ダ・ヴィンチ編集部が選んだ「今月のプラチナ本」は、凪良ゆう『汝、星のごとく』

今月のプラチナ本

公開日:2022/11/5

今月のプラチナ本

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?

『汝、星のごとく』

●あらすじ●

瀬戸内の島で育った高校生の暁海。父は外に恋人がおり、それを島のみんなが知っている。母の孤独に巻き込まれ世間の目に苦しんでいたある日、アルコールの匂いのする転校生・櫂と出会う。自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂は暁海と同じように心に孤独と欠落を抱え、二人は自然と惹かれ合っていく。成長するにつれすれ違っていく二人だが、「自ら」を生きるために彼らが下す決断に胸を打たれる。

なぎら・ゆう●滋賀県生まれ、京都市在住。2006年にBL作品にてデビューし、代表作に21年に連続TVドラマ化された「美しい彼」シリーズなど。17年刊行の『神さまのビオトープ』を皮切りに、非BL作品の執筆もはじめ、20年『流浪の月』で本屋大賞を受賞。翌年、『滅びの前のシャングリラ』で2年連続本屋大賞ノミネート。本書は約2年ぶりの長編となる。

『汝、星のごとく』

凪良ゆう
講談社 1760円(税込)
写真=首藤幹夫
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編集部寸評

 

誰もが二人をそっと見守ることできるから

凪良ゆうは、異質な二人をまっすぐ描く。「助け合って生きていこうと、ぼくたちは約束したじゃないですか」。暁海と櫂の十数年を追う長編、傍らで温められたこの言葉をあなたはどう読むだろうか。思わず声が出たのが、「何周でもするやん」。作中、櫂に執拗に迫る編集者は、そこだけ切り取ればストーカーだ。なのに、二人は羨ましいぐらい幸せそう。そもそもこの世界では誰もが異質で、どんな二人もそれを受け入れあって成立する。なら祝福するのが良いよねと、小説は優しく説くのだ。

川戸崇央 本誌編集長。ふと思ったが、このプラチナ本を読んだ読者が集まる読書会をやったらどうか。原稿の尺、足りないんですよね。需要、あるかしら……。

 

混沌とした世界で、汝はなお星のごとく

「大人になるほど世界は混沌としていることを知る。とても怖くて、こんな気持ちを誰かに聞いてほしい」。凪良さんの作品はいつも、混沌とした世界を混沌としたまま生きることの不安と希望を教えてくれる。手を取り合い、同じ世界を見ていた人が、ふと見えなくなることがある。しかしその断絶からむしろ、暁海と櫂のかけがえのない関係は始まっていく。夜の海で、孤独に櫂を漕いでいれば、やがて暁はやってくる。その時のために海を進む私たちにとっての、星明かりのような物語でした。

西條弓子 恋バナ特集を担当。今回は敢えて「異性」に絞りました。異なるということは希望があると思います。それにしても最近ろくに恋バナしてないな……。

 

愛を選ぶ、生き方・選択の物語

17歳からの15年。暁海と櫂、二人の視点が切り替わっていく構成。出会いは瀬戸内海、景観の美しさを背景に、島の閉塞感、抗えない血縁が足元に絡まりながらも彼らは結びついていく。本書の本筋は愛の物語だ。そして生きるための「選択」を考えさせる物語でもあると感じる。文中の言葉が印象に残る。「正しさなど誰にもわからないんです。だから、きみももう捨ててしまいなさい」「もしくは、選びなさい」。恋愛もそう、生き方は自分次第だ。暁海のように正直な選択ができたら幸せだと思う。

村井有紀子 次号表紙は大泉洋さんにご登場いただきます〜! 祝!紅白3年連続の司会決定! 著作『大泉エッセイ』もこれを機にご一読くださいませ(宣伝)。

 

美しく誠実に生きる

瀬戸内の島で育った、暁海と櫂。共に親に問題を抱え人生の選択肢がしぼられているが、自らの人生を自分の手で取り戻そうともがく日々。15年に及ぶ愛の物語は、全編を通して美しさが際立つ。きらめく星を想起させる装丁、暁海が紡ぐ刺繍や瀬戸内の自然の描写はもちろん、暁海と櫂を支える登場人物の生き方までもが誠実で美しい。「自分で自分を養える、それは人が生きていく上での最低限の武器」をきちんと手に入れ、「自分を縛る鎖は自分で選ぶ」自らの意志で決断した暁海が清々しい。

久保田朝子 『流浪の月』『美しい彼』etc.映像化も素晴らしい凪良先生の作品。本作も映像化を想像して、自分なりのキャストを思い描きながら読むのも楽しそう。

 

あなたにとっての、星はなに

一番助けてほしい時に、頼りにならない親を持った暁海と櫂。逆に親から依存され、葛藤しながらもどうしても助けてしまう描写に、凪良さんは苦しみながら親を切り離せない、ギリギリの状態にいる子どもの気持ちを知ってくれている方なのだと感じた。暁海と櫂は人生の荒波に揉まれ、時には深く沈みながらも生きていく。社会的な成功も、世間的に見て正しい人間関係でいることも、何もかもいらない。他人の目に縛られず、自分の人生を自分で決めた、二人の物語に触れてほしい。

細田真里衣 3年ほど様子を見ていた親知らずをやっと抜きました。術後、口の中が腫れて唐揚げが食べられずとても辛かったです。お口の健康、何より大事。

 

恋愛模様を通して人生を問う

本作は恋愛小説であるとともに、“人生”を深く描いた物語だと思う。噂がすぐに広まってしまうような閉塞感漂う島で出会った暁海と櫂。作中では二人の恋愛模様を通して、私たちが生きる上で、いつかは向き合わざるを得ないことについても描かれていく。家族のこと、仕事のこと、結婚のこと……。さまざまな人生の“選択”を重ねていく二人の姿が、私たちに問いかけてくるのだ。「あなたはどう生きるのか」と。暁海と櫂の愛の行く末を、その人生を、どうか見届けてほしい。

前田 萌 先日、実家から愛犬の写真が送られてきました。でも、写っているのはお腹だけ……。顔も見たい。忘れられないうちに会いにいこうと思います。

 

人々の関係に決まった型などないのだ

恋愛は自由だし、家族の形だって決まりはない。頭ではわかっていても、他人と関わり合って生きている以上、思う通りに動けないものである。家族に苦しめられてきた暁海と櫂をはじめ、本書の登場人物たちは人生の道筋を他人によって支配され、もがき苦しむ。しかし、暁海の父親の不倫相手である瞳子は一言こう放つ。「自分の人生を生きることを、他の誰かに許されたいの?」。迷い間違えながらも、自身に正直な人生の形を模索する暁海と櫂。その姿に、思わず背中を押される一作だ。

笹渕りり子 植物を育てています。毎日違う表情を見せてくれるので楽しい。イキイキとしたりしおれたり、私自身のメンタルと比例しているようで申し訳ない。

 

その人にはその人だけの物語がある

プロローグとエピローグ、同じ場面を描いているのに受ける印象が全く異なる。冒頭では歪に見えた状況の背景が、物語を通じて見えてくるからだ。現実の世界ではこうはいかない。だからこそ、見えている事実のみを取り上げ、“正しさ”や“常識”を振りかざして周りが善悪を判断するのは、お門違いなのだと気付かされる。「誰もあなたの人生の責任を取ってくれない」、だから、世間の目が自分の判断の主体になってはいけない。自分の人生の責任を取るために、自分の物語を生きよう。

三条 凪 恋バナ特集を担当。かこつけて友人たちに恋バナを聞きまくったら意外と出てくる。皆こんなに素敵なエピソードを持っていたのか! 幸せな時間でした。

 

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