自信を持って「失敗してもいい」と部下に言えるように――良きリーダーを目指す人必携の指南書

ビジネス

公開日:2023/1/23

17万人をAI分析してわかった 最強チームの条件を1冊にまとめてみた
17万人をAI分析してわかった 最強チームの条件を1冊にまとめてみた』(越川慎司/大和書房)

 会社組織に所属すると、規模の大小はあれ何かしらのチームの構成員になることがほとんどです。特にコロナ禍でリモートワークが急激に普及して以降、「あなたが所属するチームにおいて何か問題点を感じることはありますか?」と問われて、「いいえ、うちのチームはオールウェイズ順風満帆です」という答えはますます出にくくなっているのではないでしょうか。

17万人をAI分析してわかった 最強チームの条件を1冊にまとめてみた』(越川慎司/大和書房)は、NTTやマイクロソフトなどの大会社勤務を経て、よりクリエイティブな仕事やマネージメント方法をコンサルティング・教授する事業で成功をおさめている越川慎司氏が、圧倒的な量のデータ分析の裏付けをもとに現代社会におけるチームビルディングの秘訣を惜しげもなく披露している一冊です。800社17万人の「働き方改革」を支援、年間400件のオンライン講演・講座を実施、自身が運営するクロスリバー社はメンバー全員が週休3日と、越川氏の働き方自体の実情をとても具体的に公開しています。


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 越川氏が切り口を変えつつ繰り返し強調しているのは「順番」が大事だということです。言葉を言う順番、実行する順番。既存のプロセスに対してひと手間加えたり差し引いたりするというように、物事の順番とプロセス相互の連関に意識的になることで、チームのダイナミズムをうまく循環させることができると説かれています。

 ちょっとした心がけでいうと、たとえば1on1ミーティングを始めるときに「はい、ではこれから1on1を始めます」とニュートラルに当たり障りなく切り出すよりも、「この間のあの件、本当に助かったよ」と一言添えてチューニングをして始めた方が、「共感」が醸すポジティブなパワーを伴って会話がスタートできるため好ましいということです。

 また次に、「意識改革」を部下に促す場合、優秀なリーダーはどのようにアプローチすることが統計的に多いかについて紹介しています。

自走する組織を作るために優秀なリーダーが言ったことは、行動実験。彼らは、口をそろえてこう言います。
「意識なんて変わりませんよ! 私も部下も。意識の前に行動を変えるのです」
行動を変え、振り返って「意外と良かった」となれば、それこそが意識が変わった状態です。

 意識したことによって行動が変わるのではなく、行動したことによって意識が変わる。この順番を自覚できれば「失敗してもいいから、やってみてほしい」と自信を持って「冒険」を部下に勧めることもできるでしょう。

「冒険」は「リスクを背負う」や「面倒なプロセスを増やす」などと因数分解することができるかと思いますが、わざわざ手間を増やすことは、チームビルディングにしばしば良い作用をもたらすことが紹介されています。

 たとえば、「間接承認」といって、第三者を巻き込んだ形でフィードバックする(「誰々から君がこんないい仕事をしていたと聞いたよ、素晴らしいと思う」と他者を媒介させる)ということも優秀なリーダーのコミュニケーションに共通する特徴だったといいます。この心がけの場合、第三者の評価を知る手間(費やす時間の増加)と、それに言及する手間(まわりくどくなるリスク)を孕んでいるわけですが、その「わざわざする回り道」こそが共感や当事者性を醸成するテクニックなのです。

「週たった15分の内省をしようよ!」とクライアント企業の皆さんへ呼びかけていますが、やらない方もいます。
面倒くさい、意味が分からない、効果が分からない、実感ができない、というのです。
しかし、実際に内省をした方の89%が「効果があった」と回答しています。
この内省を引き出すのが、「発問」なのです。

 実は「面倒くささ」「わからなさ」というのは結束力を高める好機で、「わからないことがあっても心配いりません、上司が手取り足取り教えます」という言い方よりも「わからないことを一緒に考えてくれる仲間がこの会社にはいる」というフレーズのほうが、シンプルかつ具体的で、多くの人には安心要素となるのではないでしょうか。

 その他にも、膨大な数の「成功資料」(採択された資料)の色の数や文字数を分析した結果見えた共通の要素や、そうした資料の作成・レイアウトのコツなど、多くのビジネスパーソンにとって魅力的な教えが盛りだくさんの一冊です。

文=神保慶政

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