大人気漫画『贄姫と獣の王』の次世代編スピンオフ! 王宮を飛び出したわんぱく王子の修業と冒険を描く『~贄姫と獣の王 スピンオフ~ 白兎と獣の王子』

マンガ

更新日:2023/2/2

贄姫と獣の王
~贄姫と獣の王 スピンオフ~ 白兎と獣の王子』(友藤結/白泉社)

 人外×人間の異種族ロマンスは、いつの時代も人々を魅了してきた。種族の壁という障害を乗り越えるカタルシスや、異形の姿であるがゆえのあやうい存在感が、このジャンルならではの醍醐味となっている。

 友藤結氏の大ヒット作『贄姫と獣の王』(白泉社)は、人間の少女と魔族の王の純愛を描く、異種婚姻ものの決定版として名高い少女漫画だ。魔族の国と人間の国には長年にわたる確執があり、停戦の条件として人間たちは魔族に生贄を差し出してきた。99番目の生贄に選ばれたサリフィは、魔族を統べる恐ろしい王様に捧げられる。物怖じしないサリフィは、大きな牙と爪を持つ異形の王を恐れずに歩み寄り、彼が隠し持つ優しさに気づくのだった。

 そして生贄を喰らう供儀の夜、サリフィは王様の秘密を知ってしまう。出生の秘密を抱えた彼は、これまで自分の体を傷つけながら生贄たちを逃がしていたのだった。強くて優しい王様の真実を受け止めたサリフィは、彼にレオンハートという名前を与え、2人は人間と魔族の融和を目指して数々の苦難に立ち向かう――。

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『贄姫と獣の王』は全15巻で完結したが、次世代編スピンオフ『~贄姫と獣の王 スピンオフ~ 白兎と獣の王子』(白泉社)がスタートし、このたび第1巻が発売された。主人公はサリフィとレオンハートの子どもで、もうすぐ10歳になる王子・リチャード。人間の国との和睦の成否が、自らの聖獣を召喚する儀式にかかっていることを知ったリチャードは、立派な魔族になるために修行の旅に出ようと家出を決行した。

贄姫と獣の王 スピンオフ~ 白兎と獣の王子 p.12

贄姫と獣の王 スピンオフ~ 白兎と獣の王子 p.13

 出発するなり危機に陥ったリチャードだったが、賞金稼ぎのコンビ、兎の魔族ラヴィと人間の少女スバルによって助けられた。ラヴィの強さに惚れ込んだリチャードは、自らの素性を隠したまま、強引に弟子入りしようとする。幼いリチャードは箱入り育ちの甘ったれだが、両親から優しい心を受け継いでおり、彼の「立派な魔族になりたい」という強い思いはラヴィとスバルの心を動かした。旅の仲間に加わったリチャードは、自分で仕事を探し出してはお金を稼ぎ、高い崖の頂上に登る「獅子の子落とし」に挑むなど、2人から出された課題を一つずつ乗り越えながら成長を遂げていく。

贄姫と獣の王 スピンオフ~ 白兎と獣の王子 p.90

贄姫と獣の王 スピンオフ~ 白兎と獣の王子 p.91

 もふもふかつキュートな外見をしたリチャードが、ラヴィやスバルとみせる無邪気な掛け合いはなんとも微笑ましいが、それが同時にシリアスな場面での緊迫感もより一層引き立てている。修行の旅に出るというのは言い訳で、本当は人間と魔族2つの国の未来を背負う責任の重さに耐えかねて逃げ出したのではないか? そのように葛藤するリチャードが、さまざまな人たちとの出会いを通じて世界を広げ、少しずつたくましくなっていく姿には、思わず応援のエールを送りたくなる。

 王族嫌いでツンデレのラヴィと、お金には厳しいが包容力にあふれるスバルも魅力的なキャラクターで、2人の事情や過去への興味は尽きない。3人の旅はまだ始まったばかり。これからどんな試練がリチャードたちを待ち受けているのか、楽しみに待ちたい。

 なお2023年4月から、『贄姫と獣の王』のテレビアニメ放送がスタートする。大注目のシリーズを、この機会にぜひ手に取ってほしい。

文=嵯峨景子

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