命を賭した恋--江戸の遊女の想いを描いた官能的恋愛小説

小説・エッセイ

2011/1/14

花宵道中

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 新潮社
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:宮木あや子 価格:216円

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「女による女のためのR-18文学賞」の大賞&読者賞を受賞した作品で、著者デビュー作。欲望と恋情が濃密に渦巻く、江戸・吉原の遊女たちを描いた官能的な小説です。
久しぶりに読み返したい、とおもって購入したのですが、iPhone版で読めるのは表題作1話だけです。ただ、読後は、短編とは思えないほどの重厚感にただただ圧倒されます。でもそれも当然、命を懸けて恋をした一人の遊女の、一生が凝縮されているのですから。

遊女は一生を繋がれる。
吉原に、客に、身請けしてくれる旦那に。
恋をする、などということは夢まぼろしと同じ――
わかっていても、でも、
どうしようもなく焦がれてしまった朝霧。

生まれて初めて心のそこから惚れた男の前で、
別の客に抱かれ、抵抗もできない。
見ないで、でも、目をそらさないで。
そう願うことが唯一つの誇り。
そしてそれをわかってどうすることもできない男。

心、なんて生易しいものじゃなく、全身で互いを欲する二人が、なまめかしく、エロティックに、けれど純粋に美しく、描かれています。

これ1編でも読み応えは十分なのですが、本来収録されているはずのほかの遊女たちのお話を読むと、少しずつその相関が浮き彫りになり、すべてを読み終えたときには、また違った感慨にたどり着くことができます。

もしこの短編を読んで、気になる、という方はぜひ、文庫版が出ているので手にとってみてください。手を出しやすいかと。

じつは今回、「なんだよ1話だけかよ!」と一瞬、がっかりしかけましたが、読もうか迷っている小説のためし読みが簡単にできるのも、電子書籍のいいところなのだと気づきました。こういった連作短編の、最初の1話だけを読ませてくれるというのは、短編としての充実感も味わわせてくれるので消化不良にはなりません。

そういう意味で、「ちょっと気になる人いたらぜひためしに読んでみて!」と今回、紹介させていただいた次第。江戸、遊女、許されない恋、官能、そんなキーワードに引っかかるものがある方は、ぜひご一読を。

ちなみに、1編収録のみということで★は4つですが、すべて読み終わったあとの感想は文句なしで★5つです。