世界的に有名なスリラー作家が児童書を発表! 10代を虜にしたミステリーアドベンチャー小説『ジェイク・ランサムとどくろ王の影』

文芸・カルチャー

公開日:2022/12/28

ジェイク・ランサムとどくろ王の影 上下
ジェイク・ランサムとどくろ王の影 上下』(ジェームズ・ロリンズ:著、桑田健:訳、岩崎美奈子:絵/竹書房)

 何かと行動が制限されることが多くなった暮らしの中、単調な日常に刺激がほしいという思いが胸の中でうずくことは多い。そんな時にぴったりなのが、10代から大絶賛されているミステリーアドベンチャー小説『ジェイク・ランサムとどくろ王の影 上下』(ジェームズ・ロリンズ:著、桑田健:訳、岩崎美奈子:絵/竹書房)。

 若年層に向けた作品だと、侮ることなかれ。なぜなら、本作は世界中で翻訳され、一級品のミステリーアドベンチャー小説だと言われている「シグマフォース」シリーズ(竹書房)の作者・ジェームズ・ロリンズ氏が初めて手掛けた児童書であるからだ。

 歴史に造詣が深く、冒険小説の名手である作者の筆力がいかんなく発揮されているので、大人や普段から小説を読み慣れている人でも読みごたえがあると感じるはず。

 また、イラストは大人気ゲーム「ルーンファクトリー」シリーズや数々の児童書で温かみを感じさせる絵を多数披露している、岩崎美奈子氏が担当。本作は豪華タッグによって生み出された、秀逸な一冊なのだ。

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考古学者に憧れる少年が別世界に飛ばされて“邪悪な王”に挑む

 古代文明に興味があるジェイク・ランサムは考古学者を夢見る、13歳の少年。考古学者だった両親は3年前、“骨の山”と呼ばれるマヤの遺跡で行方不明になったきり。ジェイクは同時期に郵送されてきた、ふたつに割れた金貨を形見にし、2歳上の姉ケイディとひとつずつ持ち合っていた。

 両親の身に何が起きたのか突き止めたい。その願いも、ジェイクが考古学者を目指す理由のひとつだった。

 そんなある日、ジェイクら姉弟に大英博物館で行われる「新世界のマヤの財宝」というイベントへの招待券が送られてくる。

 そこで展示されるものは、形見の金貨と共に送られてきた両親のスケッチブックや調査日誌で見たものばかり。展示品が両親の発掘品だと気づいたジェイクらは、イベントに参加した。

 当日、展示室で発掘品を鑑賞していると、突然叫び声がし、停電。暗闇の中で目が慣れたジェイクとケイディは展示品のピラミッドに凹みがあることに気づき、形見の金貨をはめ込む。

 すると、姉弟は別世界のカリプソスという街に飛ばされてしまった。そこではマヤ人、古代ローマ人など、何百年も前に失われた40以上もの部族が暮らしており、ティラノザウルスやエウロパサウルスなどの古代生物も出現。

 街で暮らす人々は、ブラッドストーンという黒い水晶を使って、動物たちをおそろしい生き物に作りかえてしまった「どくろ王」という錬金術師の存在に怯えていた。

 そんな世界でジェイクは、古代ローマ人の少年ピンドルやマヤ人の少女マリカと親しくなり、ひょんなことから錬金術師を目指すことに。錬金術を学びながら情報を得て、元の世界へ戻る方法を見つけようと奮闘する。

 上巻には人生が一変したジェイクの心境や暮らしが詳しく描かれており、読者もドキドキハラハラ。街並みや古代生物の特徴が細かく描かれているため、すんなり世界観に入り込め、まるで自分もジェイクらと共に手に汗握る冒険をしているかのような感覚になる。

 そして、続編となる下巻は驚愕の連続。錬金術を学びながら元の世界に戻る術を探していたジェイクはなぜか、何者かに命を狙われるように。さらに、どくろ王の魔の手がカリプソスに忍び寄り、街には大きな危機が訪れる。

 街を救うべく、ジェイクはピンドルやマリカ、ネアンデルタール人のバチュークと共に、街を保護するバリアである「ククルカン」という水晶が置かれている神殿へ。元の世界で得た科学の知恵を駆使しながら、仲間たちと協力し、どくろ王との闘いに挑む――。

 本作はジェイクらの冒険を楽しめたり、彼らの心の成長に感動させられたりするだけでなく、どくろ王との闘いの後にも衝撃的な真実が次々と明らかとなるため、最後の1ページまでドキドキしながら読み終えることができる。

 個人的には、飛ばされた世界の真実にジェイクが気づいた時、鳥肌が立ち、感嘆の声が漏れた。

 ひとつの謎が解明されたと思ったら、それが粉々に砕け、また新しい謎が生まれるジェイクの冒険はまだまだ続きそうで、今後も目が離せない。

文=古川諭香

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