相談もなく向かいのマンションに引っ越してきた義母。子育て中の母に降り注ぐイライラを吹き飛ばすコミックエッセイ!

マンガ

更新日:2023/3/6

子育てしたら白目になりました
子育てしたら白目になりました』(白目みさえ/KADOKAWA)

 子育てで毎日のようにイライラするし、つい愚痴っぽくなってしまうというママも少なくないはず。でも、そんなことを言うと「可愛いはずの我が子にイライラするなんて…」「ママが愚痴なんか言っちゃダメ」と思われてしまうんでしょうか。

 いやいや、親だって愚痴を言いたくなる時はあります。我が子のことは大好きだし、一緒にいる時間は幸せ。本当に生んで良かったと心から感じているけれど、むしろ子どもが愛おしいからこそイライラすることもある…。時には、愚痴くらい言ってもいいのではないでしょうか。

子育てしたら白目になりました』(KADOKAWA)は、作者の白目みさえさんが自ら“愚痴漫画”と呼ぶコミックエッセイ。子育てで感じたモヤモヤや、戦力外な夫に対するイライラなど、子を持つ親がつい言いたくなるような愚痴を代弁してくれるような頼り甲斐のある一冊です。

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 毎日の子育てにまつわる自虐ネタで笑わせてくれる上に、精神科に勤務する臨床心理士・公認心理師でもある作者が、子育てで困った時の解決法をアドバイスしてくれるのも嬉しいところ。

 ダ・ヴィンチWebの連載で「めっちゃわかる!」「元気をもらいました」と多くのママの心を掴んだ本書の一部をご紹介します。

子育てしたら白目になりました

子育てしたら白目になりました

 イライライラ、イライライライライライライライラ…。毎日、自分の中から「イライラ」の音が聴こえてくるような瞬間がきっとみなさんにもあるはず。

 白目家の朝。「なかなか着替えてくれない」「やっと着替えたと思ったら靴下が残っている」「声をかけ、家事をしてから戻ったらまだ履いてない」「『片方しかない』と言ってまだ履いていない」「やっと履き始めたと思ったら、おもちゃを見つけて片足しか履いてくれなかった…」はい、ここまで30分。ここで白目さんの堪忍袋は切れ、ゴゴゴゴ…と怒りの声が発せられるのでした。

 我が子のことは愛おしく思ってるし、靴下を履かないことにそこまで怒ってるわけじゃない。でも「何回言わすねん…」ってところに怒ってる。これが白目さんの正直な声です。子どもができるまで待つことは子育ての鉄則と言われますが、親だって我慢の限界はありますよね…。

 エピソードの最後に書かれたコラムでは、普段から「子どもを怒らないためにはどうすれば?」という相談をよく受けるという白目さんが、「怒っている時間ではなく、怒らなかった瞬間や、今までなら怒っていたけど怒らずに済んだ場面に注目してみて」と優しく投げかけます。「怒らずに済んだ理由」が見つかれば「それがあなたなりのアンガーマネジメント」とのこと。

 実際に試してみると、筆者の場合は「時間に余裕がある時は怒らずに済むことが多い」ことに気づきました。自分が怒りやすい場面の傾向がわかったので、それからは「今日は時間があるから怒らないで済みそう」「急いでいるから怒りすぎないようにしないと…」と自分を客観視でき、“イライラ”を“イラ”くらいに抑えられている気がします。

 書籍化にあたり、新たに描き下ろされたのが「義母と過ごした地獄の1年」というエピソード。白目さんの妹の体験談で、夫が転勤の間、義母が予告もなく現れて向かいのマンションに住み込み、空回りなお世話ばかりしてきたというエピソードが描かれています。

 何の相談もなく向かいのマンションを契約したところにまず驚きます。そして、夜寝ている子どもを起こし、突然掃除を始めたと思ったら、今度はつわりがひどいのに料理(しかもキムチ鍋)を作り始め…。妊娠中の嫁によかれと思ってやっているようですが、余計なお世話。「気にしないで」が口癖のお義母さんですが、こちら(自分)のほうが気にするのだ、という妹さんの言葉に大きく頷いてしまいました。

子育てしたら白目になりました

「いいお義母さんだとは思うんだよ? しんどいって思う私がおかしいのかな…」と悩みを打ち明ける妹さんに、白目さんは「望んでない善意は悪意と同じ。お義母さんの場合はちょっと言いすぎかなってくらいハッキリ言わないと伝わらないかも」ときっぱりアドバイス。過干渉な義母の対策をタイプ別に話しているページもあって参考になります。

 じつは筆者も、お姑さんに一方的に感じている苦手意識をどうにかしなければと思い、白目さんのアドバイスをもとに、家族や友人と過ごす時と同じように気を遣うのをやめてみたら、気持ちが楽になった…という出来事がありました。白目さんの的確なアドバイス、さすがです!

モヤッとした気持ちがスッキリ

 ギャグあり、オチあり、痛快な関西弁で、ここぞ!というところで入る絶妙なツッコミが最高。ここでは紹介できませんでしたが、“いつまでも子育て新人社員”でいるダメ夫(ある意味でピュアなボケ)への辛辣かつおちゃめな愚痴にもゲラゲラと笑えます。

「これってうちのこと?」と思えるような子育てあるあるを読んでいると、笑いながら、白目家と同じように自分も“白目”になっていた過去を振り返ることができました。そして作者によるアドバイスを読むと、「子どもの突然すぎる行動ってついていけない時あるよね…」「義母に気を使いすぎていたかも…」と、今までモヤッとしていた気持ちの正体に気づくことができ、感情を整理することもできました。すると、知らぬ間に優しい気持ちになっているから不思議。明日からはまた子育てを頑張ることができそうです。

 子どもは愛おしいけれど、人ひとり育てるのはそんなに簡単じゃない。愚痴の1つや2つ、いや、10や20もこぼしたくなるのは当然ですよね? 愚痴を言うのは悪いことのように捉えられることもあるけれど、時には心のモヤモヤを整理するきっかけにもなることに、あらためて気づきました。

 子育てが、実はこんなにも面白いものだったとは…! 本書を読むと、一人で悩みがちな子育てに明るい光が一筋差し込んだようで、筆者としては、悩みを共有してくれるママ友のような存在だと感じました。「子育ての苦労を分かち合いたい」「モヤモヤした気持ちを吹き飛ばしたい」という人はぜひ手に取ってみてくださいね。

文=吉田あき

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