわかる本 しろねこと学ぶ生理学・医学賞、物理学賞、化学賞』(かきもち/翔泳社)

 偉大な研究をやわらかく解説し、社会とつながっているかを書いた本『身の回りにあるノーベル賞がよくわかる本 しろねこと学ぶ生理学・医学賞、物理学賞、化学賞』(かきもち/翔泳社)が発売された。

 人類に大きく貢献した発見・研究に授与されてきたのがノーベル賞。つまり私たちの日常生活は、ノーベル賞を受賞したさまざまな成果に支えられているはずなのだ。本書は、研究成果と私たちとの接点を、イラストも交えてやわらかく解説している。科学に詳しくなくても非常に分かりやすいと感じた。

「ノーベル賞って聞いたことはある」という程度に認識している方、「ハイレベルな研究や技術に興味がある」という方などにぜひ読んでほしい。

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歴代の偉大な研究と未来の研究

 本書は全5章の構成で、どこからでも気軽に読むことができる。第1章~第3章は、自然科学に縁の深い3つの賞から各9個ずつ研究成果を紹介。さらに第4章はノーベル賞がスタートした1901年より前の偉大な研究成果を、第5章は2022年時点で研究中の未来のノーベル賞候補を紹介している。

第1章 ノーベル生理学・医学賞

 手軽に心臓の状態を調べられる「心電図と心電計の開発」や、手術時に必要な輸血にかかわる「ABO式血液型の発見」は近代医学に欠かせない研究成果だ。そして記憶に新しいのが「細胞を成熟前に戻す方法の発見」。これはいわゆる“iPS細胞”の研究で、山中伸弥氏の名を世界に知らしめた。

身の回りにあるノーベル賞がよくわかる本 P41

第2章 ノーベル物理学賞

 病院で体内を簡単に映し出せるようになった「X線の発見」。またがん治療に貢献しているのが、ベクレルとキュリー夫妻の研究「天然放射性元素の発見」。そして宇宙の年齢や構成物の分布が明らかになった「ビッグバンの名残、宇宙マイクロ波背景放射の発見」などがある。

身の回りにあるノーベル賞がよくわかる本 P51

第3章 ノーベル化学賞

 食料生産を進歩させたのが「アンモニアの人工的合成法」。これは農作物を成長させる農地の栄養を、合成により作り出す研究。現在の食料生産を支える科学技術の一つだ。また「リチウムイオン電池の発明」は、パソコン・家電から電気自動車まで幅広く利用されるハイパワーな充電式電池を世界中に普及させた。

身の回りにあるノーベル賞がよくわかる本 P93

第4章 歴史を変えた大発見

 ニュートンの「万有引力の法則」、ニューコメンとワットの「蒸気機関の発明と改良」、ジェンナーの「牛痘種法の開発」による元祖ワクチンの研究、生物の進化の研究を一気に進めたダーウィンの「自然選択説の提唱」(適者生存説)などを紹介している。

身の回りにあるノーベル賞がよくわかる本 P133

第5章 未来のノーベル賞

 主な研究をいくつか挙げると、人の役に立つ物質を生み出したり将来のエネルギー不足の解決策になったりするかもしれない「人工光合成の実用化」。コストや所要時間に課題を抱える「海水を飲み水に変える技術」。“電気抵抗”をなくすことで電気を無駄なく使おうとする「高温超電導の解明」。これらの研究がうまく進めばノーベル賞の受賞はもちろん、世界をさらに変えられるかもしれない。

身の回りにあるノーベル賞がよくわかる本 P149

ノーベル賞に輝いた研究成果が私たちを支えている

 最初に書いた通り、ノーベル賞を受賞した発見や研究は人類に大きく貢献しており、私たちの日常を支えている。特に私たちが当たり前のように受けている近代医療はノーベル賞のショーケースだ。いくつかの医療技術はノーベル賞を直接受賞しているのである。

 各研究成果のページ冒頭に「(ノーベル賞)受賞者」「対象研究と概要」が書かれ、いくつかの研究の最後には私たちに直接かかわるかもしれない内容を簡潔に解説した「まとめ」が書かれている。この「まとめ」を読むだけでも、偉大な研究が身近に感じられるはずだ。

 ノーベル賞は日本人が受賞すればトップニュースになる。しかし受賞したのが日本人でなければ、それほど盛り上がってこなかったように感じる。本稿のライターは、ノーベル賞に輝くような偉大な研究成果は何であれ、できるだけ詳細に伝えてほしいと思った。なぜならその成果は、世界に等しく重要になる可能性が高いからである。

 本書を読むとノーベル賞が理解でき、自分たちとの距離が近づくように感じるだろう。そして賞を獲得するような科学を、もっと知りたくなるはずだ。

文=古林恭

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