ダ・ヴィンチ編集部が選んだ「今月のプラチナ本」は、モクモクれん『光が死んだ夏』
公開日:2022/12/6

あまたある新刊の中から、ダ・ヴィンチ編集部が厳選に厳選を重ねた一冊をご紹介!
誰が読んでも心にひびくであろう、高クオリティ作を見つけていくこのコーナー。
さあ、ONLY ONEの“輝き”を放つ、今月のプラチナ本は?
『光が死んだ夏』
●あらすじ●
田舎の集落で育ち、幼馴染みとしてずっと一緒に過ごしてきたよしきと光。
ある日、山に出かけた光が一週間ものあいだ行方不明に。その後帰ってはきたものの、どこか様子がおかしい。不審に思っていたよしきは、光が別の〈ナニカ〉にすり替わっていることに気がついてしまう。「お願い…誰にも言わんといて…」。別の〈ナニカ〉となったヒカルと共に過ごすうち、よしきの周囲で不気味な出来事が起こり始め──。
もくもくれん●Twitterに投稿したマンガがバズったことでマンガ家に。『光が死んだ夏』が商業連載デビュー作品。
編集部寸評
爽やかなブルーのカバーを捲ると、そこには
見かけはそのままに、行方不明だった親友が得体の知れない〈ナニカ〉となって現れた──それを受け入れるところに物語の始点がある。変質を遂げたはずの二人の関係性だが、作者がすごいのはここから。例えば冒頭、田舎の商店の軒先で二人は、同じアイスを分けあって賞味する。しかし、それは本当に同じでありえるのか? そして1巻の中盤、体育用具室でよしきはヒカルの“外皮”を突破するが──。見事な擬音や、ネガとポジを瞬時に反転させる表情の演出など、読みどころ満載。
川戸崇央 本誌編集長。今年はご縁を頂き、地元・盛岡でワークショップに参加。他にも様々な形で読者の皆さんとの繋がりを感じることができた一年でした。
愛情は歪んでからが勝負だぞ!
死んだはずの親友が、ふらりと帰ってくる。しかしそれはもう彼ではない。災厄を予感させる〈ナニカ〉になっている。「分かるやろ/このまま一緒に居ったらあかんって」。そんなことわかっている。だけど俺は──ってたまらない‼ 濃密なホラーであり濃密な人間ドラマでもある本作。ヤバい〈ナニカ〉とそれでも一緒に居たいと願うなら、おばちゃんの言う通り「先に進むためには知っておく必要があるんちゃうかな」なのだろう。頑張れよしき。愛情は歪んでからが勝負だぞ!
西條弓子 いとしい存在がおそろしいナニカになってしまう系の話が大好き。そういえば昔からイザナギとイザナミの別れ話で爆萌えしていたし、もう性癖ですね。
ワクワクの要素、詰まってる!
大切な親友が亡くなった。その友は正体不明の〈ナニカ〉になって、私のことが大好きなまま、外見変わらずいつもの笑顔で隣に戻ってきた。さて自分ならどうする──? 作品全体に漂う不穏な空気は、細かい画力からも存分に伝わってきて、終始読み手をぞわぞわさせる。村で起こる不気味な事件も、「混ざる」と警告してくる謎のおばさんキャラ登場も、今後への布石として興奮させてくる。親友の存在を享受している自分に日々戸惑う主人公、果たしてホラーか人間物語なのか? 超~期待作!
村井有紀子 特集を進めながら時が経つ速さに震えております。今年も1年ありがとうございました。来年はどうにかこうにかお金持ちになりたいです!(言霊)
葛藤のその先にあるものとは?
「青春モノかな」と思って読んでみると、大きく期待を裏切られた。物語から漂うただならぬ気配に、圧倒される。死んでしまった親友が、得体のしれない〈ナニカ〉となって戻ってきた。離れなければならないと分かっているが、離れられない主人公。その葛藤が丁寧に描かれており、物語がじんわり進んでいく。ヒカルは不吉な存在として描かれながらも、守ってあげたくなるキュートな面も。そのアンバランスさが不穏な雰囲気を加速させる。2人の関係がどう進むのか、葛藤のその先を見守りたい。
久保田朝子 今年も1年ありがとうございました! 来年こそはアクティブに、どこか景色のキレイな海外に行きたいな~と妄想しています。
愛か、呪いか、行き着く先はどこだ!?
死んだ幼馴染みの身体に、〈ナニカ〉が入り込んでいる──。ホラー作品かと思えば、光になった〈ナニカ〉は主人公と共に学校に通い、喜び、泣き、驚くほど朗らかだ。1話読むごとに「村の住人と共存できるのでは」「いや、それにしては存在が不穏すぎる」という感情が交互にやってきて、ジェットコースターに乗っている気分。作中での、光の「嫌いにならんで…」という言葉が切ない。光であって光でない存在に、これからよしきはどのような決断を下すのだろうか。続きが気になる!
細田真里衣 2巻表紙のミント色が大好きです。本当は洋服も家具も全部この色にしたい。でも、バッチリ好みのミント色グッズって意外と少ないですよね。
ふたりの関係性をあなたはどう捉えますか?
「どちらにせよ 光はもうおらんのや… それやったらニセモンでも そばにいてほしい…」──“ヒカル”の正体を知りながら、それを受け入れてしまうよしきの姿に、“光”がいかに大切な存在だったのかを知る。特に印象的だったのは、危うくもどこか愛おしいヒカルとよしきの関係性だ。ヒカルは本物の光ではない。それでも確かに築かれていくものがそこにはある。友情とも愛情とも言いきれない、明確に言葉にはできない関係性を紡ぐふたりの行きつく先とは……。今後の展開が待ち遠しい!
前田 萌 愛犬に会うため帰省しました。駅まで迎えにきてくれたのですが、嬉しそうにしている反応がたまりません。いつの間にか疲れもふっとびました。
気がつかないフリをしたその先は……?
このマンガでは常に不穏な音がつきまとう。シャワシャワと鳴くセミの声、キコキコとなる自転車の車輪、ザァーと降りそそぐ雨の音。それらは、主人公のよしきと〈ナニカ〉となったヒカルの歪んだ関係性に対しての警告音のように聞こえるのだ。よしきの親友・光は死んだはずなのに、今もまったく同じ見た目をして目の前にいる。“違和感”を感じながらも、変わらない日常を装い、このままではいけないとわかっているのに離れられない。この二人の行く末とは一体。今後に目が離せない。
笹渕りり子 街中がクリスマスの雰囲気を醸し出すこの時期が大好き。別に大きなイベントなど予定していないのに毎年クリスマスソングに胸を躍らせています。
オカルトホラーか、友情譚か、それとも
不気味な怪異の描写は圧倒的にホラーであるのに、小さな集落で築かれた二人の唯一無二の関係を表す描写が、恐ろしい現実を薄めさせる。大切な人が全く別の〈ナニカ〉になってしまっていても、失う恐怖に比べたらそれを受け入れる方が容易い。でもそのことが、自分や周りの人々によからぬ影響を及ぼすとしたら……? そんなよしきの葛藤が真に迫る。読み手によって受け取り方が全く異なりそうな本著、是非読んでみてほしい。不穏な雰囲気を醸すオノマトペやフォントの使い方にも注目。
三条 凪 年々一年経つのが早くなっている気がします。ついこの間こたつで『ゆく年くる年』を見たはずなのに……おせち料理では錦卵が一番好きです。
読者の声
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