「あなたのままで生きていけ」男尊社会を生きる女性たちに、元Domani副編集長が送る熱いエール

ビジネス

公開日:2022/11/17

男尊社会を生きていく昇進不安な女子たちへ
男尊社会を生きていく昇進不安な女子たちへ』(下河辺さやこ/主婦の友社)

 ジェンダー平等、女性活躍が声高に叫ばれたって、今の社会はまだまだ女性の立場が弱い。「女性にはかなわない」「女性はすばらしい」と女性をほめる男性の言葉にも、その裏に男性のゆるぎない優越感が微妙に見え隠れしたりする。そんな現在は、「女卑」まではいかないものの「男尊」社会――テレビ番組『それって!?実際どうなの課』でも人気の「できる女」、元Domani副編集長の下河辺さやこさんは、著書『男尊社会を生きていく昇進不安な女子たちへ』(主婦の友社)で、現代社会をそうぶった切る。そして残念ながらそういう社会だと自覚した上で、どう立ち回れば本当に活躍できるのか、実際に長く闘ってきたからこそみえてくる知見を総動員して、後輩女性たちに本音のアドバイスをするのだ。

 数々の女性誌の副編集長を歴任してきた下河辺さんは現在も小学館の会社員。そのため本書は「会社という男社会の中でどう生きるか」が大きなポイントとなっている。たとえばそれは、男性たちから「女だから」と決めつけられるバイアスと闘う方法だったり、ゴルフや接待などが重視される男のルールの中で仕事をするコツだったり(たとえば誘いを断るときには「すみません」の代わりに「残念です」を使えば、「また誘うか」と前向きな関係を維持できやすい、など具体的だ)、さらには部下を育てる立場になったときに気をつけたいことだったり…。自分を大切にしつつ、周囲と気持ちいい関係を築く「考え方」や「心配り」のコツが具体的に紹介されているので、大いに参考になるだろう。

 ところで、こうした会社での立ち回りも、「子ども」問題が絡んでくるとさらに複雑になってくる。著者が指摘するように「男性は『仕事と子ども』の両方を得るために悩んだりしないのに、女性だけが悩まなければいけない。それは明らかにおかしなこと」なのだが、現実はシビアだ。男たちには決定的にできないことは「出産」であり、それができる性である女たちに「産むのか産まないのか」という人生の選択が迫られるのはやむを得ない。このあたりなかなかデリケートな問題だが、著者はそこにもズバっと切り込んでいく。「自分の卵子を使って経済的身体的負担最小限で子どもを授かりたいなら、早いほうがいい」「ハッキリ言いますが、自分にしかできない仕事なんてありません。あるかもしれないけれど、本当にそうなら、会社員でいる意味がない。命より大切な仕事もないし、育児休暇や時短勤務は権利です」と著者。産む気があるなら心配ばかりしてもはじまらないし、現実(仕事)はあとから対処すればいいのだ。

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 仕事と子育ての両立はなかなかハードだし(著者も29歳で出産し、育児と仕事に追われた苦労もいろいろ紹介している)、子どもを持たない人生を選んでも更年期障害や介護などの不可抗力の可能性はあるし、どうしても女性の負担は多めなのが現実。そんな中で女性活躍とか昇進とか無理ゲー…かもしれないが、やっぱり少しずつ意識したり、声をあげたりしていかないと、世の中はいつまでたっても変わらない。だからこそ著者も自分の失敗体験や反省もさらけ出し、さらには多くの働く女性の本音をあらためて取材して、本書で後輩たちに熱いエールを送るのだ。

 本書のラストに掲げられたメッセージは「をとこのフリも をんなのフリもしなくていい #あなたのままで生きていけ #男尊社会」。先輩の熱い言葉は、あなたの背中をどーんと押してくれることだろう。そしてそんなあなたがあげる「声」が、いつか次の後輩たちの未来を変えていくかもしれない。

文=荒井理恵

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