シングルファーザーと結婚し14歳の息子の継母に!「お母さん」になりたくて試行錯誤した8年間の記録

マンガ

更新日:2022/12/8

14歳男子の継母になった私
14歳男子の継母になった私』(汐田まくら:著、べにゆう(キッチン夫婦):企画・原案/KADOKAWA)

 今の時代、シングルファーザーやシングルマザーとの再婚は珍しくない。だが、実際に血の繋がらない子どもの親になり、子育てに途中参加するとなると頭を抱えてしまうのではないだろうか。親と認めてほしい反面、血の繋がりのない自分はどこまで口を出してよいのか、どんな態度で接すればいいのかと考えてしまうからだ。

14歳男子の継母になった私』(汐田まくら:著、べにゆう(キッチン夫婦):企画・原案/KADOKAWA)は、タイトルの通り継母となった妻の葛藤がひしひしと伝わってくる実録系コミックエッセイ。

 本書は「毎日が発見ネット」で連載され、累計930万PV超となった大人気漫画。べにゆう氏が14歳の息子・元気くんの母親になろうと奮闘した8年間の日々を収録。多感な時期の息子と子育て初経験の継母が、ゆっくりと歩み寄り、親子らしくなっていく展開が胸を打つ。

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 べにゆう氏は40歳の時、SNSで知り合ったシングルファーザーと結婚。特に子持ち男性との結婚を望んでいたわけではなかったが、我が子と一生懸命向き合っている彼の姿に惹かれ、結婚を決意する。

 子どもの頃から周囲には同性夫婦や子連れ再婚など、様々な形の家族がいたため、結婚へ踏み切ることへの抵抗もあまりなかった。

 だが、実生活を具体的に想像すると、大きな不安に駆られるように……。息子となる元気くんは自分たちの結婚に賛成してくれたものの、「自分の母は産みの母だけ」と断言していたため、接し方に悩みながら、手探り状態で関係を築き始めていった。

14歳男子の継母になった私

14歳男子の継母になった私

 まず立ちはだかったのが、夫不在時の夕食時間。沈黙で気まずくならないよう、べにゆう氏は彼の好きそうな料理を作ったり、会話の題材を用意したりと悪戦苦闘。

 そうした日々を送る中で、親らしい態度とはどういうものなのかと悩んだり、無償の愛を与えられる夫とは違い、どこかで元気くんに見返りを求めている自分に気づいて反省したりと、一進一退の日々を過ごす。

14歳男子の継母になった私

14歳男子の継母になった私

 また、「お母さん」という言葉の重みに打ちのめされることもあったよう。家族という言葉はしっくりくるのに「元気くんのお母さん」と言われると戸惑ってしまったり、決して「お母さん」とは呼んでくれない元気くんの姿を受け、自分はどんな存在なのかと考え込んだりすることも。

14歳男子の継母になった私

 だが、一緒に過ごす時間が長くなるにつれ、元気くんの態度は変化。よく話しかけてくれ、他人行儀ではない言葉を使ってくれるようになったのだ。

 そうした変化を受け、べにゆう氏も元気くんのことを思って注意をしたり、緊張せずに一緒の時間を過ごせたりするようになっていった。

14歳男子の継母になった私

14歳男子の継母になった私

 やがて、元気くんは大学生に。だが大学2年の春から不登校になってしまう。講義の内容が理解できず、恥ずかしさから、そのことを友人や先生に相談することも難しかったため、学校へ行けなくなってしまったのだ。

14歳男子の継母になった私

14歳男子の継母になった私

 行きたいと行けないの狭間で苦しむ息子の姿を受け、べにゆう氏夫婦は元気くんが一番いいと思える選択ができるよう、ぶつかり合いながら話し合う。ピンチを通して、べにゆう氏と元気くんは、さらに親子らしくなっていく――。

 血縁関係がないからこそ、血の繋がりがない子どもに対しては「親として認めてほしい」という気持ちが募りやすい。べにゆう氏のように「母親」という言葉に苦しめられたり、自分の存在価値が分からなくなってしまったりする人も少なくないだろう。

 だが、実際に試行錯誤したべにゆう氏は、こんな答えに辿り着いたようだ。

夫は息子に言い聞かせるように「べにゆうさんは元気の“お母さん”だからね」と言うのですが、私は血の繋がりよりも、息子に「かけがえのない大切な存在の一人」だと思ってもらえれば、それだけで十分嬉しいのです。

 あとがきに綴られた、べにゆう氏のこの言葉は血の繋がらない我が子との向き合い方に悩む人にとって、心を軽くするお守りになる。たとえ「お母さん」と呼ばれなくても、血縁関係がなくても、相手のことを心から愛せば、人は家族や家族になれるのだ。

 そんな学びもくれる本作は血縁関係であることに甘え、我が子と正面から向き合うことをおざなりにしてはいないかと考えさせられもする一冊。多様な家族の形がある今だからこそ、多くの人に届いてほしい。

文=古川諭香

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