白鳥さんと巡るアートの旅は見えないものが見えてくる――「Yahoo! ニュース 本屋大賞ノンフィクション本大賞」受賞作を紹介!

文芸・カルチャー

公開日:2022/11/19

 より多くの読者が良質なノンフィクション作品に出会えることを願い、「Yahoo!ニュース」と「本屋大賞」が連携して創設した「Yahoo!ニュース|本屋大賞 ノンフィクション本大賞」。2022年11月11日(金)に今年の受賞作品が発表され、川内有緒氏の『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』が見事大賞に輝いた。

本屋大賞

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 同作は、全盲の美術鑑賞者・白鳥さんと巡るアートの旅を描いた物語。「白鳥さんと作品を見るとほんとに楽しいよ!」という友人・マイティのひと言で、そのユニークな旅は突如幕を開けた。

 目の前に広がる絵画や仏像、現代美術などは、白鳥さんの目にはもちろん見えていない。だからこそ目の前に何があるのか、どんな作品なのか、彼に教える必要が出てくる。白鳥さんや友人たちとそんな会話をしていくと、新しい世界の扉がどんどん開いていき、それまで見えていなかったことが見えてくるように。

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 白鳥さんとアートを見る旅は、私たちをどこに連れて行ってくれるのか。一緒に見る、その先に見えてきた世界とは──。

 著者の川内氏は、第33回新田次郎文学賞受賞作品『バウルを探して 地球の片隅に伝わる秘密の歌』などを執筆したノンフィクション作家。今回の受賞に対し、彼女は「今回の本を書くことは、他者との出会いや会話を通じて世界の輪郭を捉え直し、自分自身のまなざしが変わっていくような体験でした」「これを糧に、また未知の地に向かって歩み、書き続けたいと思います」とコメントを残している。

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<著者近影>【撮影:齋藤陽道】

 白鳥さんとのアート巡りを通して感化されたのは、もちろん著者の川内氏だけではない。それは同書の読者も同じようで、SNS上には「アートから伝わる体温や見る側の視点がどんどん変わっていく」「白鳥さんたちのやり取りや著者の思索がおもしろく、読んでるこちらもいろいろと考えさせられる」「今まで美術鑑賞は遠い話だったけれど、白鳥さんとのアート巡りならぜひ参加してみたい!」「この本を読むと、思いのほか世界が広がる」などの反響が数多く寄せられていた。

 ちなみに今回ノミネートされた作品は、川内氏の作品を含めて全部で6つ。鮫島浩氏の『朝日新聞政治部』や鈴木忠平氏の『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』、小林元喜氏の『さよなら、野口健』などがノミネート作品に選ばれている。

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朝日新聞政治部』(鮫島浩/講談社)

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さよなら、野口健』(小林元喜/集英社インターナショナル)

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ソ連兵へ差し出された娘たち』(平井美帆/集英社)

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妻はサバイバー』(永田豊隆/朝日新聞出版)

 ぜひこの機会に、ノンフィクション本のおもしろさに触れてみてはいかがだろうか。

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