不登校でも大学進学はできる。全国約20万人の不登校生徒に学びの選択肢を

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更新日:2022/11/11

 毎年増え続けている不登校の子どもたち。現在は約20万人と言われており、この5年間で約1.5倍に増えている。「学校に行きたくない」と子どもが言ったらあなたはどう対応するだろうか? 不登校は決して他人事ではなく、誰にでも起こり得ることである。

 もし自分の子どもが不登校になったらこの本を読んでほしい。

学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法』(安田祐輔/KADOKAWA)は、「不登校からの大学受験」をテーマとし、当事者にも伴走者にも役に立つ勉強法のノウハウをまとめた書籍だ。

 本書を手にとってまず感じたのは、同志ができたという気持ちだった。

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 私自身も学校が合わず、約10年間の不登校を経験した。私が伝えたいのは学校に行くことがすべてではなく、学校は行ってもいいし、行かなくてもいいもので、学校に行かないのであればその時間をどうやって使うのかが重要という考え方だ。

 しかし、私が活動を始めた頃は不登校の本といえば、「どうやって学校に戻すか」を前提としたものばかりで悲しい気持ちになっていた。私は孤独に社会の偏見と戦っていると思っていたが、同じように活躍する仲間がいた。

 なので、まずは同志が増えて嬉しいという気持ちを伝えたい。

 本書の内容に触れると、不登校を経験した著者が、27歳という若さで創業した塾「キズキ共育塾」の運営で培ってきた子どもとの関わり方を学ぶことができる。特に子どもが勉強しないと悩む親御さんにとっては一読する価値があるものだ。

 具体的な勉強方法というよりも、そもそも勉強の重要性や子どものモチベーションがどうすれば高まるかといった視点で書かれており、勉強慣れしていない子どもに親としてどうやって関わればいいかのヒントが見つかるだろう。

 特に最近広がってきた映像授業、教育系YouTuberについても触れられており、しっかりと時代の変化を捉えた書籍になっていると感じた。

 本書の中で私が特に共感したポイントは、「『普通』を忘れよう」という項目だ。例として早起きについて書かれているが、「すべての人にとって早起きが良いことではなく、自分に合った生活リズムを見つけることが重要」という一文は私自身も含め、早起きが苦手な人にとってはとても救われる言葉だ。

“誰かが決めた「普通」に合わせるのではなく、自分らしく生きよう。”

 このようなメッセージが、本書にはちりばめられている。

 学校で学ぶことに向いている子どもと向いていない子どもがいる。大切なのは学ぶことであって、学校で学ぶというのはひとつの手段でしかない。その子にあった環境を作ってあげるのが親御さんの役割だ。

 明言しておくが、けっして不登校を推奨しているというわけではない。学校で学ぶことが向いている子どもたちもいるし、その方が多数派かもしれない。

 学びのインフラとして全国どこにいても一定のレベルの教育が受けられる国はなかなかない。だが、そこに合わない子どもたちがいることは事実で、その数は年々増え続けている。

 大切なのは選択肢だ。学校で学んでもいいし、他で学んでもいい。キズキ共育塾のような選択肢が広がることで、救われる子どもたちがたくさんいるだろう。

 学校以外の選択肢を広げる同志ができたことを嬉しく思う。

文=小幡和輝

【著者/安田祐輔】
1983年生まれ。ICU(国際基督教大学)卒業、総合商社を経て、キズキを立ち上げ。現在は、中退不登校向けの学習塾「キズキ共育塾」をはじめ、自治体からの委託事業や就労支援サービス等の事業を全国40か所で展開。著書に『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本』(翔泳社)などがある。

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