いくつになっても、心を救うのはガールズトーク! 女3人+子どもたちの同居生活は、アラフォーあるあるが炸裂

マンガ

公開日:2022/12/4

そもそもウチには芝生がない
そもそもウチには芝生がない』(たちばなかおる/双葉社)

 女性向け漫画の主流テーマといえば、恋愛や仕事。したがって主人公は10代や20代の未婚女性が多く、30代40代かつ既婚の女性が主人公の作品はそこまで多くない。あったとしても夫婦関係や育児や不倫がテーマのものがよく目に入るような気がします。もちろんそれらの中にも必読の名作はたくさんあって読みごたえはありますが、しかしそんな中で、「アラフォー女性3人の同居生活」という斬新な設定が面白く、「歳を重ねるのも悪くないな」と思わせてくれるのが『そもそもウチには芝生がない』(たちばなかおる/双葉社)。44歳、アラフォー女性3人が同居し、育児や介護、健康問題などこの年代らしい悩みに直面しつつもお互い助け合っていくという、他に類を見ない魅力を持つ作品です。

「女性の友人関係は、結婚出産などのステージが変わると疎遠になってくる」とはよく言われることですが、この3人は既婚で子持ちのスミ、既婚で子どもがいない恵子、未婚のマキとそれぞれまったく違うステージにいます。それでもお互いの環境を一切マウンティングしたりせず、日々の辛さや幸せを共有できているのが彼女たちのいいところ。お互いのしんどさを尊重し合い、手を貸し合おうとする姿が素敵です。

 また作中の言葉を借りれば、40代は「子育て・介護・更年期」の3K世代。スミがPTA活動の後任を決めるのに苦労する話や、恵子が高齢出産で子どもを産んだ直後、夫が恵子の地雷を踏みまくる話など、各々の悩みや怒り、辛さには「そうそうそうそう!」と首がもげるほど頷いてしまうリアルさがあり。4人目になった気分でアラフォーならではのガールズトークに引き込まれるので、読むと友達と話した後のようにすっきりした気分になります。そして事あるごとに近況を報告し合う3人ですが、その励まし方がいい感じに適当なのもリアル。かと思いきや時にジーンときて、こちらまで泣いてしまう場面もあり……。そんな振り幅の広さもこの漫画の魅力です。

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 また、本作の話題になった回のひとつに“青大豆”という話があります(第3巻収録)。恵子が作った煮物に入っていた青大豆がおいしすぎてすっかりハマってしまったスミが、青大豆のベストな浸水と茹で時間を追求。ついに最高の状態にたどり着き、その青大豆をつまみに3人が狭いベランダでビールを飲み、日々のストレスを癒すという話です。特にドラマのない、ただの日常の一コマなのですが、青大豆のおいしさにどよめく3人の盛り上がりぶりが面白く、飲みながら「ぜいたくなお店でぜいたくな食事するより、こういう方が幸せだなぁ」と語るスミに、ふたりとともに頷いてしまう神回。この回のように、恋愛・育児・介護にまつわる話だけでなく、日々の発見や感じたことをジャンルレスに取り上げていること、そしてその日々の小さな出来事が毎回しっかり面白いことも本作の素晴らしさです。

 最新9巻では、スミが大腸内視鏡検査を受けたり、韓ドラ好きの恵子が新たな一歩を踏み出したりと、またしてもアラフォーあるあるが満載。日々多方向からのストレスにさらされているアラフォー世代にはもちろん、これからアラフォーになる人にも、人生の予習としてぜひ読んでほしい一冊です。

文=原智香

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