三浦建太郎氏と森恒二氏の熱い友情で繋がれる『ベルセルク』絶賛連載中! アニメ放送もスタート

マンガ

公開日:2022/11/1

ベルセルク
ベルセルク』(三浦建太郎:原作、スタジオ我画:漫画、森恒二:監修/白泉社)

 ガッツが隻眼となる前の若き日、後に仇敵となるグリフィス率いる傭兵団「鷹の団」に所属していた時代を描くアニメ『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』の放送が10月からスタートした。同枠で流れる“再臨”という赤文字が躍り、「伝説は、受け継がれた。」という髑髏の騎士役のCVを務める大塚明夫によるナレーションで「ヤングアニマル」誌上での『ベルセルク』の連載再開を高らかに告げるCMに胸を熱くした方もいらっしゃることだろう。

 1989年から『ベルセルク』を描き続けた三浦建太郎先生は2021年5月6日、急性大動脈解離で突然この世を去った。54歳の若さだった。同年9月10日に発売された「ヤングアニマル ベルセルクメモリアル号」には三浦先生が最後にペン入れをした原稿が掲載され、「もうこの続きを読むことは叶わないのか」と畢生の大作が未完に終わったことを多くの読者が悲しんだ。しかしその翌年の6月、三浦先生の高校時代からの盟友である漫画家の森恒二先生が監修を引き受けてくださり、連載が再開されることになった。森先生は30年近く前に三浦先生から「ネームの相談にのってくれ」と懇願されて仕事場へ行った際、なんと一週間も軟禁(!)され、このとき『ベルセルク』完結までのストーリーが完成したのだという。

 森先生は三浦先生から受け継いだエピソードに余計な肉付けや曖昧になっている話は付け加えないことを信条とし、現在は作画を担当するスタジオ我画から上がってきたネームをチェックしているという。世界中にファンがいる作品だけに、監修を引き受けることには凄まじいプレッシャーがあったことは想像に難くない。しかし連載が再開されてからは歓迎の声が圧倒的であることからも、完結を待ち望んでいる読者がいかに多いのかがよくわかる。森先生は「やらないと、三浦に何言われるかわからん」と、30年以上にわたる熱い友情が後押ししたと語っていた。また「三浦の弟子達は本当に凄い」と、スタジオ我画のスタッフに全幅の信頼を置いているという。

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 そんなお二人の熱い友情を物語るエピソードがある。『ベルセルク』の主人公ガッツの武器は「それは剣と言うにはあまりにも大きすぎた」というフレーズでおなじみの「ドラゴンころし」だが、原作の三浦先生は、身の丈を超える大剣を振り回す強靭な肉体を持つガッツを描くに当たり、連載が始まる前に森先生を呼び出したという。二人は一緒に市民体育館へ行き、三浦先生が「棒を振ってみてくれ」と頼むと、183センチ、88キロという立派な体格の森先生が重さ20キロの棒を振るってみせた。その姿をじっと観察した三浦先生は「腰を下げないと振れないんだ」と感想を述べ、そのフォームを写真に撮っていたそうだ。そのため作中でドラゴンころしを振るうガッツは、低く腰を落とし、グッと足を踏ん張っている姿で描かれているのだ。

 また「ヤングアニマル ベルセルクメモリアル号」の付録だった「特別寄稿メッセージ小冊子」には、森先生が三浦先生との出会いと思い出を描いた漫画『モリちゃん ケンちゃん』の0話が収録されていて、「オレ達は一つ」「脳を共有してる」というエピソードがある。お二人は高校時代から漫画家を目指し、ずっと一緒にものを考えてきたため、お互いの情報や思考を共有する脳があり、そこからさまざまなことを引っ張り出せるというのだ。ネームをチェックするとき、森先生はその共有する脳をフル回転させ、三浦先生の情報や思考にアクセスなさっているのだろう。

 そして連載再開とアニメが盛り上がる中、東京・神田淡路町にあるMy Charaful Cafeでは、物語世界を体感できる「ベルセルクカフェ」もオープン(先着予約制、11月20日まで開催)。キャラクターとストーリーを再現したメニューやグッズが楽しめるそうなので、ファンはぜひとも足をお運びいただきたい。

「設定から物語に至るまで考えつくされた作品」(森先生談)というダークファンタジーの傑作『ベルセルク』。森先生をはじめスタッフの皆様、健康にはくれぐれもご留意いただき、完結までこのまま一気に走り抜けてください!

文=成田全(ナリタタモツ)

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