突然始まった“疑似夫婦生活”は期限付き… 余命一年の男女が紡ぐ切なくも温かい365日の記録

文芸・カルチャー

公開日:2022/11/19

余命一年、夫婦始めます
余命一年、夫婦始めます』(高梨愉人/ポプラ社)

 2022年11月8日(火)、高梨愉人氏の小説『余命一年、夫婦始めます』が発売された。序盤から切ないシーンのオンパレードで、ネット上には早くも読者から様々な反響が寄せられている。

 作中で描かれているのは、余命一年同士の男女が紡ぐ“期限付き疑似夫婦生活”。物語は、仕事一辺倒に生きてきた瀬川拓海が突然の余命宣告を受けるところから展開されていく。失意の中、病院で偶然出逢ったのは天真爛漫な女性・葵。じつは拓海と同様、彼女も余命幾ばくもないという。

 そんな葵から「死ぬ前に結婚を経験してみたい」「未練を晴らすため協力しましょう!」と突拍子もない話を持ちかけられ、ふたりは急遽同棲することに。夫婦として叶えたい6つの目標を作成し、残された1年で疑似夫婦生活をスタートさせた。

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 時に衝突しながらも距離を縮めていく拓海と葵。だが同時に、刻一刻と疑似夫婦生活のリミットが近づいていき――。夫婦とは? 家族とは? 切なくも温かい恋と愛の物語が幕を開ける。

 あらすじだけでも落涙必至のラストを想起させる内容だが、じつは物語序盤から切ないシーンが満載だ。たとえば冒頭から早速、拓海は余命宣告を受けるが、そこからタガが外れたように次々と不幸が押し寄せてくる。夢も希望も失い、挙げ句の果てに“自分がいなくても仕事は回る”と気づかされ、「一年とは言わない。いますぐに消えていなくなったって、誰も困ることはない」と絶望するシーンは多くの人が胸を締めつけられるはずだ。

 実際にネット上でも「初っ端から切なすぎる…」「仕事一辺倒の人間が仕事で絶望するほど、ツラいものはない」「“いますぐに消えていなくなったって、誰も困ることはない”という台詞が凄い胸に突き刺さった」などの感想が寄せられている。ただ、そんな彼が葵との疑似夫婦生活を通して、どのように変わっていくのかも見どころの一つといえるだろう。

 ちなみに同書の装画を務めているのは、大人気イラストレーターの前田ミック氏。ヴィレッジヴァンガードとコラボ商品を展開するなど、様々な実績を誇る人物で、表紙以外にも挿絵や販促のイラストも手がけている。物語はさることながら、作品の世界観にマッチした情緒的なイラストにもぜひ注目してほしい。

 果たして期限付きの疑似夫婦生活はどのような結末を迎えるのか、気になる人は早速チェックしてみよう。

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