聞き上手が好かれるとは言うけれど…「いったいどうすればいいの?」にこたえる1冊

ビジネス

公開日:2022/11/10

好かれる人の聞き耳
好かれる人の聞き耳』(川島蓉子/主婦の友社)

 人は意外と人を見ていないし、人の話を聞いていない。だから人との意思疎通が難しいと思うのは、当然のこととも言える。家族、友人、知人、仕事関係の人から大切な人まで、コミュニケーションを円滑にしたいなら、まずは自分が相手のことを見て、話を聞くことから始めてみるといい。

 では具体的にどうすればいいのか。そうした悩みをスーッと解きほぐすように、指南してくれるのが『好かれる人の聞き耳』(主婦の友社)だ。著者は、長年にわたって、営業、企画、インタビュー取材、ブレーンストーミングの仕切り役、大学講師など、縦横無尽に豊富な経験を持つ川島蓉子氏。大勢の人々と仕事をしてきたなかで気づいたことを、成功例だけでなく失敗談も織り交ぜて、「こんな状況でこうしたのがダメだった」「あそこでそう言ったのが良かった」など語りかけるように、綴っている。

 ただし、川島氏は断言する。

こういう口調だからこういうふうに行動する。こういう表情のときはこう対応するなど、パターン化してノウハウにできることではありません。

 やはり状況も相手も千差万別なので、シンプルな方法論などあるはずがないのだ。けれども、だからこそまず自分が「人と話すときは、相手の表情や口調も含め、まるごと受け止める」ことの重要性を解く。相手をよく見ることで、多くの気づきが得られるからだ。

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好かれる人の聞き耳 p.50-51

好かれる人の聞き耳 p.58-59

 さまざまな実体験が、具体的で腑に落ちる。例えば、役職が上の人に大げさに頷く人、臆せずにゴマすり的なことを言う人は、上司の意見しだいで手のひらを返したように意見を変えることがあるから、一緒に仕事を進める時は、そうした可能性を視野に収めるべし…といったドキッとするようなアドバイスもある。

好かれる人の聞き耳 p.142-143

 相手の話を聞くだけでなく、自分が話すことを相手に聞いてもらうようにする方法も明かしている。こちらは著者自身が悩んできたことを、「頼む」「納得してもらう」「断る」「やり過ごす」に分類し、経験談をもとに実践的に説く。

 何かをお願いする「頼む」は、できるだけ相手に役立つ、またはメリットがあるように工夫したうえで伝えるといい。その願いに応える、頼まれたタスクを相手が請け負うことで、相手も何か得られることがあると訴えるのだ。ある時、著者が部下に仕事をそう頼んだ場合は、「頼みたいからっていう魂胆がバレバレですよ」と笑われたそうだが、雰囲気よく円滑に「頼む」ことができたことが伝わってくる。

 また、「納得してもらう」においても、「相手の立場や役割を考える」ことが大切と説く。著者自身も若い頃は多くの失敗を重ね、「わかってくれない相手が悪い」と自信をなくしたこともあったという。だが、相手に納得してもらうには、自分の正論を押しつけるのではなく、まずは「相手が先」の目線を持つ。すると、見落としていたかかわり方のヒントに気づき、物事が好転しはじめたという。

 人の話を聞くことも、人に話を聞いてもらうことも、まずは相手を思い遣ることで気づくべきことに気づけるのだ。基本的なことで言えば、その人が元気なのかそうでないのかを見たり、声のトーンを聞いたりすることが挙げられるだろう。まずは、家族や同僚と交わす「おはよう」の挨拶や、何かあった時の「ごめんなさい」「すみません」からでも、言葉だけではなく、表情や口調も含めて、まるごと受け止めるようにして、普段から気づくべきことに気づけるようにしたい。

文=松山ようこ

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