異世界を無双するチート能力は【ネットスーパー】！企業コラボでアニメも話題の異世界転移ストーリー『とんでもスキルで異世界放浪メシ』

　今は“読む飯テロ”と称される作品がたくさんある。皆さんもきっと、いくつも頭に思い浮かぶことだろう。そのなかで今かなり話題になっているのが『とんでもスキルで異世界放浪メシ』（赤岸K：漫画、江口連：原作、雅：キャラクター原案/オーバーラップ）だ。

　いわゆる異世界転移もので、主人公・ムコーダは固有スキル【ネットスーパー】を駆使して現代日本の料理を作り、異世界の住人たちに食べさせながら旅をしていく物語である。

　本稿では2022年10月時点でシリーズ累計450万部を突破している同名小説のコミカライズ版を紹介する。全巻に江口連氏書き下ろしの短編小説も収録しているので、小説のファンもぜひチェックしてほしい。

とんでもスキルで異世界を放浪！キーワードは…料理！

　物語は、27歳のサラリーマン・向田剛志（むこうだ つよし）が“勇者召喚”に巻き込まれ、異世界に転移してきたところから始まる。巻き込まれての転移だったためか、向田が手に入れた固有スキルは、剣術でも魔法でもなく【ネットスーパー】。それは異世界にいながら、現代日本のスーパーの商品を取り寄せられるというものだ。とはいえ、スキルを見ても自分は勇者ではないし、肝心の召喚した国の王様はなんかうさんくさい…。彼は早々にその場を辞し、今後は召喚された転移者ということは隠しムコーダと名乗って【ネットスーパー】のスキルを使って食べていくと腹をくくった。

　ムコーダは国外脱出を図り隣国へ向かった。彼は道中、雇った護衛が倒したレッドボアの肉と【ネットスーパー】で取り寄せたタレで「生姜焼き」を作る。ムコーダも護衛もご満悦だったが、その食欲をそそる香りが巨大な狼のような魔獣・フェンリルを呼び寄せてしまう。危機一髪…と思いきや、泣く子も黙る伝説の魔獣は、驚くほどの食いしん坊だった。フェンリルはムコーダの料理を気に入り、強引に彼と従魔契約を結ばせる。

　かくして召喚勇者くずれの旅人と、フェルと名付けた伝説の魔獣との冒険が始まった。ムコーダは「冒険者になりたいわけじゃないんだけど」とこぼすが、各地に（免税で）出入りしたり、フェルが倒す巨大な魔物を食べたりするためには冒険者ギルドに解体してもらう必要があり、そのためにはギルドに登録し定期的に依頼をこなさなけらばいけない。

　もちろん旅の途中の食事は、ムコーダのスキルを駆使して（調理道具や調味料を取り寄せて）作られた料理である。生姜焼き、照り焼き、ステーキ、ミートソーススパゲッティ、オムレツ……それらすべてが魔獣を含む異世界の住人の胃袋を鷲掴みにするのだ。

ムコーダと仲間たちがダンジョンで手に入れた「テナント」とは？

　最新の単行本9巻では、ムコーダは張り切るフェルに引っ張られるように、前人未到のダンジョンを攻略していた。仲間に加わったスライムのスイ、ピクシードラゴンのドランとともに順調に最下層に到達。彼ら魔獣たちの活躍により、ダンジョンのボス・ベヒモスとの戦いに見事勝利する。

　ここでムコーダが手に入れたものは二つ。一つは魔剣カラドボルグ。もう一つが固有スキルにプラスされた「テナント」だ。その名の通りスーパーに出店してきたかのようなこの能力により、洋菓子店の本格的なケーキも取り寄せ可能に。専門店の甘味は、魔獣たちはもちろん、ムコーダたちへ加護を与えて供物を受け取っていた神々まで歓喜させた。

「テナント」に味をしめた神々は、ムコーダにさらなるレベルアップを求める。またフェルは「海の魔獣・クラーケンやシーサーペントを食べたい」とせがんでいた。そんなある日、ギルドに高ランク向けの依頼が舞い込み、ムコーダ一行に白羽の矢が立つ。はたして彼らが次に向かう先は――。

「食べたい」「作ってみたい」企業コラボでアニメ版も激アツ

　ここで本作の大きな魅力、ムコーダが作る料理について語りたい。ちなみに彼は料理人ではないので技術で最高に美味い料理が作れるわけではない。ただ、スーパーで手に入る専用調味料や食材を使い、手際よくおいしい家庭料理を作ることができた。これはムコーダがそもそも持っていた能力。そして、そこに異世界の固有スキル【ネットスーパー】とお金を稼げる頭脳を合わせることで、結果的に彼は勇者をしのぐチートな冒険者になっていく。もちろん、彼の優しくて穏やかで善人な性格が周囲の人（や魔獣）を惹きつけるのも、大きな財産だ。

　前述した通り、そんなムコーダの料理のほとんどは読んでいるあなたが食べたことのあるものだろう。味は誰でもリアルに想像でき、共感性が高い、そんな料理が異世界の住人たちを満足させるのだ。

　最後に、ムコーダが取り寄せる調味料や缶詰についてお伝えしておきたい。よく見ると、どこかで見たようなものばかりである。もしあなたが、テレビアニメ版『とんでもスキルで異世界放浪メシ』を未見であれば、ぜひチェックしてほしい。なんと作品と有名食品企業が正式にコラボし、パッケージも商品名も忠実に描かれて登場しているのだ。ちなみに【ネットスーパー】は「イオンネットスーパー」そのままである。

　ということは（アニメ）作中の調味料や缶詰で、ムコーダの料理の味がほぼそのまま再現できるわけだ（なお当たり前だが肉だけは普通の鳥豚牛を使うしかない）。MAPPAによる美麗なアニメーション作画も相まって“飯テロ度”はさらに高まる。もはや食べたくなったら作るしかない。しかし安心してほしい、あなたはパソコンやスマホさえあれば、固有スキル【ネットスーパー】を使うことができるのだから。

文＝古林恭