チャンスと幸福感が奪われる…人を苦しめる「執着」の正体と逃れるためのメソッド

暮らし

公開日:2022/12/8

「もう傷つきたくない」あなたが執着を手放して「幸せ」になる本
「もう傷つきたくない」あなたが執着を手放して「幸せ」になる本』(根本裕幸/学研プラス)

 誰でも多かれ少なかれ「私はこんなふうになりたい!」と願望は抱いているはずだ。しかし、物事には程度がある。その思いにとらわれるがあまり、我を忘れてしまうのはよくない。『「もう傷つきたくない」あなたが執着を手放して「幸せ」になる本』(根本裕幸/学研プラス)は、私たちの心を縛り付ける「執着」から逃れるためのヒントを教えてくれる一冊だ。

執着は人から“チャンス”と“幸福感”を奪う

 心理カウンセラーである著者・根本裕幸氏のもとには「恋をしても、なぜか続かないんです」「妻が『あなたはお金に汚い』と怒る」といった悩みを抱える人たちが多く訪れるそう。内容こそバラバラに見えるが、そのすべてには「執着」と呼ばれる「心のゆがみ」が関係しているという。

 執着を持つと、様々な弊害も生まれる。「チャンスを逃す」のは、その一つだ。周囲が見えなくなるほどの執着は、人から「選択肢を奪い、それ以外のものを目に入らなくさせるもの」になりかねない。

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 例えば、別れた恋人に対して「彼以上の人には、出会えなくて……」と未練を引きずっていると「別れた彼以外の人が目に入らず、『彼じゃなきゃ、ダメ!』と、自分で制限してしまっている」といった状況にも陥る。

 また、執着を抱いていると「幸福感を失ってしまう」のも弊害だ。執着にとらわれているときは「たった1つしかない(とあなたが思い込んでいる)選択を失わないようにすること」に重点を置いてしまい、心の余裕がなくなる。すると、向き合ってくれる「相手の気持ちや状態」を考えられなくなってしまうこともある。

 願望を抱くのは大切だ。しかし、度が過ぎてしまうと、本来の「幸せ」すら手に入れられない可能性もあるという教訓だ。

執着から解放してくれる“自己肯定感アップ”の実践的ワーク

 本書では、執着から解放されるための「手放しワーク」を紹介している。ウォーミングアップの「自分の感情を『優先する』小さなレッスン」に始まり、「あの人を手放す決意をする」「『御恨み帳』に感情を吐き出す」「感謝の気持ちを伝えて新たなスタートをきる」という3つのプロセスで、「自分の潜在意識を書き換える」のが目的だという。

 具体的な方法は本書を参考にしてもらいたいが、「手放しワーク」の前段階で大切なのは「自分軸」を持つことだ。執着に陥っているとき、人は「自分よりも相手を優先する癖がつき、その人につねに振り回されている状態」にある。その状態から抜け出すには「自己肯定感を上げる」必要もある。

 本書では、自己肯定感を上げるために役立つ意識もいくつか紹介されている。例えば、著者はカウンセリング時によく「自分なりに頑張ったことはありませんか?」と問いかけるそうだが、他人と比べずに自分で自分を評価できる部分を見つければ、いずれ「他人の評価」も素直に受け入れられるようになるという。

 また、自分の「短所」を肯定するのも自己肯定感を上げるための方法だ。短所と聞くとそれ自体がダメだと思ってしまいそうだが、実際は「短所にダメ出しする心」が自分を苦しめている。この気持ちを緩和するために、ノートに短所を書いて長所に変換してみるのもいい。例えば、自分が短気だと思うのであれば「怒りっぽい人のいいところって何だろう?」と考えながら書き、さらに掘り下げて「誰かの役に立つところ」も書き込めば、心を軽くできるという。

 自分の心持ち、考え方次第で執着に起因する悩みから解放される。そう思わせてくれる本書は、今まさに苦しむ人たちに優しく寄り添う一冊だ。

文=カネコシュウヘイ

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