おすしが、アイスが、ソーセージが、おかいものにやってきた!ミニチュア作家・田中達也の最新絵本作品

文芸・カルチャー

公開日:2022/11/12

おすしがふくをかいにきた
おすしがふくをかいにきた』(田中達也/白泉社)

 すみずみまで楽しい写真絵本が刊行された! その名も、『おすしがふくをかいにきた』(田中達也/白泉社)。ミニチュア写真家・見立て作家、田中達也さんによる絵本作品だ。田中さんといえば、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」のオープニング映像や書籍の装画でも知られ、Instagramのフォロワー数は360万人超。日常にあるものをミニチュアの視点で捉えたユニークな世界は多くの人を虜にしているが、この絵本作品も読む人の心をワクワクさせてくれる1冊だ。

 表紙からして、すでに楽しい。お皿や醤油さしのビルを闊歩するマグロのおすし。おすしは買い物に出かけている。ハンガーにかけられているのは、色とりどりのすしネタ!? なるほど、すしネタを服に見立てると、こんな世界が広がるのか! エビやイカの服に、いくらのネックレス。「サーモンにします?」「おもいきって トロにしようかな?」…。ミニチュアの視点に立つと、見慣れているはずのものが別のものに見えてくるから不思議だ。サングラス姿のおすしの姿がなんとも可愛らしいし、そんなおすしに接客するフィギュアの姿も面白い。

おすしがふくをかいにきた

 このミニチュアの街に登場するのは、おすしだけではない。アイスが帽子を買いにきたり、えんぴつがカットにきたり、シュウマイがサウナにきたり…。彼らが出かけるお店は日常にあるものばかりで構成されているはずなのに、そこには私たちの見たことのない世界がある。その世界を覗くだけでドキドキワクワク。表情豊かな彼らの姿と、その変身ぶりに思わずクスッと笑わされてしまう。

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おすしがふくをかいにきた

 たとえば、ソーセージは車を買いにやってきた。見てみれば、食パンやクロワッサン、コッペパン、サンドイッチなど、車に見立てられたたくさんのパンがズラリ。思わず迷ってしまっているようだ。ソーセージ以外にも、たまごやトマト、レモンも車を選んでいるようで、彼らがどんなやりとりをしているのかも気になる。細かいところまで緻密に作り込まれた世界には発見がたくさん。どれだけ眺めていても飽きない。

おすしがふくをかいにきた

 田中さんの発想力、創造力には脱帽だ。大人になると、常識や固定観念が邪魔をして、ついつい遊び心を忘れてしまいがちだが、田中さんの生み出す世界に触れていると、なんだか童心にかえれる。小さい頃はこんな風に柔軟に物事を見ていたことを思い出し、もっとのびのびと発想していいのだということに気づかされる。子どもも大人も、この絵本を読めば、想像力がかき立てられること間違いなし。耳をすませば、愉快に暮らすミニチュア世界の住人たちの会話が聞こえてくるはず。「これは何かな」「どんなお話をしているのかな」…自然と親子の会話が弾むに違いないこの作品を、ぜひともあなたも手にとってほしい。

文=アサトーミナミ

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