ワインの香りや味を思い通りに!? 明日誰かに教えたくなる、私たちの日常生活を豊かにしているオモシロ研究の数々

暮らし

公開日:2023/2/23

世界のヘンな研究 世界のトンデモ学問19選
世界のヘンな研究 世界のトンデモ学問19選』(五十嵐杏南/中央公論新社)

 世の中にはさまざまな研究がある。だが、日常でそれを意識しないだろう。『世界のヘンな研究 世界のトンデモ学問19選』(五十嵐杏南/中央公論新社)は、身近だけど意外と知られていない研究について教えてくれる。

「ヘンな研究」とあるが、どの研究もいたって真剣。だからこそ私たちの暮らしや遊びを豊かにしてくれるのだ。それでは、本書で紹介されているヘンな研究の一例を紹介しよう。

五輪で注目度急上昇の「サーフィン」を科学する

 東京2020五輪で正式種目となったサーフィン。競技人口が増え、近年さらに注目を集めているスポーツの一つだ。そんなサーフィンが、カリフォルニア州立大学では学問として扱われている。大学の所在地・カリフォルニア州サンディエゴは、サーファーにとっての聖地。そんな大学で、サーフィン特化の研究が行われているのだ。

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 その成果の一つがウエットスーツの開発。サーファーの体温や心拍数、酸素レベルなどのデータを採取。科学的な実験によって得られたデータをもとに、既存のものより「暖かく」「動きやすい」製品が開発された。

 このような実験・検証は、他のスポーツでは当たり前かもしれない。しかし、実はサーフィンのウエットスーツの性能は、長らく「メーカーの言ったもん勝ち」だったという。

 この研究により、ただ「波に乗る」を繰り返すのみだった練習や、筋力トレーニング、栄養管理などにも大きな影響をもたらしている。研究成果の数々が、サーフィンをさらにメジャーなスポーツにしていくだろう。

香りや味が自由自在に!? 美味しさを科学する「ワイン学」

 ワインと言えばフランスやイタリア。そんなイメージが強いかもしれない。だが、アメリカのカリフォルニア州ナパバレーも質の高さで有名。ナパバレーのワイン生産者は皆、大学でブドウ栽培とワイン醸造学を学んでいるそう。そうすることで、安定して質の高いワインを生産できるのだ。

「ワイン学」の素晴らしい点は、ブドウが発酵すれば自然にできるワインの味を、科学によって、より美味しくできるという点だ。現在注目されているのが、ワインの香りを操る研究。発酵に必要な酵母の遺伝子を組み替え、香りをコントロールできるという。この技術が広まれば、ワインの楽しみ方がさらに大きくなるだろう。

 そしてブドウの品質低下や生産量不足に関わらず、味を安定させることもできる。2020年、ナパバレーで大規模な山火事が起こった。その際、山火事からブドウを守る方法や、ブドウに付着した煙の影響を無くす方法など、新しい研究が生まれている。

日本でも発見! オモシロ研究「忍者学」

 興味深い研究は日本でも行われている。その中でも“日本っぽい”のが、三重大学国際忍者研究センターの「忍者・忍術学」だ。忍者になれるオモシロスクール扱いされることもあるそうだが、歴史学を中心とする、いたって真面目な研究である。忍者の歴史、特有の技術を知ることは、現代人にとって意義のあることだという。その一つである「忍者流の歩き方」を紹介しよう。

 1日に200キロという長距離を歩く(走る?)こともあったという忍者。整備された道の無い時代、より速く、疲れず歩くため、膝の使い方を工夫していたのだという。その方法とは、着地の際に膝関節を緩めること。普通の歩き方と比べると、忍者式は、ふくらはぎの筋肉の活動を抑えることができる。

 歩きすぎによる足の疲れは、ふくらはぎの疲労が大きな原因らしい。その疲れを軽減させられれば、速く、長時間歩けるということだ。忍者ではない私たちも、この歩き方を覚えれば「疲れて歩けない!」ということを避けられる……かもしれない。

 私たちの生活は、過去の研究者たちの努力の結晶の上に成り立っている。そんなことを本書から学んだ。紹介した学問以外にも、テーマパークのデザインや、衣服に使うウール、高級時計の伝統と最新技術など、明日誰かに話したくなるオモシロ研究がたくさん掲載されている。会話のネタにぴったりなので、目次を見て気になったものから読んでみてほしい。

文=冴島友貴

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