アニメでは描かれなかった日々がある。“赤の王”が率いる吠舞羅の日常

公開日:2012/12/17

K ―メモリー・オブ・レッド― (1)

ハード : PC/iPhone/iPad/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:eBookJapan
著者名:黒榮ゆいストーリー原作 価格:540円

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7人の覆面作家集団GoRAが原作を担当する、謎が謎を呼ぶオリジナルアニメーション作品『K』。

本作はそのコミカライズではありますが、直接的な内容には関わらない前日譚のため、アニメ視聴者はもちろん本編を見ていない人でも楽しめます。内容はずばり、アニメでは名無しのキャラクター達のバックボーンを描いた、彼らの視点から見たこの世界の日常の短編集。アニメだとまるで背景のようだった彼らが、血肉と名前を持った人間であるのだと改めて教えてくれます。

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この世界は、「王」と呼ばれる強力な異能を持った人間が7人おり、彼らに従う集団=クランに属すると異能を与えられる、という設定が根幹にあります。本作はその中の赤のクラン、吠舞羅(ホムラ)の構成メンバー達のキズナの物語。前日譚なので、アニメ本編では開始時から死亡している吠舞羅の幹部、十束多々良(とつか たたら)が生きているところが嬉しいポイントです。「クラン最弱なのになぜか皆の中心にいる」とアニメで言われた彼が、仲間達とどのように接していたかが構成メンバーの視点で描かれていて心が打たれます。アニメでは描ききれていない部分が描かれていますので、こちらから入ってアニメを観るというのも本作の楽しみ方のひとつかもしれません。アニメ1話のキャラクター達の表情や声に潜む心情が伺えることでしょう。

あらすじは以下の通り。
1、2話…ひとりで無茶をしようとする赤城を坂東が殴り、共に死地に向かうことで吠舞羅のあり方を示す話。ガラの悪いヤンキー集団のような吠舞羅に熱い「キズナ」があることが示される
3話…千歳がある女性との約束を忘れて命を狙われる話。腐れ縁の出羽が巻き込まれて共に死線を潜り抜ける
4、5話…ゴミ捨て場で捨て犬状態のエリックを藤島が拾ってくる話。意味深なラストはアニメへと続く導入部分に

話ごとの主役となるメンバーの名前が実はアルファベット順で出てくるなど、気づくとクスリとできる小ネタから、アニメを見ていると切なくなるような前振りが用意されていたりと、サービス精神が旺盛な1冊。アニメキャッチコピーである「キズナ」の、吠舞羅でのあり方を示してくれる内容でした。


吠舞羅の主、“赤の王”周防尊(すおう みこと)は威圧感抜群。拳銃ごときでは怯みません

帽子な赤城翔平と、サングラスな坂東三郎太。偶然の再会に2人もびっくり

千歳は女難の真っ只中、約束を忘れたせいで命を狙われることに。女は怒らせると大変です

自称捨て犬のエリックと、拾い主藤島。吠舞羅の懐の深さを示すワンシーン
(C)黒榮ゆい・来楽零(GoRA)・GoRA・GoHands/講談社