モテるって本当に幸せ? まともに日常生活が送れない“漫画のモテ女子たち”の知られざる苦労

マンガ

公開日:2022/12/4

 学生時代、異性からモテる友人を見て、「いいなぁ~」と思った経験はありますか? ありますよね? 「なんとも思ってない人から言い寄られても、面倒くさいだけだよ」という話を聞いては、「嘘つきめ」と、心の中で思ったりしませんでしたか? しましたよね?

 一般的に〈モテること=良いこと〉と思われがちですが、実際はそんなにいいものではありません。むしろ、モテるって結構困ることが多いんですよ……。

 なぜ筆者がモテる側の気持ちがわかるかというと、漫画にそういうキャラクターがいるからです。彼女たちを見て学びました。モテるって決していいことばかりじゃないんだということを。漫画のモテ女子たちの知られざる苦労をご紹介しましょう。

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モテすぎると、まともに日常生活が送れない

紺野泉(『主に泣いてます』東村アキコ/講談社)

主に泣いてます
主に泣いてます』(東村アキコ/講談社)

“モテすぎて不幸”の代表格といえば、『主に泣いてます』の泉さんでしょう。他人の人生を狂わせるほどの美貌の持ち主である泉さんは、そのせいで苦労ばかり。

自分を取り合って刃傷沙汰が起きたり、ストーカーから逃れるため引っ越しを何十回も繰り返したり。仕事をしたくても、面接に行けばすぐに重役からデートに誘われてしまうため、働くこともできません。とある有名画家の愛人になって、モデルとして仕事をするも、給料が支払われることはなく、経済的にも困窮しています。

 そんな泉さんが、一体どうやって自分の美貌と折り合いをつけて生きていくのか? という物語です。

 自分の美貌を武器にするタイプの強い女性であれば、もっと楽に人生を歩めたかもしれませんが、泉さんは真逆。繊細で引っ込み思案な性格なので、うまく人生の舵取りをすることができずにいます。泉さんクラスになると、もう羨ましいなんて言っていられません。ただただ気の毒。「生まれ変わったら、誰からも愛されるブスになりたい」というのは、謙遜でも嫌味でもなんでもなく、泉さんの切実な願いなのです。

柴石すいれん(『日々蝶々』森下suu/集英社)

 泉さんと同レベルで、生きていくのが難しいモテ女子が、『日々蝶々』の柴石すいれん。

 すいれんのモテっぷりは尋常ではなく、小学校ではすいれんに好意を寄せる男子からいじめを受けてトラウマに。男子から距離を置くため女子中学校へ進学するものの、女子からもモテてしまいトラブル続発。何をしても周りが過剰に反応するため、次第にすいれんは自分の内側に閉じこもるように。喋ることも笑うことも苦手になってしまいます。

 そんななか、唯一自分に興味のない男の子、川澄君が気になるようになり……というピュアなラブストーリーです。

 すいれんもまた、マイペースで寡黙な性格なので、注目されることを好みません。それなのにどこに行っても、顔を覗き込まれ名前を呼ばれる。想像するだけでストレスです。だからこそ、川澄君のそっけなさが響いたのでしょう。男子を苦手に感じていたすいれんが、必死に川澄君にアプローチする姿はなんともいじらしいです。

 

モテないための涙ぐましい努力

本郷唯(『ふしぎ遊戯』渡瀬悠宇/小学館)

ふしぎ遊戯
ふしぎ遊戯』(渡瀬悠宇/小学館)

ふしぎ遊戯』のモテ女子といえば、主人公の夕城美朱……なのですが、ここでピックアップするのは、親友・本郷唯ちゃんです。

 朱雀七星士(すざくしちせいし)から溺愛される美朱に意識が向きがちですが、作中では唯ちゃんのほうがモテる設定なんですよね。

 ショートヘアが印象的な唯ちゃんは、もともとはロングヘアだったそう。モテてモテて仕方ないので、髪を切ったということです。ボーイッシュを演じることで、異性からの視線を遠ざけようという作戦ですね。

 ショートヘアにしたことでモテなくなったかは定かではありませんが、モテないために髪型を変えるというのは相当強い意志がなければできません。

 気の強さは本編でもしっかり描かれており、裏切り者の美朱に、徹底的に復讐しようとします(※後に勘違いと判明)。自分を苦しめている張本人である女が、イケメン七星士にちやほやされて楽しそうにしているのを知ったら、そんな気持ちになるのも無理はありません。そうでなくても唯ちゃんを取り巻く青龍七星士はギスギスしているので、ストレスが溜まりそうです。

吉岡双葉(『アオハライド』咲坂伊緒/集英社)

 女友達からの嫉妬をうまくかわすのも、モテ女に求められるスキルの一つです。『アオハライド』のヒロイン、吉岡双葉も嫉妬に悩まされた一人。

 男勝りでガサツな女子だと周囲から思われている双葉。バッグの中はぐちゃぐちゃ、大食いキャラで周りを引かせることも。しかしこれ、じつは全部わざとなんです。

 男性が苦手だった双葉は、中学2年生のとき「男子の前で猫をかぶっている」と女子から疎まれ孤立。モテない女子の嫉妬のせいで、辛い思いをします。

 そこで、高校では全部やり直そうと、女子力を全捨てすることを決意。ガサツキャラに転じたというわけです。モテを遠ざけるために、性格を変えるなんて並大抵のことではありません。それだけ中学校での出来事がトラウマだったのでしょう。

 ところが自分を演じているせいで、友達にも本音を話すことができなくなります。そんなとき背中を押してくれたのが、初恋相手の馬渕洸でした。洸に「友達ゴッコ」と図星を突かれた双葉は、なんとなく合わないと思っていた仲良しグループから離れることを決意するのです。双葉を見ていると、モテと女の友情が、絶妙なバランス感覚から成り立っていることがわかります。

 

モテることにためらわない女

小宮山 麻美(『高校デビュー』河原和音/集英社)

 モテ女がみんな苦労しているかというと、そんなことはありません。自分の魅力を理解し、最大限生かしている強キャラもいるのです。

高校デビュー』は、主人公の長嶋晴菜が、イケメンの小宮山ヨウにモテをコーチしてもらうというストーリー。作中で小悪魔として登場するのが、小宮山麻美です。

 ヨウの妹である麻美は、兄同様にルックスが良く、非常にモテます。スーパーのバイトをすれば、その日のうちに社員全員から連絡先を聞かれるレベル。目をじっと見つめるだけで、誘惑できる特殊なスキルの持ち主でもあります。

 麻美の場合、モテて当然だという自覚があるため、困ることはありません。思わせぶりもあしらい方も超一級なので、男も女も皆麻美に翻弄されてしまいます。かと思えば、本命相手には自分のモテテクニックが伝わらず、涙することも。そんなギャップも麻美の武器なのです。

 漫画のモテ女子について、本気出して考えてみました。こうして苦労エピソードを見てみると、モテるのも大変だということがよくわかりますね。「モテなくて良かった!」と思ってもらえたら幸いです。

文=中村未来

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