Kindleストアで年間ランキング1位を獲得した、津田大介氏入魂の一作!

公開日:2012/12/13

ウェブで政治を動かす!

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 朝日新聞出版
ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:BookLive!
著者名:津田大介 価格:540円

※最新の価格はストアでご確認ください。

古くはWinMXやWinny等のファイル共有ソフトウェアのエキスパートとして、最近ではベストセラーである自著『Twitter社会論』のiPhone/iPad版を東日本大震災の復興支援として期間限定無料としたことで話題になったソーシャルメディアのエキスパート、津田大介氏入魂の一作、『ウェブで政治を動かす!』。

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読後にまず感じたのは、この作品が非常に「中立」の立場を維持している、という事実。文中には取材を受けた政治家や官僚が多々登場するのだが、そのチョイスに不平等感をほとんど感じない。言い回し等のニュアンスに誤解が生じるような表現もほとんどなく、各者の意見をきちんと意見として読むことができる。「政治」という非常に取り扱いの難しい題材を扱った本で、ここまで透明性を保てているのは単純にすごい。

この作品には、実際に「ウェブで政治が動いた」事例が、国内外を問わず多方面から取り上げられている。有名なところではソーシャルメディアを最大限に活用して大統領選を戦ったオバマ陣営の手法や、東日本大震災を機に爆発的な盛り上がりを見せたネット発・官邸前デモの詳細など、今現在でもインパクトを保ち続けている事象が多い。

この事例紹介に加え、ウェブで政治を動かすためのツール類の紹介等も丁寧に記述されているため、興味が常に持続する。この電子書籍版ではホームページのURLはもちろんのこと、twitterアカウントやハッシュタグに至るまで、全てにハイパーリンクが貼られているため、実際のウェブ画面と行き来しながら読み進めることができ、記載内容にさらに重みが増す、という電子書籍ならではの効果的な側面もある。

そして、時節的に一番おもしろかったのは第5章で詳しく述べられる「ネット選挙」に関する記述。ここで触れられるネット選挙とは、インターネット上で投票する、という行為ではなく、twitterやfacebook、USTREAMやニコニコ動画などの双方向なソーシャルメディアサービスを活用した選挙活動を指す。現状の公職選挙法では禁止されているネット選挙が解禁されたら、政治はどう変わるのか? というシュミレーションは非常に興味深い。

さらに感心するのは、ここ数十年の間ずっと問題視されている「若者層の投票率改善」の起爆剤には成りえない、との論を張っていること。安易な推測・憶測の類を徹底的に避けているところにも、作者の純粋さを感じる。

なによりも、この本を読んでいると「政治」に対する感覚が少し変わってくる。本来、政治とは「祭りごと」から来た言葉で、大前提として「参加」して「楽しむ」ことができなければ魅力が半減してしまう「祭」なはず。そういう事態を避けるための方策として「ウェブの有効活用」があるのであれば、それに乗らない手はない。

インタラクティブなソーシャル技術が成熟しつつある今だからこそ、これまではハードルの高かった政治に誰もがコンタクトできる。そんな人たちがどんどん増えて行けば、本当に「ウェブで政治を動かす!」ことが現実的なものに見えてくる。

文章は淡々としているが、不思議な高揚感を感じる作品。まもなく日本のターニングポイントとも言える総選挙が開催されるが、その前に読んでおくことをオススメします。


紙の書籍との同時発売、津田大介作品としてはむしろ当たり前な感じがする

全9章、多数の事例を交えながら説得力抜群の構成

ホームページURL、twitterアカウントはもちろん、ハッシュタグにもハイパーリンク、実記事を即確認可能

図表なども詳細で充実、資料的価値が高い

しおりを付けた箇所が下のバーにインタラクティブ表示されるので、直感的に操作可能